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家出
黒い屋根に上がる猫
僕の肩にある黒猫
賑々しく黒い爪を研ぐ
黒く溜まったものが吹き上がる
空の黒さが僅かながらも増してゆき
黒く歌う鴉がカラカラと連れ立ってゆき
黒い雪が遠い記憶を黒い海のように埋めるとき
定められた時が白く色を失うのは
言うことを聞かない娘が逃げ出すよう
娘が爪を噛んで白い夜明けを待ち続ける今も
黒く爪を研ぐ真似を止められず
黒い時間と共に刻むキャベツ
ナイフのように震えるコンニャク
赤いリンゴも白く染めてしまうソースと共に
何もかもうっすらと煮込んでしまえ
かくてあくまで黒いままの白い空にたち
娘はリンゴのような白を食すのである
明日は晴れるといいな
GAGA #38 2007年4月