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Winds〜風の旅人〜  作者: 小崎ジュンイチ
6/7

第二章 新たな出会い 1

    1


  この感覚はいったいなんなのだろう…とても心地がいい…何かに包まれているみたいだ。俺は何していたんだろうか…確か城にいて、それでどうなったんだ?そうだ、王様にパスレイスストーンを渡したんだ…そしてその後…


「我が名は、ダギース。世界の新たな神となるものだ!!」


 ダギース!!そうだ、あれからどうなったんだ!?ここは、ここはどこなんだ!?見渡す限り真っ白…何もないのか?これじゃ距離感がつかめない。みんなは?みんなはどこなんだ!誰もいない…か。こんな状況で下手に動くのはまずい、じっとしているしかないか。だけど、本当に見渡す限り真っ白だな。

「お待たせしてすみません」

「誰だ!?」

 声がするほうに顔を向けてみると、そこには羽衣を着た女性が宙を浮いていた。

「あんたはいったい…」

「私の名はレイラ。光をつかさどる神です」

「光をつかさどる神?」

 地、火、風、水の四大元素の上を行く神のことか。

「ミキス!!」

「ミキスさん!!」

「クロウディさん!!」

「えっ!?」

 振りえると、そこにはさっきまでいなかった仲間達がいた。

「みんな、無事だったのか!!」

「ミキス、再会を喜んでいる場合ではありません」

 レイラと名乗る女性は険しい顔で話した。

「どうして俺の名を?」

「詳しく話している暇はありません、手短に話しをします。あなた方の世界は今崩壊しました」

「なに!?」

 俺達の世界、『ミュライス』が崩壊だなんて…

「正確には闇の力により封じ込まれている状態になっています」

「どうしてそんなことに!?」

「…闇の神、ダギースの力によってのものです」

 ダギース…王に取り付いていた奴の名前だ。じゃあいつが闇の神なのか?

「ここは一体どこなのですか?」

 バムが一歩前に出てそういった。

「私の作り出した空間です。ここにいれば少しの間は大丈夫です」

「どうして俺達をこの空間に連れてきたんだ?」

 俺はバムより一歩前に踏み出し問いかけた。

「それは…」

 【ゴゴゴゴ!!】

「な、なんだ!?」

 レイラが俺の質問に答えようとした瞬間、この空間全てが揺れ始めた。

「空間が崩れようとしている!?ダギースの力がここまで強くなっているとは…あなた方をシュライスに送ります。それからは…」

 【ゴゴゴゴゴゴ!!】

「なに!?うわぁぁぁぁぁ!!」

 レイラの声が聞こえなくなった次の瞬間、目の前が暗くなった。


 ▽


 目が覚めたとき、俺は大地の上に倒れていた。ここはどこだ?どこかの大陸のようだけど見たことがない場所だ。そうだみんなは!?…いない、また離れ離れになってしまったみたいだ。レイラはシュライスに送るって言っていたけど…ここが『シュライス』なのか?なんだろ、ミュライスに似ているようなそんな気がする。

