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Winds〜風の旅人〜  作者: 小崎ジュンイチ
1/7

第一章 風の始まり 1

プロローグ 『風の始まり』



この世界は、森があり、川があり、城があり、

先が見えないほど広がる草原がある世界。


この世界には人や町を襲うモンスターが存在する。


もちろん、そのモンスターを倒すべく立ち上がった剣士や魔術師も存在している。


そうこれは、そんな世界を旅している一人の青年の物語。


  彼の名前は『ミキス・クロウディ』


旅人の、ミキス・クロウディである。


 俺の名前はミキス・クロウディ、この世界『ミュライス』を旅している者だ。


ミュライスには自然が豊富で、空気が澄んでいて、海は透き通るほどきれいで、人間が住むにはとても理想的間世界だ。

だけど、いいところばかりではない。それはなぜか…それは世界に住む奴らが『人間』以外にもいるからだ。奴らは一般的に『モンスター』と言われていて、町や村、そして人を襲う。

遥か昔はそれが続き、人間が全滅しかけたこともあったらしい…でも今は違う。俺達みたいな旅人のおかげで、町や村は平和な日々を送っている。

そして今まさに、俺とモンスターの戦いが始まろうとしている。


 ▽


俺は今、犬種のモンスター『ビジュック』に囲まれている。数はざっと数えて十五匹はいると思われる。ビジュクは素早い上に鼻が効くため、一度目をつけられると逃げることができない厄介なモンスターなのだ。

戦うしか生きる道は残されていないか。

 【チャキィン!】

俺は剣を抜き、戦闘態勢に入る。こっちから攻めるか、それとも後手に回るか…ん?モンスターの方から攻めてきた。なら!

 【ブシャヤヤ!!】

 来るやつらを順番に斬り倒す!!

「はぁー!!」

 【ブシャ!!】

 俺は飛び掛ってくるビジュックを確実に一体ずつ倒していく。

「こんのぉ!」

一匹ずつ倒していたらこっちの身が持たなくなる。あれをやるしかないか…

「ん?」

なんだ、攻撃が止んだ?何をするつもりなんだ…まさか一斉に飛び掛って来る気か!?

「まずい、なに!?」

 完全に囲まれた!?四方が塞がれていて逃げ道がない。どこか、どこかに逃げ道は…そうだ。

「はぁっ!!」

 四方が塞がれていても、まだジャンプして上に逃げられる。

「そして、この場所からなら!」

この場所からあれを使えば、モンスターを一掃できるな。

【プシュー!】

体中にあふれる風を一点に集中させる。

【ブワァー!!】

 風が体中を駆け回っている…いい感じだ。

「かき消せ、風翔激滅波!!」

【ブシャャャャ!!】

 剣から放たれた風の刃は数十匹いたビジュクを一掃した。

何とかなったみたいだな。しかし最近戦闘が多い…風の能力を使うには精神を使うから、こんなに戦闘が多いと体が持たなくなってしまう。確か近くにサイヒシティがあったはず…そこで一度休むか。


 ▽


俺はなんとか夕暮れ前にサイヒシティに到着した。早く宿を探さないと泊まるところが無くなってしまうな。

そう言えばなんでこの町にだけ『シティ』と言う名前が使われていのだろうか?聞いた話では、この町に住んでいたご先祖さまが付けた名前らしいけど…シティなんて変わっている名前だ。

「やめてください!!」

何だ今の悲鳴?あの人だかりから聞こえたみたいだけど…行ってみるか。


俺は人だかりをかき分けて中心部へと向かった。

「大丈夫かねあの子・・・」

「誰か助けてあげないのか?」

誰かを心配する声が人だかりを進んでいる俺の耳に入ってきた。誰かが捕まっているのか?俺が人だかりを抜けたとき時、目に映ったのはエプロンを着ている1人の女性と、ムダに細い体系の男の姿だった。何かもめているみたいだな。

「いいじゃねえか~楽しいことしようぜ」

「いやです!!放してください!!」

「付き合わないとこの剣でグサリだよ?」

 片方の舌を出した男は女の喉に剣を近づけながらそう言った。ナンパにしては強引なやり方だな。

「剣を使っておどすなんて最低だぞ!!」

「そうだそうだ!!」

 町の人たちの批判の声が飛び交った。町の人のいうことは当然だ…でも。

「誰のおかげで町の中で平和に暮らせてると思ってんだ!あぁ!!」

 でもこいつらのおかげで、町や村が守られているのが今の現実。だから、町や村の人達は旅人に何も言い返すことが出来ない…そこを付けねらって悪さをする連中が最近増えてきている。

