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異世界で過ごす休暇の為に  作者: ますかぁっと
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価値とはつまり…生き物なのだよ

「実はさぁ、俺お金持ってないのよ。」


「は、はぁ。そうだったんですね。」

(急になんだろう…流れで受けちゃったけど変な事じゃ無いよね…。)

ケンラに言われるがまま家の中へ入った美咲。知らない人の家に上がる事に不安を抱きながらも応じる辺り…やはり小さな村の住人である。


「あれ?先生…誰その、、」


「コラッ!!ミシェーラ!!。」


ミシェーラの言葉を珍しく声を張って止めるケンラ。


「ケ、ケンラ『兄さん』…その子は誰ですか?。」

(しまった〜、つい『先生』って呼んじゃった〜。)


ケンラは弟子達が簡単に異世界へ来れる様になってしまったので異世界で要らぬ誤解をされないように幾つかのルールを設けていた。


1つは異世界語…この地域では『日本語』と呼びれる言語の習得と使用。


2つ目はケンラの事を『兄』として呼ぶ事だ。

このぐらいの年齢差で同居しているならば兄弟姉妹の方が筋が通るからだ。


「この子は上田 美咲 って言うんだ。どうやらおじいちゃんもおばあちゃんも居ないみたいだから今はこの子に見てもらうことにしよう。」


「そう言うことか…じゃあ、美咲…ちゃん?…よろしくね!。」


「自分からもお願いします。あ、僕はガルと言います。この子はミシェーラで、一応僕が『兄』です。」


「は?。(兄貴振るなというミシェーラのは?。)」


「え?。(年上なんだから僕が兄じゃないの?というガルのえ?。)」



「あ、あの。よく分かりませんが頑張りますね。」

(良かった〜。女の人が居るなら安心。それにしても3人ともカッコイイし、キレイだな〜。)


「じゃあ早速。さっき金が無いって言ってたけど売れそうな物なら有るんだよね。でも俺らはこっちの相場も売り買いできる物も分からないから1度見て欲しいんだよ。」



価値、相場…そう言ったものは需要と供給、環境や宗教、土地や気候等々により変動し続ける。


相場どころか貨幣価値すら分からない国では等価交換すら危うい、更になるべく足元を見ようとする輩が居れば尚更だ。


そうやって大損する前にまずは信頼できる人間に最低限必要な事を教えて貰うのは見知らぬ土地、ひいては見知らぬ異世界では必須と言えよう。



「分かりました…でも鑑定がいるようなもの見せられても分かりませんよ?。」


「うん、それで大丈夫。儲けを出したい訳じゃないから。じゃあ1つ目…」



ケンラの声に合わせて、奥の部屋へ引っ込んだガルが大きめのリュックを担いで出てくる。



「わぁ、なんか美味しそうな匂いがする。」


「そうです!。これは僕が選んだんですよ。やはり無難に行くなら宝飾品…そしてこれです!。」


ドサッ。重量の有るリュックを机の上に置くと中から幾つもの紙袋を取り出すガル。


「こ、これは…草?。」


「く?草?…いえいえ!、『スパイス』ですよ!『香辛料』です!。」


オーフェシア、及びその近隣の国家では香辛料の売値は高い。


気候的に栽培に適して居らず、主な産地とかなりの距離がある為だ。


更にその長い距離を現地の商人と複数人の仲卸業者、海上貿易商社など多数の段階を踏んでの輸入の為値が吊り上がるのだ。



「す、スパイスですか…確かにこれだけの種類は珍しいですが…スパイスを一般人から買ってくれる所は無いかなと思いますよ?。」


彼らは知らなかったのだ。彼らの転移したこの世界の売買システムを。そして海上運輸技術を…。



「え?…う、売る事すらも出来ないのですか?…まさか…ここがスパイスの一大産地だったりするのですか?!。」


「え?…産地って言ったらインドとか?すっごい遠くだけど別に街に行けば手に入るよ?。」


「な、なんと…では消費量が極端に少ないのか?…いやいや、それで値を下げるようなら運輸の際にかかる諸経費は一体どうなっているんだ?…産地ではなく、遠方の産地から輸入している…オーフェシアと同じじゃないか!…一体どうしてまともに売買すら取り合わせてets………。」


「あ、あのぉ。私変な事言いましたかね?。」


自信満々で割り振られた金額全てを香辛料にぶっ込んだガルがブツブツと自身の失敗の理由を探す。努力家のガルは失敗を糧にすることが趣味(ケンラ目線)なのだ。


「あー、大丈夫。心配しなくてもガルは3日に1回はこうなるから。」


「仲卸業者が極端に少ないのか?いやいや長大な貿易路を個人の業者が香辛料などと言う嗜好品を安全に、劣化も無く運輸しきれるのだろうか?……はっ!!、そうか!!。この国は香辛料を値下げする為に国家間で貿易路を確保し、国営事業として香辛料の取引をets…………………。」



「ガル。お前それきちんと精算して来いよ。」


「調子こいて全部香辛料に突っ込むなんてしなければ良かったのにね(笑)。」


「ets…ets……ets…、あっ、はい。…てかミシェーラ今笑ったでしょ?。」


紙袋をリュックにしまい直すガル。食欲をそそる香りだが…リラックスとは反対系統の匂いが居間にこびり付いてしまった。これではゴロゴロしていてもお腹が空いてしまう…。



「美咲ちゃん!。これ見てこれ見て!。ほら、磁器のお皿だよ!。白くて綺麗だし傷も付きにくいし、熱にも強くて料理に匂いが移ることも無いよ!。」


そう言って今度はミシェーラが白い平皿を美咲に見せる。綺麗な円、くすみの無い白色に小さな花の模様が描かれている。一般庶民が日常的に使う物より1段上、そんな少し高い食器だ。


「え、え〜っと。……『普通』のお皿ですよね?。お店行けば沢山有ると思いますよ。」


「え?…『普通』なの?。」


パリィッーーンンッ!!!

