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Winds〜風の旅人〜  作者: 小崎ジュンイチ
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5




 一夜明けて、俺達はキーミス大陸行きの船に乗った。


「きれー!!マミリちゃんほら見てみなよ!」


「ええ、本当ですね」


ユカとマミリは甲板から船からの風景を楽しんでいた。


「しかしあんた達も変わってるね、キーミス大陸なんかに行くなんて」


「野暮用がありまして」


そして俺は船長さんのところにいた。そういえばバムはどこに行ったんだろ?


「野暮用?わかった、王が出したって言う勅命だね!」


「え、ええ。知っているんですか?」


「ああ、噂で聞いただけなんだがね。何でもマグレス山脈にパスレイスストーンを取りに行くとか…あんちゃんも大変だね、はっはっは!!」


「ははは…」


 笑えないんだけど、あんまり。


「最近は物好きが多いなしかし、キーミス大陸に行くのは今週で二回目だよ」


「珍しいですね」


「ああ、あそこはあまり行きたくないんだが…あんた達と一緒で、どうしても行きたいんだって頼まれちまってな」


「頼まれたって誰にですか?」


「旅人だよ、あんたと一緒で腰に剣を装備してるな」


「なんだって!?」


「ど、どうしたんだいきなり大きな声出して」


「あ、いえ何でもありません」


 先を越された?いやそれはないはずだ。だったら考えられるのは…ルイの宿に来た男か!?先回りしようとしているのか、俺達を待ち伏せるために。いや違う、俺達じゃない、俺を待ち伏せようとしているんだ。でも何のために…俺の命を狙っているのか?ペルシニム王国にいた旅人達も俺を狙ってたんだ、考えられなくはない。いったい、一体誰なんだ俺を狙っているのは。




 ▽




航海は何事もなく進み、太陽が天辺に昇るころには到着することができた。


「寂れている町だね」


 ユカが悲しい表情で言った。


「ここに住む人はあまりいないんだ。いるとすれば、世間が嫌になって逃げ出してきた人達ばかり。実際、ここは町じゃなくただのたまり場みたいなところになっているんだ」


「なんで誰も住もうとしないの?」


 ユカは首をかしげながら俺に問いかけてきた。


「何も知らないんだな。この大陸の土が悪くて作物がまったく育たないんだ。それにくわえて、捕る魚はすべて毒をもっている始末」


「そうなんだ」


「とにかく急ごう、ここに長居しているわけには行かないんだ」


「うん、そうだね」


 俺達はシックの港を後にした。




 あれから一週間、俺達はついにマグレス山脈のふもとに到着した。バムの意見もあり、夜に洞窟に行くのは危険なので一晩野宿をして過ごすことになった。


一週間モンスターとの戦闘ばかりでみんなぼろぼろになっている。大陸を渡ってからモンスターの強さが格段に強くなっている。この調子でいくと、マグレス山脈はもっとひどいことになっているだろうな。ふぅ、考えるのはやめよう。しかし、星がひとつも見えないな…そもそもこの一週間空を見た覚えがない。朝も夜も雲ばかり、この大陸に入ってからずっとだ。荒んだ大陸・・・そう呼ばれるのも分かる気がするな。


「ミキス」


「えっ!?」


俺はビックリして後ろを振り向いた。するとそこにはユカがたたずんでいた。


「ユカか、ビックリした」


「ごめん…隣座っていい?」


「うん、いいよ」


 ユカは俺の横に腰掛けた。


「どうしたんだ?」


「なんだか寝付けなくて」


「そうか…でも明日早いから…」


「寝とかないと?何度も言われなくて分かってますよ~」


「そうか…ふふ」


「くすっ」


 俺とユカは小さく微笑んだ。


「…星」


「ん?」


「見えないね…」


「ああ…」


 ゆっくりとした時間が、俺達の間を流れている…そんな感じがした。


「どうして見えないんだろう?」


「この大陸を包み込んでいる大気のせいだよ」


「大気の?」


「ああ、なぜだか分からないけど、十五年前からこの大陸はおかしくなってしまったらしい」


「一体何があったんだろうね、十五年前に」


「噂だけなら聞いたことがある」


「噂?」


「ああ、十五年前…」




 十五年前、異世界より現れしものが二人いた。一人は世界を破壊せんと現れた闇のもの。もう一人はそれを止めんとするため現われしもの。その二人はキーミス大陸に降り立ち最後の死闘を終えた。その戦いのさなか、闇のものは封印され、止めんとするものは天高く消えていったという…。




