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一日
朝
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バケツ一杯に夢を汲んで運んでいたら
波を打って零れてしまった
慌てて拾おうとする僕の手をすり抜け
夢は雫となり雨に変わり
固い地面に落ちていった
だから雨水をそのまま飲んじゃいけない
それは誰かの悪夢かもしれないから
昼
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短い悲鳴を飲み込んで
日時計が南中する
僕はまだ坂を上りきっていないのに
振り返ると街は白く霞み
たぶん明日の夜は晴れるだろう
でも誰ももうそこに待ってはいないだろうし
僕は此処から動けない
どうしようもなく見上げると影が横切り
遠くから汽笛も聞こえてくるのに
そこかしこに昼餉の用意も調ったらしく
食器の音さえ響いてくるのに
夕
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18階建ての塔を風が鳴らすとき
その下を歩く人間は波の音を聞く
乗り出した海の色はあくまで黒く
敵意の欠片すら見せてはいない
割れ鍋に蓋をするような雨雲を思い出して
家路を急ぐ人々を風がさらうとき
時を告げる鐘が鳴る
おまえは此処で何をしているのかと