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帰郷
またしても黒い夏 足元から這い寄る
混沌の汗を拭い 赤い海へと駆け出す
言い知れぬ膜を張る予感 早く帰らなければ
彼等は国民を守るより 進歩派の評判を守りたいだけだと
せわしなく蝉が叫び 油が煮えるような危機感を告げる
でも逃げる場所はない この世の外のほかには
だから小さな子供が親を呼ぶ 少し待ってと
しかし誰も待つ者はなく ここには誰も居ない
歩いていこう 誰も居ない海へ
誰も待たない家を目指して
灯火を着けてこそ見えるものもあるだろう
まだ熱を持つ石畳
夏はこれからだというのに
GAGA #54 2012年8月