「わかったか!貴様らは俺に助けられてんだよ!!いい思いして何が悪い!!」

だからと言って、何をしてもいいわけはない。

「いやっ、はなして!!誰か助けて!!」

【バシッ!】

「いてっ!誰れだ…誰れだ俺に石を投げやがっのは!!」

「…俺だ」

俺は男の顔に石ころを投げつけた。性分と言うかなんと言うか…やっぱり、こういうことを見て見ぬ振りなんかできないよな。誰かを助ける事に理由なんて必要ない。

「なにが『俺だ』だ!!ふざけやがって、今すぐぶったぎってやるよ!!」

「きゃっ!」

 男は女を突き飛ばし、一直線に俺に斬りかかってきた。

「死ねぇぇぇ!」

「冗談!!」

 【ドコッ!】

「ぐはっ!」

男が剣を振り下ろした瞬間、男のみぞおちに剣の柄頭(剣先の反対側)を打ち込んでやった。こんな奴相手に剣を抜くまでもない。

「ぐっ…」

 【バタッ!】

男の膝はガクッと地面に落ちた。

「力を持っているからって、それを行使していいと思っているのか?」

「うるせぇ…俺達はモンスターを倒しているんだ、いい思いして何が悪い!!」

「まだやるつもりか」

「当然だ、このまま引き下がれるかよ!!」

「…なら仕方ないな」

 【チャキン!】

 俺は鞘から剣をゆっくりと抜いた。

「や、やる気か!?」

 【ブワッ!!】

「うわっ!な、なんだ、風がいきなり?」

 次の瞬間、俺は風を周囲に発生させた。

「その人を放せ…でなければ俺の風がお前を切り裂く」

「お、お前まさか!風の旅人のミキス・クロウディか!?」

「ああ、そうだ」

「ははは…ま、マジかよ」

「このままじゃ引き下がれないんだろ?さぁ、続きを始めようじゃないか」

「じょ、冗談だよ冗談。ちょっと調子乗っちまっただけさ。だから命だけは勘弁してくれよ、なっ?」

「ならさっさとここから立ち去れ!」

「はい!」

 男は大急ぎで逃げていった。俺はこの大陸では結構名が知り渡っている…だから名前を聞いたり、風の能力を見せただけで逃げてく奴が多いんだ。

【パチパチパチパチ!】

俺の周りから手を叩く音が聞こえてきた。

「すごいぜ兄ちゃん」

「あなたのおかげでシューちゃんが助かったわ」

「あんたこそ本当に剣士だ!」

周りにいた人達からの感謝の声が俺に集まってきた。

「い、いや、そんな…」

 なんだか照れるな、こういうの。

「あの」

そのとき、人質になっていた女の人が俺のすぐ隣から声をかけてきた。

「あ、大丈夫だった?」

「はい…ミキス・クロウディさん、ありがとうございました。本当にありがとうございました」

 女性は何回も何回も頭を下げた。

「そ、そんなに頭下げないでよ」

「す、すいません。でも言いたいんです、心の底からうれしかったから…ありがとうございます」

「どういたしまして」

【チャキン!】

 俺は彼女の言葉に照れながら剣を鞘に収めた。

「それじゃ俺行くよ、宿探さないといけないから」

「え?あの、宿を探しているのですか?」

「うん、今日はこの町で休もうと思ってね」

「…それなら私に任せてもらえませんか?」

「え?」

 俺は訳も分からぬまま、彼女の顔をじっと見ていた。


 ▽


 【ボフッ!】

「ふ~、食べ過ぎたな」

 俺は満腹の腹を押さえながらベッドに横たわった。久しぶりのベッドは気持ちがいいな。だけどまさかシューちゃんの家が宿屋だったなんて、おかげで宿を探す手間が省けた。夕食おいしかったな…あれがお袋の味ってやつなのかな。


俺は小さい頃シビスの森で拾われた。拾われた後、俺は保育所で育てられたため本当の親の顔を見たことが無い。

別にその場所がきらいだった訳ではない。村の人達はみんな優しい人達ばかりだったし、空気もきれいで、俺も好きな村だ。でも『一度だけでいい、親に会いたい』という思いが心のどこかにあったのだろう。だから俺は、旅に出たいと思うようになったんだと思う。

