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器
これと同じものを造る
二つ以上造る
あれと同じように造る
見てもいないものを造る
立て掛けた俎のように陽は傾いて
もう誰のものでもなくなった
顔を上げて新しいもののように作り直して
もう一度天高く差し上げる
あの山の陰から月が出てくるような演出は
もう飽きたと言っても止められない
地球の自転は気象学ではコリオリの力
月を引き連れ終わりの日まで回る
人工衛星を打ち上げるような
組織も知識も有りはしないのに
こんなところで何を遊んでいるのやら
寝転んで石蹴りする神様でもあるまいし
日が暮れてからカーテンを開けても意味が無いとは言うまい
外へ出ずにお月様を拝むには窓を開けねば
素知らぬ振りで通りでじゃれ合う猫の声なら
窓を閉めたくらいで聞こえなくなるものではないし
旅人は窓を開けて出ていく
雨上がりの空に猫のように虹が微笑み
生きていれば良い事もあると信じた人のように前を向いて進み
でも今まで死ななかった人は居ないと知っている
焼き上げたパンに水をかけてしまって駄目にする
気に入りの茶碗を落として割ってしまう
とかくこの世は儘ならぬもの
次の器に手を伸ばす