「そんな噂があったんだ…」


「噂だから本当かどうかは分からない…けど」


「けど?」


「もしその噂が本当だとしたら、俺達が向かおうとしているところはとても危険だということだ」


「…でも、行かないといけないよね私たち」


「ああ、行かないといけない」


 決めたんだ、俺の手で勅命を終わらすって…




「バム、妙だと思わないか?」


「ええ、怖いくらいに」


 朝、俺達はマグレス山脈の中心に向かうべく足を進めた。マグレス山脈は噂とは違い、モンスターどころか生き物もいない状態だった。これが誰も帰ってこられない未知の場所なのか?


「ミキス…本当にマグレス山脈だよね?」


「ああ、間違いなくマグレス山脈だ」


 ユカは不思議そうな顔で言った。


「ユカ、油断するなよ」


「うん」


 俺達はさらに中心部へと足を進めた。


生き物はいない、でもなんだこの圧迫感は?胸が締め付けられる感じだ。確か昔にも感じたことがある。そうだ、昔のガザル洞窟に感じがそっくりなんだ。でもなんで?わからない…けど、いまはとにかく進まないとだめなんだ。


三十分後、結局何とも遭遇しないままマグレス山脈の中枢部にある洞窟にたどり着いた。


「この洞窟の中にあるのですか、パスレイスストーンは」


 マミリちゃんが俺に問いかけてきた。


「うん、この中にある…行くぞみんな」


 俺は何のためらいもなく足を進めた。


「バムさん、私なんか怖い」


 ユカが震えながらバムに話しかけた。


「大丈夫ですよユカさん、心配しないでください」


「で、でも…」


「とにかく足を動かしましょう(なんでしょう、とてつもなく強い気を感じる…誰かがここにいる?一体誰が…)」


 洞窟内はそれほど広くはなく、人がちょうど1人と通れるか通れないかぐらいの広さだった。


後どれぐらい歩けばパスレイスストーンあるところに出られるんだ?だけどなんだ、歩けば歩くほど胸が締め付けられる気がする。気のせいなんかじゃない、この先に何かある、パスレイスストーンのほかに…ん?何か輝いている、まさか!!


 【タッタッタッタッ!!】


「どうしたのミキス!?」


 俺はユカの言葉を聞かず、光り輝くほうへと走り出した。すると次の瞬間、洞窟の中心部である広い空間に出た。


「ここが…」


 ここが中心部…なんて広い場所なんだ、洞窟とは思えない。パスレイスストーンの前に誰かいる!?


「誰だ!!」


 俺は大声で背を向けている男を呼んだ。


「…来てしまったか」


 男は振り返りながらそういった。身なりからして旅人だということが分かった。年はたぶん四十代前半であろう。なぜこんな男がここにいるんだ?王の勅命を聞いたからか?それとあの人が俺を探している男なのか?


「来てしまったとはどういうことだ?」


「…今すぐ立ち去れ」


「質問に答えろ!」


「…お前はここに来てはいけないのだ」


「来てはいけない…どうしてなんだ?」


「お前には関係のないことだ」


「ミキス!!」


 遅れてきたユカ達がようやく合流した。


「誰あの人!?」


 ユカがかなり驚いた表情で言った。


「とりあえず仲間ではないことは確かですね。ユカさん、マミリさん戦闘準備を!!」


 バムはこの状況をいち早く理解し、ユカとマミリちゃんに指示を出した。


「退くことはしないか…」


「当然だ!!」


「(やはり似ているな…)ならば、来るがよい!!」


 【チャキン!!】


 俺と相手の男は剣を抜いた。四対一、数ではこちらが勝っているんだ。なんとかなる、いや、何とかしてみせる。


「いくぞ!!」


 俺は勢いよく相手の男のところに向かっていった。


「うぉぉぉ!!」


 【チャキィン!!】


「勢いはいいが、剣がなっていないな!!」


「忠告どうも」


 俺の剣は見事に受けられた。だけど今回の俺の攻撃はおとり、本命は…


「二ノ突き、瞬撃突!!」


 バムの瞬撃突だ!!


