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異世界で過ごす休暇の為に  作者: ますかぁっと
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双子の弟子

「「退院おめでとう!。テルマちゃん、アルマちゃん。」」


アンナとミシェーラが2人揃って言う。


「2人ともちゃんと治っていて良かったよ。」


ガルもそれに続く。



「「ミシェーラ姉さん、ガル兄さん、そしてアンナさん…ありがとうございます!。」」


テルマ・シェルトラ、アルマ・シェルトラ。この双子の姉妹は俺の弟子だ。ガルとミシェーラ、そしてこの2人の4人で俺の弟子は全員だ。



「まあ、傷が残ってなくて良かったよ。…にしてもこっちで退院祝いする必要あったのか?。」


実はこの2人、以前の任務で足に怪我を負ったので療養中だったのだ。


擦り傷等は薬草・それを材料にした薬と治癒系の術で簡単に癒すことができる…が、この2人の場合骨にヒビが入っていた。骨組織の再生は植物系の薬では治りにくく、魔術による治癒力向上も骨の矯正が正しく行われないと変形してしまう等難易度が高いため即日復帰のガルやミシェーラと比べかなり長い療養となった。


まあ、自然治癒に比べれば圧倒的速さなのだが。



「これが先生が発見した異世界…流石です!!尊敬します!!。」

尊敬の眼差しでテルマが言う。


「しかも早々に自宅を手に入れるなんて!!これで異世界の探索も簡単に行えるというわけですね!!。」

同じく尊敬の目でアルマも言う。


…はぁ。今はこれだけワクワクしてくれているがそのうちアンナやガル、ミシェーラの用にただの一部屋みたいに出入りするんだろうなぁ。


「じゃあ、そろそろ晩御飯にしようか。今日は私とミシェーラちゃんが作ったんだよ?。」


そう、時刻はもう20時。本来なら適当な物をラナトリスで買い、異世界でのんびり食事の予定なのだが…ラナトリスの家には誰も居らず、異世界側で全員集合ときた。俺は一体何の為に、何を決意して異世界へ来たのだろうか…。



「なに辛気臭い顔してるの?ほらほらご飯だよ!。」



ドカッ!ドカッ!ドカッ!。木製の食卓をいたぶるように豪快に料理の乗った皿を並べるアンナ。



「おい、傷付くだろ。」


「細かいなぁ。嫌なら新しいの私が勝手あげるわよ。」



ガサツだな…。とゆうか並べられた料理…サラダにポークステーキ、鶏の香草焼きにでかい塊がチラホラ見えるビーフシチューや白身魚のフライ…。



「お、多いな。これ全部食うのか?。」


「?…そんなに厳しいかな?。」


ああ、そうだった。アンナもミシェーラも大食いなのだ。アンナは勿論の事、ミシェーラも身体強化の魔術を多用し、動き回る戦い方な為その分よく食べる。


…よくよく考えるとうちの面子は武闘派ばかりだな…、塔に籠って研究とは縁もゆかりも無い。


当然俺が楽をする為に選び抜いた精鋭なのだからそれで良いのだが。いや、これが良いのだ。



「ミシェーラ、サラダを取り分けてくれ。あとパンも2切れ。」


「はい…。あれ?お肉は食べないんですか?。」


鶏の香草焼きを指さすミシェーラ。アンナが絶賛解体中でそのままモモの部位をバリバリと食べている。いい所の出なんだけどな…品が無いな。


「いや、俺はアンナみたいに筋肉つけたい訳じゃないから。それにほらこれに沢山入ってるじゃん。」


そう言って大きめの椀に注がれたビーフシチューを見る。大きく切り分けられた具がシチューの部分を押し退けて激しく自己主張をしている。もはや煮物だ。



「ミシェーラ、僕のも取ってくれないか?」


「それくらい自分でしてよガル。いくら育ちが良くても私をメイド代わりにしないで。」


「…一応僕兄弟子に当たると思うんだけどなぁ。一応年上だしさ…。」


「じゃあはい。パンあげる。」


「…なんでバケット毎渡すのさ…しかもパンしか取ってくれないんだね…」


この2人は相変わらずだなぁ。兄妹のような距離感で見ていると和む。



「「ガル兄さん、パンを取ってくださいっ!!。」」


「…はいはい。2人は病み上がりだからね…。」


テルマとアルマは17歳の双子だ。精神年齢が若干低い様な気もするがそこが可愛らしく、ガルとミシェーラの事を兄さん、姉さんと呼ぶのと相まってやはり兄妹姉妹の用に見える。



「本当に、俺の弟子達は皆仲が良くて素晴らしいな。」


「ケンラが弟子にするだけして、そのあと放置してるからこれだけ結束力高いんでしょ。」


うっ。アンナさんの指摘が痛い。確かに楽するために取った弟子とはいえこれでは弟子にする詐欺だ。



「よし!、決めた。俺がおじいちゃんに頼んで異世界の色んな事を教えて貰う!。そうしたら弟子であるお前達に異世界の何たるかを指導してやろう!!。」


「「「「『指導』?!?!、先生がですか!!。」」」」


弟子達4人がシンクロする。あれ?、そこまで俺ってお前達を放置してたっけ?。


そんな、師匠から直々の指導に喜ぶ弟子達と、自分の無責任さを自覚し始める師匠を見て…アンナは…



(…あんたら魔術師なんだから…魔術について教えて・教わりなさいよ。)



