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無くしたもの
なくしたものを嘆いている人がいて
なにをなくしたのか聞いてみると
何をなくしたかわからないのだが
とにかくなくしてしまったのだという
不思議なことをいう人があるものだと思って
そのまま通り過ぎて家に帰ろうとしたら
僕は僕の帰り道をなくしていて
いつのまにか僕が
失われたその人になってしまっていることにやっと気がつく
僕はどこからやって来たのか
僕は何しにここへ来たのか
何よりも僕は
僕がなくすようなものを何か持っていたろうか
早く家に帰らなければならない
でも自分の家がわからない
自分の家があったかどうかはっきりしない
少しずつうすくなってゆく道で
僕は僕を探すうちに
僕がだんだん見えなくなってきていることに
気がつかないふりを続けている
GAGA#18 1998年4月




