王都にかかる霧 3
あれ?アンナ普通に出てきてるじゃん。自分描いたこと忘れたの?(笑)…とか思った方(居ないかもだけど)。何があったのかはしっかりと書くつもりなので安心して読み進めてください(*n´ω`n*)
「ここって。」
美咲が修道着姿の女性に連れてこられた場所は…絵に書いた様な小さな教会だった。
「キエラさ〜ん!!。おかえりなさい!。」
そんな教会の周りには数人の子供たちが遊んでいた。が、修道着姿の女性を見ると嬉しそうに手を振って来た。
「キエラさんって言うんですね。」
「え?…あぁ、ごめんなさい。私の方から名乗って無かったですね。はい、キエラといいます。…今は此処で、小さな『孤児院』を開いております。」
孤児院…小さなと言っても見えるだけで5人の子供達が居る。この子達の親代わりを務めるのは大変だろう。
「みんな〜。この人はミサキさん。ミサキさんが帰るまで少しここに居てもらうから変な事しちゃダメよ。」
「「「「はーい!!。」」」」
「もしかして毎日この作業を1人でやっているんですか?。」
キエラの忙しそうな姿を見て、その仕事の手伝いを申し出た美咲。物干しにベッドのシーツや子供達の服を干していてふとこの仕事量を1人でやっているのかと思う。
「はい。ここの維持や子供達の身の回りの事は全部私一人でやっていますね。本当は子供達と遊んであげだりとか勉強を教えてあげたいんですけど…。」
「えぇ…大変だ…。あの、今日は私が手伝いましょうか?。」
同じ女性として、遊ぶ事もなく、日々子供達の為に時間を使う彼女に少しでも楽をして欲しいと思う美咲。特に考えもせず手伝いを申し出る。
「ほ、ホントですか?…ありがとうございます。」
「ごめんなさい。すっかり遅くなってしまって。」
「いえいえ、楽しかったですよ。」
その後夕飯の支度まで孤児院の家事の手伝いをした美咲。そのまま夕飯も一緒に食べたのだが子供達が美咲と遊びたいと言い、気付けば8時を過ぎていた。
「ジェイドさんが帰ってきたら送って貰うようにお願いしてみますから…心配しなくても良いですからね。」
「ジェイドさん?…も、もしかして彼氏さんですか?。」
明らかに男性の名前に色恋の匂いを感じる美咲。
「へ?…あ、ぁぁぁ。…そう…なのでしょうかね…。」
顔を赤くし恥ずかしがるキエラ…。やはりこうゆう事は付き物なんだな。
「ただいまキエラ。」
男性の声と共に教会の扉が開けられる音が響く。
キエラと目が合う。彼女はやはり恥ずかしそうだ。
「あれ?その子は誰だい?。随分と大きい子が増えたね。」
「え?…あっ!。私は上田 美咲と言います!。遠くから来たんですが迷子になってしまって。」
ジェイドは不思議な格好をしていた。燕尾服にハットと歴史の教科書に出てきた様な格好だ。
歳は30を過ぎたくらいだろうか。整えてはあっても伸ばした髭のせいで若くとも老けてとも見える。
「うむ、確かにそうだ。ここは遠方の地から来たものにはいささか紳士的では無いな。」
「ジェイドさんも遠くから来て途方に暮れていましたもんね。」
「はは!そうだな。ミサキさんの気持ちも分かる。…とゆうか私と全く同じだな。」
クスクスと口を手で隠しながら笑うジェイド。一緒…とゆう事はこの人も遠くから来たのだろうか。
(まあ、私の場合は…多分『異世界』からなんだろうけど。)
「なので、ジェイドさん。申し訳ないですがミサキさんを送るのに付いて来てくれないでしょうか?。」
「あぁ、こんな夜遅くに女性だけで帰すわけにはいかないからね。所で、どこまで行くのかい?。」
ジェイドさんは快く付き添いを引き受けてくれた。でも問題は…
「ミサキさんが言うには…多分、賢者のケンラさんのお家だと思うの。でもどこに住んでるかなんて分からないから…。取り敢えず騎士団の詰所に行くつもりです。」