「ミキス!!」

 その時である、誰かが俺に声をかけてきた。その声に反応して後ろを振り向くと、そこにはユカが立っていた。

「ユカ!よかった、無事だったんだな」

「うん。でもバムさんとマミリちゃんの姿が見えないの」

 ユカは周りを見渡しながら言った。

「そうか…でもお前が無事でよかった」

「ミキスも」

「ミキス、ご無事で何よりです」

 ユカの後ろから女性の声が聞こえてきた。

「レイラ!」

「皆さんを同じ場所に送るつもりだったのですが…ダギースの力に押されてしまい皆さんをばらばらにしてしまいました」

「そうか…」

 これが、ダギースの力か。

「ダギースの力がだんだん強くなっています。急がねばなりません」

「ああ、でも少し待ってくれないか?」

「はい?」

「済ませないといけないことがあるんだ」

 そう、王の前で言ったあのことを確かめないと何も始まらない。俺はユカの方を向いた。

「俺は君の事をなんて呼んだらいいんだい?」

 ユカはうつむいたままこちらを向かなかった。彼女がもし本当にペルシニム王国のお姫様なら、この先のことを考えなければいけない。

「話してくれませんか、あなたの口から?」

 彼女は顔をこちらに向けて、ゆっくり口をあけた。

「…私の名はシェイナ・ペルシニム」

「それじゃあやっぱり」

「ええ、あの時言っていたことは本当よ」

 彼女が、正真正銘のペルシニム王国嬢『シェイナ・ペルシニム』様なのか。

「どうして嘘をついて僕に同行しようと思ったのですか?」

「あなたの剣の腕は噂を聞いていましたから、あなたについていこうと思ったのです。すごかったよミキスの噂、城の中でも話題になってたもん」

「そうですか…」

 彼女は作ったような笑顔でそういった。

「旅に出ようとした動機を聞かせてくれませんか?」

「…お父様が急におかしくなったのです」

「おかしくなった?」

「そう、まるで別人みたいにね。そう思った直後にあの勅命でしょ、だから…」

「おかしいと思ったあなたは、自分自身でそれを確かめようと…」

「そう、でもまさかあんなことになるなんて…」

 彼女の目から一粒の涙が流れ落ちた。

「お父様が…私たちの世界が…」

 口を開くたびに涙が流れ落ちていった。こんなにも思いつめていたなんて・・・近くにいながら、一緒に旅をしていながら、どうして気づいてあげられなかったのだろう。

「もう、何もかも終わりだよ…」

 こんなとき、俺はなにをすればいいんだ?いや、考えなくたって答えはもう見えているはずだ。

「…終わりじゃないよ」

「え?」

 彼女は涙を抑えながら顔を上げた。

「まだ終わりじゃない!」

「でも…」

「俺がいる」

「ミキス…?」

「俺が何とかしてみせる!!ミュライスも…お父さんだって」

「…」

 そうだ、勅命を聞いたあの日から答えは決まっている。なにがあったって、どんなことがあったって、俺はあきらめたりはしない。

「だから…」

「え?」

「もう少し、俺と一緒に旅についてきてくれないか?」

 彼女のキョトンとした顔で俺を見てきた。あれ…俺なんか変なこといったかな?

「…ミキス」

「は、はい」

「…落ち込んでいる女性を口説くなんてサイテー!!」

「なっ!?ち、違う!けして、口説いたわけじゃ!」

「ぷっ」

 はい?

「ははは。冗談だよミキス」

「へっ?」

「いつまでも泣いてられないよね!」

 彼女は後ろを向き、涙をぬぐったあと顔をパチンと叩いた。

「涙はおしまい!!」

 彼女はその言葉を言った後こちらに向き直った。

「ありがとね、ミキス」

「う、うん」

 その言葉を言った彼女の顔は、俺が今まで見たことないとてもかわいい笑顔だった。

「ん?どうしたのミキス、顔赤くして?」

「い、いや別に…」

「そうだ、私のことはシェイナさまって呼んでくれていいわよ」

「え、さま付けるの?」

「ん~?王女のいうことが聞けないのかな~?」

「い、いやそういうわけじゃ…」

「…」

 レイラは俺達の会話を呆然と聞いていた。

「あっ」

 俺とシェイナはそんなレイラに気がつき、体制を整えた。

「もうよろしいでしょうか?」

「はいどうぞ」

 レイラの明らかにあきれた顔をしていた。

「ではまず…シェイナ、私と契約をしてください」

「え、私と?」

 シェイナは自分のことを指差しながら言った。

「自然界の神は契約を果たすことで力を全て出しきることができます。ダギースに勝つためのひとつの手段です」

 光の神と契約するなんて、今までに聞いたことがない前代未聞の行為だな。

「…分かったわ」

「それではカードを私のほうへ向けてください」

「はい」

 ユカはカードケースからカードを取り出し、前に掲げた。

「我、光をつかさどる神 レイラ。シェイナの力を認め、この者と契約を果たさん…」

 【シュゥゥゥゥゥ!】

 周囲は光に覆われ、強い光が目に飛び込んだ瞬間、レイラの姿が消えた。

「成功?」

「わからない」

 俺とシェイナはカードを眺めた。

〈そんなに見なくても私はカードの中にいます〉

 明らかにあきれた声がカードから聞こえてきた。

〈私はカードの中にいます。私と契約したことにより、自分自身で能力を使えるようになります。まぁ、そのときになったら使い方を教えますので安心してください〉

「りょ、了解です」

〈それでは話をするといたしましょうか〉


 一息ついた後、レイラは今の状況について話を始めた。

〈この世界はあなた方が住んでいた世界『ミュライス』の片割れです〉

「片割れ?」

 俺は首をかしげた。

〈はい。ダギースが新たな神になると言ったことが半世紀前にもありました。そのときは二つの世界はもともと一つの存在でした。しかし、ダギースを止めるために私達は彼を封印することにしたのです。封印は成功しました…ですが予想外のことが起きたのです〉