「コンビプレーか…ふんっ!」


 【チャキン!!】


「なに!?」


 【ジャキン!!】


 中年男性は俺の剣を弾き、次にバムの槍を受け流した。


「狙いが定まっていない!!」


「くっ!(強い、メガネなしでどこまでいけるか…)」


 バムの攻撃が受け流されるなんて。


「二人とも離れて!!雷よ、天より降る鉄槌となれ!!サンダーエナジー!!」


 天から落ちる雷、これなら!


 【ドカァーン!!】


「ふっ、紙一重で避ければどうということはない」


 これもだめなのか。


「眠香の子守唄。∏∃∇∉∈∇…」


「させん!カザナミ!!」


 【ブシャー!!】


「きゃっ!ペンダントのチェーンが…」


「風の刃だと!!」


 あの刀の力か?それにしては威力が高すぎやしないか!?


「そこの女二人、すまないが倒れていてくれ!!」


【ブワァァァ!!】


「キャー!!」


「ユカ!!マミリちゃん!!」


手の平から風!?剣の力じゃない…そんな馬鹿な!!俺以外の能力者がいたなんて。


「ミキスさん!!驚いている場合ではありません!!」


「わ、わかってる!!」


 何で俺と一緒で能力を使えるは知らないけど、今はそんなことを言ってる場合じゃない!


「かき消せ!!風翔激滅波!!」


「カザナミ!!」


【ブワッシャャン!!】


 能力の力は互角。洞窟内だからこれ以上強力な技は出せない。でもそれは相手も同じ、なら接近戦で行くしかない!!


「行くぞバム!!」


「ええ!!」


 俺とバムは相手に直進して行った。


「カザナミ!!」


 風の攻撃なら、軌道を読みやすい。


 【ブシャ!!】


「やはり避けたか」


「当然だ!!」


一気に懐に飛び込めば!!


「うぉぉぉぉ!!」


こっちのものだ!!


「風殺滅流斬!!」


「あまい!!」


【ブシュュュ!!】


 これも避ける!?


「瞬撃突!!」


【チャキン!!】


「なに!?」


 バムの一瞬の技を剣で受け止めたって言うのか!?


「惜しいな」


 【バチコォーン!!】


「バム!!」


「余所見をしている暇はないぞ」


 【バチコォーン!!】


 顔面に拳を食らったバムは十メートルほど吹っ飛び、続いて俺も同じように吹っ飛んでいった。


「くっ…」


 強い…今まであった誰よりも強い。だけど、だけど俺はこんなところで。


「負けられないんだぁぁぁ!!」


 【フゥブシャァァァ!!】


「風の暴走か…」


 洞窟内だとかそんなこと考えていたら勝てない、やるしかない、やるしかないんだ!!


「つぁぁぁぁぁ!!」


「ん!?」


「風暴玉砕弾!!!!」


 【ドッコォォォォォォォン!!】


 どうだ!!


「カザナミ!!」


 なに!?


 【ブシャァァァ!!】


「うわぁぁぁぁ!!」


 風暴玉砕弾を避けたのか…


「今の技、見事だった…だが今のお前には扱うのは早いな」


「くっ…」


「悪いが、パスレイスストーンはもらっていくぞ…ん!?」


男が振り返ろうとした瞬間、男の動きが完璧に止まった。


「か、体が動かん!?」


 男の動きが止まった瞬間、マミリちゃんはパスレイスストーンのある場所へ走り出した。


「すいません」


 【パコッ!】


「ま、まて!」


 マミリちゃんはそういうと台からパスレイスストーンを抜き取っとり、そそくさと俺達の元に帰ってきた。一体何が起きているんだ?