そう、ここで知っている場所や地名等は無く。ケンラ、ガル、ミシェーラの3人の名前のみがこの世界で知っている事だ。
何故だかこちらではケンラは賢者と呼ばれており、ガルさんやミシェーラさんはケンラさんの弟子らしい…。人違いじゃ無ければ良いけど。
「詰所か…そこなら場所が分かる。ここを空けるのもあれだからキエラは残るといいよ。私が引き受ける。」
「…分かった。じゃあお願いします。ミサキさんはそれでいいかしら?。」
「え?…あっ、はい。」
知らない男の人と2人っきりでか…。まあ、キエラさんは良い人だし。この人もいい人そうだから大丈夫だと思うけど…。
「ミサキさん。気を付けてくださいね。」
「は、はい?。」
「この街の夜は…とても暗いですので。」
笑顔…ハットのせいで顔に影がかかった笑顔…
私はそれを…
「わ、分かりました…。」
ほんの少しだけ…『怖い』と思ってしまった。
夜の街。昼間は異国情緒…いや、本当の異国、異世界が楽しくて仕方なかったが…夜となれば話は違う。
街灯が闇を駆逐する前の世界。街全体が暗く、建造物の影はなお暗い。
「暗いですね…確かにこれはちょっと怖い。」
「えぇ、しかも今は夜毎に女性を狙った殺人が起きていますからね。」
「そ、そうなんですか?。」
女性を狙った殺人だが夜に…
不安が膨らんでいく。今の自分が置かれている状がその事件と完全に一致しているからだ。
「まあ、心配しなくても私が付いているよ。完全に、安全に…そして何より紳士的に。」
「は、はい。」
「それにしても今夜は昨夜とは比べ物にならない騎士の数だ。犯人は今夜の獲物探しにさぞ苦労するだろうね。」
獲物探し…その言葉を滑らかに言い放つジェイドと…この事件の犯人がどうしても重なってしまう。
「ん?、ミサキさん。ここだけ騎士の密度が少ない…全くこんな時に仕事をサボる輩が居るとゆうことか…。本当に…『不用心』だ…。」
「え?どうゆう事ですか。」
確かに…先程巡回をしていた騎士の方を見てからかなり経っている。でもそんな事言われなければ気づかないのに…。わざわざそんな事を『意識』していたのだろうか?。
「…済まない。これはサボるとゆう事では無いのかもしれない…。」
そう言ってジェイドは燕尾服の懐から手を突っ込み…刃の部分が細長い『ナイフ』を取り出す。
「そ、それは…なんでナイフなんかを…。」
「ん?これかい?。…そりゃあ夜の街を往くのにはナイフくらい要るだろ?。」
そう言って前を行っていたジェイドがこちらへ振り返る。
「じゃないと…」
ナイフを持つ腕を持ち上げていく。曲げた人差し指と親指でナイフの刃を挟んでいる…独特な持ち方だ。
「じゃ、じゃないと…。」
目をナイフから離せない。体が恐怖で動かない。ジェイドはそのナイフを『投げようと』している…。
周りには誰も居ないはず…。私を除いては…。
そう、私以外誰もいないのだ。騎士がサボっているから見掛けない…ジェイドはそうでは無いと言った。
つまりこの状態は誰かの意図が絡んでいる。
夜中に起きる女性を狙った殺人…。
「この警戒態勢の中では多少の『障害』は気にしないとゆうことかな…。やれやれ。」
障害…私を殺すための障害…。この人はやはり騎士の居ないところを探し出し、そこで私を殺そうとして…。
「そ、その障害って…何ですか?。」
泣きそうになってしまう。ジェイドの腕が振るわれた瞬間…私は死んでしまうだろう。
その障害は何?…私をそのナイフから守ってくる障害…お願い…私を守って!!。
「…?。何を言っているんだい?。最大の障害…それは『私』に決まっているだろ?。」
そう言い放つとジェイドはその腕を振り下ろし、ナイフを投擲した。