40/50
湖面
全ては単純だ
進まなくてはならない
足元には海のように波も打ち寄せるが
残された時間はあまりない
あの赤い鉄橋は昔
石炭を積んだ貨車を通した割には
やっと2人が並んで歩ける幅しかない
天蓋のように被さる空気は重く垂れ篭め
空は晴れていても対岸は霞んで見えない
剥ぎ取るように吹きつける風の向こう
火山の形が残っていても噴煙は上がらない
もう誰の話し声も聞こえない
人の住む家もなく開いている店もない
かたかたと震える看板が
ぽつんと立ち寄った黒い鳥を見上げて
連れて行って貰いたさそうな顔をしていたが
鳥は糞をして逃げてしまい
もう私もここには居ない
全く単純だ
進まなくてはならないから
GAGA#32 2004年12月