「ふふふ。私を吹き飛ばしたこと、後悔するのね」


「ユカ…お前いったい何をしたんだ?」


「『サンダーナウ』を使ったの。この技は少しの間相手をしびれさして動かせなくする技…使うのに時間がかかるから普段はあまり使わないんだけど、ミキスが相手の注意を私からそらしてくれていたから何とかできたの」


「ふっ、そうか。ありがと」


「どういたしまして」


俺は立ち上がり男に近づいていった。


「勝負ありだな」


「…ふっ、そのようだな」


「教えてくれないか、あんたは一体何者で、なぜ俺を探しているのかを」


「…今はまだ早い」


「早い?」


「物事には順序がある、それを話すにはまだ少し時間が必要だ…」


「…いつならいいんだ」


「…それは」


【ブワー!!】


「なっ!?風が!」


 急に吹き荒れた風は少しずつ男の体を包んでいった。


「それはまたいつかだミキス・クロウディ」


「お前は一体!?」


「この世の終わりを見たくなければその石を渡すんじゃない…分かったなミキス」


「おい!!」


 そう言い残すと男は竜巻と共に消えていった。




 ▽




 あれから一週間が経った。不思議なことにペルシニム王国に向かっている間、俺達を追っかけてきているはずの連中とは遭遇しなかった。俺達は城に向かう最後の夜に城下町の宿に泊まっている。急いで帰ってきた結果、夜中に到着してしまい宿で一泊することになったのだ。




なんだか眠れないな…外でも散歩するか。


【キィー!】


俺は扉を開けて外に出た。星がきれだ…大陸が違うだけでどうしてこうも空が違うのだろうか。


朝になったら終ってしまうんだな、この旅も。今まででこんなに濃い内容の旅はなかったと思う。盗賊団との決着がつき、神と会うことになり、キーミス大陸に渡ることになり、マグレス山脈に登り、俺と同じ能力者に会い…とても大変な旅だった。でも、仲間がいたから乗り越えられたんだ。今までずっと俺は一人で旅をしてきた。仲間なんて要らないとさえ思っていた。でもこの旅で仲間がどれだけ大事かが分かった。いや、分からされたんだと思う。


この石を王様に渡したらみんなはどうするのだろう?またばらばらになってしまうのだろうか。旅の目的は人それぞれ違うだろうからバラバラになっていくのは当然だろうけど、それでも、できれば一緒にいたい…無理なことは分かっていても。もうそろそろ宿に帰るか。




 宿に戻った俺は自分の部屋に向かった。あれ?あれは確かユカの部屋だったよな。ドアの隙間から明かりが漏れている。まだ起きているのかな?