値段が付くことを確信していた食器を『普通』、店に行けば『沢山』有る。まるで『量産品』かのように言われたショックから皿を落としてしまうミシェーラ。その顔は驚きを滲ませたまま硬直している。



「あ〜、やっぱりか〜。おじいちゃん家の食器も美咲の家の料理屋の食器も…全部作りが良いから磁器の皿なんて普通に出回ってるんじゃないかなって思ってたよ。」


「せ、せん……兄さん、知ってて止めなかったんですかぁ。」


「なんだいミシェーラ。君も取引不可だったのかい(笑)。」


「うるさいガル。」


紙袋をリュックに詰め終えたガルが新聞紙(言語の習得の為に譲ってもらった。)を持って来る。

そして2人で皿の破片を拾い集める。食器に香辛料…この2人は本格的な料理でも始めるつもりだったのだろうか。



「あのぉ。本当に大丈夫ですかね?。」

(なんかこの人達…日本を知らないと言うより……世界を知らない?。どっかの部族が日本に来たのかな?…)


スパイスに皿。これを個人で簡単に換金出来ると本気で思っている3人組に驚きを隠せない美咲。美咲もまた、価値観や世俗に天地の差がある異世界からこの3人がやってきた事を知らないのだ。



「大丈夫だ。まだ本命である俺が残っている。さぁ、見てくれ!。」


弟子2人の轟沈を確認したケンラ。しかし旗艦である自身が持ってきた物には絶対的な自信があった。先行艦が沈もうがケンラには余裕すら有った。


「このローブを見よ!。謁見の際に着る装飾や生地、刺繍にとあらゆる所までこだわった逸品!。これなら売れる…それも高値で…。」


魔術師は基本的にローブを着る。ケンラが持ってきたのは戦闘用とは言えない、荒く使えば直ぐにほつれるような刺繍や質感ばかりを意識したゴワゴワとした生地のローブだ。


「す、凄いですね!こんなクオリティの高い『コスプレ』は初めて見ました!!。やっぱり普段からコスプレの格好で過ごしているだけありますね!!。ネットなら高値で欲しがる人沢山いると思いますよ!!。」



「そうだろぉん!。……ん?コスプレ?。」


俺の日本語習得に間違いが無ければ…コスプレとは決して普段着とは呼べず、尚且つ謁見に望むような正装でもない…。主に架空の世界や、特定の職業の格好を趣味…或いは文化的商業として模倣する事のはず…。


(は!!そうか。この世界には魔術が無い。つまり魔術師も『居ない』のか!!。魔術師の正装であるローブもこの世界では存在しない衣装。すなわちそれを普通に着ている俺達は『コスプレイヤー』と呼ばれてもおかしくない!!。)


「でもこれ本当に凄いですね!。刺繍も凄いし…生地も本革じゃないですか!これ。……えっ?…この大きな宝石…本物じゃ無いですよね?」


「ガル…私達コスプレイヤーなんだって…。確かに美咲ちゃんの格好とは方向性みたいなものが明らかに違うよね。」


「そうだねミシェーラ…確かに魔術を使わないなら魔術の為にあるローブも無いよね。」


魔術師のローブには意味が有る。基本的に衣服は布の面積が大きい方が魔力への干渉出力が大きくなるのだ。これは大気(大気中の魔力)との接触面積が大きい為と思われる。



「なるほど…つまり俺たちはまず『服』を買わなければ行けないわけだ…。」


別にコスプレイヤーと思われても良いがそれだけでは上手く異世界に馴染むのは難しいだろう。



「あ、ちなみに宝石とか金の飾りって売れたりする?。」


「え?…普通に考えたらそっちの方が簡単にお金に変えれると思いますよ?。お店だって買取に力を入れてる所ばっかりですし。」



「あ、そう。…だよね。…ふーん。」





この後換金の方法は、当然だが宝飾品に絞られた。



ちなみにケンラの持ってきたローブは美咲の興味半分でネット上で有名そうなコスプレイヤーに写真を送った所、コスプレながら想像を絶するクオリティと本物と思われる宝石があしらわれているなどにより美咲が恐怖する程の値段が付くと言われたのでケンラへ返品された。

最近、もう1つ描きたい小説を思いついちゃったんですよね。設定とかこんなシーンを描きたい…とゆうイメージは固まってるさいるのですが2作書くなんて時間的に無理なので諦め〜って感じです。゜(´∩ω∩`)゜。…人に産まれた以上時間は有限、人生とは最後まで続く優先順位決めなのだと思わされています…。あっ、これいいセリフですね。どっかで使お〜≡┏( ^o^)┛

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