「予想外のことっていったい?」

〈我々は全員で世界のバランスを保っていました。ですがダギースが封印されたことによりバランスが崩れ、世界が崩壊し始めてしまいました。世界の崩壊を防ぐため、この世界を作った『生命をつかさどる神 ガルゼウス』は仕方なく世界を半分にすることにしたのです〉

 半世紀前に神だけの戦いがあったのか。

〈ダギースを封じ込めた世界『ミュライス』を異世界にやることで事は収まりました…ですが、十五年前にダギースが復活したのです〉

「十五年前?」

 あの噂と同じだな。

〈復活したダギースはこのシュライスに現れました〉

「それで?」

〈力が戻っていなかったダギースは、シュライスにいた剣士に敗れました。そしてダギースを再びミュライスに封印するため、ダギースと剣士をミュライスに送ったのです〉

 それじゃあの噂そのものじゃないか!あの噂は本当だったていうのか?

〈完全に封じ込めたと思っていたのですが…力をためるために、封印されたふりをしていたようですね〉

「…パスレイスストーンとダギースはどういう繋がりなんだ?」

〈あの石には私とダギースの力が封じ込まれているのです。光と闇の神はほかの自然界の神と違い力がありすぎるため、その力の半分をあの石に封じ込めているのです〉

 ダギースは力が戻ってなくて動けなかったから、王に取り付いてあんな勅命を出したのか。

「これから俺達はどうすればいいんだレイラ」

〈とにかくはぐれた仲間と合流することが先決です、向こうにはゴーレムもいますから。ここから五キロはなれた場所に町があります、まずそこへ行きましょう〉

「よし、わかった」

 俺達は行動を開始した。


 ▽


「ここがそうなのか?」

 俺達は町の入り口らしき場所に到着した。

〈ええ、ここが我々の目指していた場所であり、世界の分かれた場所と言われています〉

「ミキス見て、この看板!!」

 シェイナが驚きながら近くにあった寂れた看板を指差した。

「これは…」

 その看板は少しかすれていたが、確かに「サイヒシティ」と刻まれていた。やっぱり…俺達の世界とこの世界はつながっていたんだ。

〈ミキス、その剣を何とかして隠せませんか?〉

「えっ、どうしてだ?」

〈この世界では武器を持つことを禁止されているのです。もし見つかったら処刑されてしまうのです〉

「わ、わかった」

 俺はかばんに入っていた布切れで剣を包んだ。

〈それではいきましょう〉

「ああ」


「ここが…町なのか?」

 なんて高い建物だ。この世界の人達はこんな場所に住んでいるのか?こんな太陽の光が届かない場所で。

〈とにかく二手に分かれましょう、もしかしたらお仲間がいるかもしれません〉

「そうだな、なら俺はこっちに行くよ」

「じゃ私はこっち、また後でね」

 俺は右の道を、シェイナは左の道を行った。


なんてところなんだここは。四角い箱が町中を走り回っている、箱中から人が話しかけてくるし、太陽じゃないのに明るいし、俺達がいる世界とまったくかけ離れているみたいだ。こんなところでバム達を見つけられるのか?

 【ドッカァーン!!】

 な、なんだこの揺れは!?向こうのほうから聞こえたけど…風に焦げた香りが混ざっている…火事?行ってみないとわからないな。


 車やビルが燃えている中、道路に長刀を持った男がたたずんでいた。

「くだらないな…」

「武器を捨てろ!!」

 するとそこに制服を着た男達が拳銃を手に、たたずんでいる男のもとに近づいてきた。

「死に急ぎたいのか、お前ら?」

「なに!?」

「いいだろう!」

 【タッッ!】

 長刀を持った男はその言葉を言った瞬間、制服を着た男達目がけ走り出した。

「う、撃て!撃てー!!」

 【パン!パン!】

「ふっ!」

 【キィン!!キィン!!】

 男は重い長刀を軽々と扱い、弾丸を全て弾き飛ばした。

「バ、バカな!あんな長い剣を片手で軽々と!!」

「死ねぇぇぇ!!」

 【グサァァァァ!!】

「ぐはぁぁぁ!!」

 男が一太刀振った瞬間、そこにいた男達は次々と倒れていった。

「あとはあんただけだ…」

 長刀を持った男は生き残った男の元にゆっくり歩み寄る。

「ば、化け物…」

「ご名答!!」

 【ブンッ!!】

「やめろぉぉぉ!!」

【チャキン!!】

「なに!?」

 男が振り下ろそうとした長刀を俺は剣で防いだ。どうなっているんだ?いろんなところが燃えているし、武器禁止のはずなのにこの男は剣を持っているし、とにかく剣を弾く!