 【コンコン!】


「えっ!?はい?」


「俺だけど」


「ミキス?」


【キィー!】


 ユカはドアを少しだけ開けて顔を覗かした。


「どうしたの、こんな遅くに?」


「部屋の前を通りかかったら光が見えたから」


「そう…寝付けない?」


「ちょっとな」


「今までと逆だね」


「そうだな。お前も寝付けないのか?」


「うん、でももう寝るよ。日記を書き終えてからね」


「日記なんて付けてたんだ」


「意外?」


「いや、そういう意味じゃ」


「ふふふ、いいわよ別に。終わっちゃうね…この旅も」


「ああ…」


 ゆったりとした時間が流れていたはずなのに、少しの間沈黙が続いた。


「…私、寝るね」


「ああ。遅くにごめん」


「いいわよ。おやすみ」


「おやすみ」


 ユカがドアを閉めた後、俺は自分の部屋に帰っていった。




 ▽




 朝になると城へと向かうため、すぐさま宿を後にした。


「王がお待ちしています。どうぞ」


「よし、行くか」


 俺達は兵士の誘導で王の間に向かった。


「王様にははじめてお目にかかります。ユカさんはどんな方か知っていますか?」


「そんなにいい人じゃないわよ」


「え?」


 ユカに質問をしたマミリちゃんは驚いた顔をしていた。今日のユカいつもと違う、どうしたんだろ?それになんでスカーフなんか被っているんだろか…聞いてみるか。


「ユカ、何でそんなスカーフをかぶっているんだ?」


「…顔色が悪いから隠しているの」


「そうなのか」


 やっぱりなんか変だ。


「(石を渡してどうなってしまうのか。ちゃんと見届けないといけませんね)」


「どうした、バム?」


「いえ、別に」


 二人とも何かいつもと違う…どうしたんだろ。


【ギィー!!】


 王の間の重たい扉が兵によって開けられた。


「お主たちか、パスレイスストーンをもってまいったのは?」


「はい、そうでございます」


 俺達は王の前に跪いた。


「して、パスレイスストーンはどこに?」


「ここに」


 俺はカバンから取り出したパスレイスストーンを兵に渡した。そして兵から王へと渡っていった。


「おお、ついに戻ったか…」


 戻った?何のことだろう。その時、後ろのほうにいたユカが急に立ち上がり、王の前まで歩いていった。


「ユカ!?」


「王の御前であるぞ!!立場をわきまえんか小娘!!」


 兵士はユカを怒鳴りつけた。


「王様…私の顔をお忘れですか?」


 ユカはスカーフから顔だけを覗かせて言った。


「して…どこかであったかの?」


「…皆さん、この王は偽者です!!」


 ユカは振り返り、この場にいる全ての者にそう告げた。な、何を言い出すんだユカ!?


「貴様!!王に何を言う!!生きて帰れると思っているのか!!」


 この場にいる全ての兵士が剣を抜く。


「ユカ!!」


 【ガシッ!】


 ユカを止めに行こうとしたとき、誰かが俺の肩をつかんだ。


「待ちなさい」


「バム!?」


 俺の肩をつかんでいたのはバムだった。


「待ってなんかいられるか!!ユカが殺されてしまう!!」


「…見ておきなさい」


「なに!?」


「今から起こることを、1つたりとも見逃してはなりません。特にあなたは!!」


「えっ?」


 一体なにが起こるんだ、ユカお前は一体!?


「貴様、名を名乗れ!!」


 兵士は剣をユカに突きつけながら言った。


「…私の名は」


 ユカはゆっくりとかぶっていたスカーフを取り、こう叫んだ。


「私の名は、チェイス・ペルシニムの娘!!シェイナ・ペルシニムです!!」


「!!」


 その場にいたすべての人の時が止まったかのように、誰も言葉が出なかった。ユカが王女だったなんて…


「あなたはいったい誰です!!王の仮面を付けた偽者よ!!」


 ユカは王のほうに振り返り、指先を向け言った。


「ふふ、まさかこいつの娘が旅に同行していたとは誤算だったな。もう少し楽に行こうと思ったが…仕方ない。石が手に入っただけで良いとしよう」


 次の瞬間、王の体から闇のように黒い気を放つ何者かが抜け出るように現れた。こいつ人間なのか?いや違う。この感じ、マグレス山脈にいたときと同じ圧迫感を感じる。


「お前は誰だ!!」


 俺は王に取り付いていた黒い影に向かって叫んだ。


「我が名は…」


「全兵突撃~!!」


「だめです、むやみに攻撃を仕掛けては!!」


 バムは攻撃を仕掛けようとした兵士達にそう告げた。


【シュゥゥゥゥゥゥ!!】


「ぐわぁぁぁー!!」


「なに!?」


 王に取り付いていた者に襲い掛かった兵士達は、パスレイスストーンの中に次々と吸い込まれていった。


「石に吸収された…あの石にあのような力があったとは!?ミキスさん!!シェイナさまを早くこちらに連れてきてください!!このままではあの方も危ない!!」


「わ、分かった!」


 俺はすさまじい気の中、バムの言うと通りユカの元へと駆け寄った。


「こっちに来るんだ!!」


「いや!!離して!!お父様―!!」


「我が名は、ダギース!!世界の新たな神となるものだぁぁぁ!!」


 次の瞬間、闇がすべてを包み込んでいった。

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