Jump, They Say
この詩は当初「ニュートンの林檎」と題して書いていた。発表前に改めておいたのは僥倖。
ニュートンの横に林檎を置けば
必ず似合いの組み合わせになるのなら
もいだ林檎を投げつけてやれ
万有引力に逆らって飛び続ける間は
林檎といえども自由を愛する
抛物線の頂点から自由落下に移る一瞬
林檎が僕に手を振っている
ワアワアワア
それを見つけた見物客が下から騒ぐ
『飛べ、さあ飛べ!
飛んでみせろよ!』
そんなに言うなら、てめえが飛べよ!
客のわがままは放っておくとして
僕は林檎と交代するため
滑走路を走りジャンプ台を踏んで空へ飛ぶ
ふわり
身体が宙に浮く
途中で林檎とすれ違うと
少し青ざめて微笑んだ
空高く上がりすぎると帰ってこれなくなるかもしれないが…
まあいい たとえ僕がそうなったとしても
別にあんたのせいじゃないさ
飛びたかったのは僕なんだ
GAGA #19 1998年10月
"Jump, They Say"は David Bowie 1993年のアルバム"Black Tie/White Noise"の1曲。この詩を書いた時は、たぶん自分は氏より先に死ぬのだと思い込んでいたところ、氏は2016年1月10日に逝去された、此処に謹んで冥福をお祈りする。