 【チャキン!!】

「くっ、この世界でまだ剣を使っている奴がいるとな」

「これを全てお前がやったのか!?」

「そうだといったら?」

「お前を倒す!!」

「フッ…」

男は不敵な笑みを浮かべた。こんなことやる奴は只者じゃない、でも見過ごすわけにも行かない!!

「なぁ、この世界に人なんて不要だと思わないか?」

「なに?」

「人は破壊を繰り返し、憎しみと悲しみの中で生きている。そんな世界を作り出したのは誰だ?人間そのものだ。そんなことをする人間なんか不要だと思わないか?」

 この世界は、そんなにも荒んでいるのか?俺にはまだこの世界のことは分からない、けど…

「死んでいい人間なんかいない!!」

「話しても無駄だか…」

 【ブワァァァ!!】

「なに!?」

 あいつの体から気が漏れ出している、能力者か!?

「風翔激滅波!!」

「ダークブレイド!!」

 【ドッカァァァァァン!!】

 二つの衝撃波はぶつかり、相殺された。闇の刃!?まさかあれはダギースの力か?

「なかなかの威力だ」

「…お前、その力ダギースに与えられたものじゃないか?」

「!?」

「図星だな」

 この世界に来ているのか、ダギースは。

「そうだといったら…どうする?」

「お前を倒すということには変わりない!!」

「ふっ、こちらもだ!!」

 【ブシャァァァァァ!!】

「なに!?」

 闇の刃の威力がさっきより上がっている!?このままじゃ負ける。

 【パキューン!!】


「そこの君!!今のうちに逃げるんだ!!」

 俺のピンチを救ったのはさっき俺が助けた制服を着た男だった。

「まだいたのか…」

 【ダッ!!】

 男は俺への攻撃を中断し、制服を着た男のもとに走り出した。

「だめだ!!逃げろぉぉぉ!!」

「死ねぇぇぇぇぇ!!」

 【グッサァァァ!!】

 死んだ…俺を助けようとして…俺を助けようとして!!

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 【ブァァァァァ!!】

「なんだ、さっきまでとは違うこの気は!?」

 あいつのせいで…あいつのせいでぇぇぇ!!

「うぉぉぉぉぉ!!風暴玉砕弾!!」

 【ブッッッッゴォォォォ!!】

 やったか!

「少しだけヒヤッとしたが…」

 避けられた!?今の攻撃が!?

「惜しかったな」

 ち、近づいてくる。

「だが…」

全部の気を使い切ったから、体が、体が動かない。

「もう終わりだ」

 来るな!来るな来るな!!

「死ね」

 【ザクッッッッ!!】

「がはっ…」

 【ドサッ!!】

「余計なことで時間を食った、早いとこ町を崩壊させないとな…」

 意識が…遠く…


 シェイナは燃え盛る町の中を歩き回っていた。

「何がどうなってるの!」

〈分かりません。しかしダギースに似た気を感じます〉

「ダギースがここにいるの?」

〈いえ、そうではないと思うのですが…はっ!!〉

「どうしたの?」

〈シェイナあちらを!!〉

 シェイナはレイラが指示した方向を向いた。

「…ミキス?あれミキスよ!!」

【タッタッタ!!】

 シェイナは残害に埋もれている俺を発見し、走り出した。

「どうしたの!!返事してよミキス!!」

〈生気が消えかかっている…このままでは死んでしまいます〉

「そんな…何とかならないの!!」

〈直す方法はあります、ですがあなたの体が持つかどうかがわかりません。それでもやりますか?〉

「…やる。たとえ私が死んだとしても、死なせたくないから」

〈…分かりました。私の後に呪文を言ってください〉

「わかった…絶対に、絶対死なせないから」

 シェイナは傷を負った俺を抱えながら呪文を唱え始めた。



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