フォルムへの試み
意図して長くした行があるので、できるだけ折り返しがないように表示してください。
そうめんのように長く伸びる詩
-----------------------------
そこにあるのはただうつろな形をしたばかりのいくらか凸凹とした
まだ何物でもない何かをたたえるためのうつわの中の白い物ども
生き物ではなく死んだわけではなくただ物は物として寝そべるばかり
あの山の向こうからこちらの海にまで至るほとんど宗教的な情熱を
宇宙の誕生のような膨らませ方で冷たく激しく煽った自覚はあったものの
まだ名付けられていないものの名を呼ぼうとしてふと振り向いたときのように
寝そべるものを手にするには到らないことに気がつくにはあまりにも遅すぎたのだった
鍵
--
鏡の裏に夕べの陽射し
トイレの壁には上弦の月
雨ばかり降る日の王様のように
ある日すべてを引っくり返す
すなわち裏側から入ろうとして
またしても鍵を落としたらしいと気づく
明るい表通りからは子供の声、物売りの声、酔っ払いの声
そちら側へ戻らなくてはと焦れば焦るほど
落とした眼鏡と鍵が見つからない
橋の上にも川の中にも
遂に影が失くなるまで
天地創造
--------
まだ足元に何もないから
これから何を造るのも自由
しかし歌ばかり歌いすぎても
向こう岸に届くものは増えない
一日に三度食事するとも限らない
日本の野球は今回世界一になったが
いつも勝ってばかりいたわけでもない
日頃から汗を流す必要があるからといって
運動してもケーキを食べ過ぎれば太るだけだ
そんな具合に現実から逃れようと空を飛んでも
いずれは着陸して悲惨な結果が待っているだけだ
足取りが揺れているからといってそう見つめないで
空の星を取りに行ってもそんな顔はしなかったくせに
まだ足元に何もないから不安定なのは仕方ないだろうし
周りに誰も居なけりゃその誰かを造るしかないじゃないか
だから、まあ
つまりそういうことだ
ベッドは用意しておいたから殴らないで
GAGA #69 2017年9月
GAGA #54 2012年8月 縦書きでないと、鍵の形に見えないかも。元は印刷用に書いたので気にしなかったけれど。
GAGA #36 2006年6月