ちょっとだけ呆れるのであった。







「さてと、じゃあまた明日。」


「はい、アンナさん。また明日。」


あの後騒ぎ、飲み、食った6人。ケンラは疲れたと早々に自室(異世界)に行き、アルマとテルマもやはり病み上がりで体力が落ちているのかすぐにベッドへ向かった。


「アンナさん泊まって行かないんですか?。」


「んー。泊まりたいとは思うんだけどこの格好じゃ寝にくいかな。」


アンナは今、腕や膝等に金属を用いた装甲が留められた軽装鎧を来ている。遠征中はこの程度なら常に来ているわけで、もはや私服と変わらないのだが流石に横になるには邪魔だ。


「明日ついでに就寝着とか色々持ってくるね。」


「あぁ、もう先生の許可は取るつもりもないんですね。」


心の中でこの人もこの人だなと思うガル。


「一応お聞きしますが家までお送りしますか?。…一応ですよ?形式的な奴ですよ?。」


「ありがとうガル君。当然必要無いわ、何かあれば私がガル君を守らなきゃ行けないかもだしね。」


女性を送り出す男性の常識として付き添いを提案するガルだが…当然断られる。アンナの方が強いのは確実だからだ。



「じゃあまたね、2人共。ケンラに振り回されすぎちゃダメよ?。」


「「はい!、もう慣れました!。」」


うん。ケンラの弟子だな。そう思って…まるで家族の様な暖かい師弟達の住む家を後にするアンナだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



月が照らす中、路地裏を歩くアンナ。


彼女の自身への強さへの信頼、民の安寧を守る騎士としての使命感から普段から人通りの少ない路地を見回りを兼ねて通る事が多い。



「あぁ…楽しかったなぁ。」


暗く、寒い路地を歩く。だが心の中はついさっき終わってしまった暖かい思い出でポカポカだ。


「みんなでご飯…楽しいなぁ。」


アンナは一人っ子だ。しかも親は共に多忙で周りには友達の代わりに従者が居るとゆう家だ。


共に食事をする相手など居なかった(ケンラを除いて)。



「明日も……、でもケンラが嫌がるかなぁ…。まあ、ケンラが嫌がるだけなら良いや。」


決してケンラを疎かにしている訳では無い…寧ろその逆、多少ケンラの意見を無視してしまう程には…アンナはケンラとその弟子達との時間がかけがえのないものになっているのだ。


「ケンラが仕事熱心なら文句は無いんだけどなぁ…。」


そう、仕事熱心なら…。何も考えずに尊敬できるのに…もっと…甘えれたりできぃ……。



不意に脳がざわめく。背骨を直に…羽で撫でられる様な悪寒がする。



「居るのは分かってる!!。出て来なさい!!!。」



誰かに見られている。何処に居るかは分からない。ならまずは相手に居場所を知っていると圧をかける。


そうすれば相手は…腕の無い者やストーカーなら逃げる。自分の隠密に自信があるなら出て来ない。殺しの腕は有るが隠密が不得手・専門外の者なら襲ってくる。相手の反応から相手の情報を得られるのだ。


(さぁ、どう来る?)



………………



「ははっ。中々感の鋭い女性(レディ)の様ですね。」



声の主が前方の物陰から姿を『現す』。


(こ、こいつ…バレたと思うや否やただ単に『出て来た』!!。)


潜伏する相手、それは潜伏する必要がある相手という事だ。


その相手が堂々と現れてきた。という事はこの相手について考えられることは2つ。


「んん?、良く見れば赤毛の美しい女性ではないですか。いやはや、今夜は良い月夜ですねぇ。」


雑談を始める男。

(1つ目の可能性はただの『バカ』。この場合なら本気を出して殺すと不味い…。)



そして残る1つは…



「所で…その綺麗な赤毛…。羨ましいですねぇ。私もこの渋い黒髪は気に入ってはいますが…やはりその燃えるような赤髪も実に素敵だ…同じ人間なのにどうしてこうも違うのでしょうか?。」


燕尾服のハットを被った男。その格好からはとても殺し屋に見えない…が、だからこその2つ目の可能性が浮かび上がる…。



「ああ、気になる…実に気になる…。しかし、そのお美しい外見『だけ』では美しことしか分からない…。」



2つ目の可能性…それは…



「大変申し訳ありませんが少々付き合って貰えませんか?。いやはや…私も私自身の女性への探究心には呆れているのですがこればっかりは…」


(『強い』…隠れる必要がそもそも無い奴が気まぐれで潜んでいた場合!!!。)

腰に提げた剣の柄へ手を伸ばす。


男が燕尾服の中からナイフを取り出し、それを手のひらで遊ばせながら言う。


「こればっかりは…『辞められ』無いのです。」


男が笑う。汚く笑う。卑しく笑う。


暖かい記憶と家族のような5人の魔術師の笑顔を塗りつぶす笑み…生理的な嫌悪感と僅かな恐怖で心が揺らめく。



「安心してください…すぐに『イカせる』事には定評があるので…。」


男が駆け寄る。低く、血を這いずる蛇のように。



(こ、こいつ…思っていたより『速い』!!。)



そう、この男…異世界から来た転生者は速かった。アンナの『思っていたよりも』…速かったのだ。

あ、あ、アンナさぁぁぁぁんん!!!!←お前が言うか

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