 【コンコン!】

「はい」

「ミキスさん、お茶をお持ちしました。入ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

 シューちゃんはお盆を片手に持って部屋に入ってきた。

「お茶、ここに置いときますね」

「ありがとう。しかしシューちゃんのお母さんの料理、すっごくおいしかったよ」

「ふふ、お母さんに言ったらきっと喜びます」

 シューちゃんは微笑みながらテーブルにお茶を置いた。

「そういえばミキスさんも明後日ペルシニム王国に行くのですか?」

「ペルシニム王国?別に行く気は無いけど」

「そうなんですか?私はてっきり、ここに泊まっている方々と一緒でお城に向かうものだとばかり思っていました」

「…何かあるのかな」

「聞いた話で詳しいことは知らないのですけど。なんでも明後日、王様直々の勅命があるらしいですよ」

「勅命って…内容は?」

「詳しいことはよく分からないですけど、なんでも旅人ばかりを集めているとお聞きしました」

 旅人ばかりを集めているか…気になるな。今までに民衆への勅命は何度かあった、でも旅人への勅命なんて一度もなかった。

「そう言えばこの宿に泊まってらっしゃる旅人さんが言っていました。『この仕事が成功すれば一生遊んで暮らせるらしい』とか」

 遊んで暮らせるか…妙だな。俺も行く必要があるみたいだな。

「なら俺も行ってみるよ」

「ミキスさんも行くのですか?」

「うん、少し気になることもあるし」

「それなら、お父さんに馬車で送ってもらってください。私頼んでおきますので」

「え!?いいよ、明日出発すれば十分間に合うし」

「『いいよ』じゃありません。私はまだミキスさんにお礼しきれてないんです、これぐらいさせてください」

「…わかった。ありがとう」

「いえ、それではゆっくりと休んでください」

「うん、そうさせてもらう」

 そう言うとシューは部屋を後にした。明後日、いったいどんな勅命が下されるんだ?今は考えてもしかたがない、とにかく休まないと。


 ▽


 勅命が出されると言われている日の朝、俺はシューちゃんのお父さんの馬車でペルシニム王国の入り口まで来た。

 俺は馬車を下りると、馬車に乗っている男のほうへ足を進める。

「ありがとうございました」

「娘を助けてもらったんだ、それよりもがんばりなよ」

「はい、それでは」

「ミキスさん!!」

 シューちゃんの声が城に行こうとする俺の足を止めた。

「また絶対に立ち寄ってくださいね!」

「ああ、絶対立ち寄るよ!!」

 俺はそういうと、手を振り城へと足を向けた。俺の足は脚は城下町なんて見向きもせず、城へと向かって行った。


「ここだな」

急いできたおかげで城の門まで十分で着くことができた。声が聞こえるな、もう結構人が集まっているみたいだ。噂は本当か…立ち止まっているわけには行かないな。

「…よし」

俺は決意を胸に門をくぐった。するとそこには数百人の人々が、声を張り上げ王の勅命を待っていた。

俺達一般人は門をくぐることは出来ても、城の入り口に入ることはできない。故にいつも俺達一般人は城の入り口と門との間で王の勅命を聞いているのだ。しかしシューちゃんの言っていたことは正しかったみたいだな、ここにいる奴らほとんどが旅人のようだ。いったいこれからどんな勅命が下されるっていうんだ。

 【パッパラッパー!】

 トランペットがかき鳴らされ、その音が頃合になったころ、王は窓からベランダに出てきた。

「みなの者、よく集まってくれた。これから旅の者だけに勅命を言い渡す」

旅人だけ…噂は本当だったようだな。

「これより旅の者はマグレス山脈に行き、パスレイスストーンを捕ってきて欲しい」

「なっ!?」

 マグレス山脈だと!?本気で言っているのか?マグレス山脈はモンスターが強すぎて誰一人帰ってこない未知の場所、一体何を考えているんだペルシニム国王は。

「しかしこの旅には危険が伴っているであろう、よって成功した者には五千万ガルムと、城の警備の仕事に就かせたいと思う」

「おおっ!?」

「すげー!!」

「五千万ガルムなんて一生かかっても手に入らないぞ」

「それに城の警備の仕事をやってれば生活に困ることもないぜ!」

 くそっ、最悪の展開だ。このままじゃ…。

「さあ旅の者達よ!必ずパスレイスストーンを採って参るのじゃ!!」

「うぉ――!!」

くそっ、やっぱり旅人全員行く気になっている。金に踊らされているだけだとなんで気付かないんだ!!でもなんでパスレイスストーンなんかを…


 ▽


勅命を聞いた後、俺は城下町の広場でカバンの整理をしていた。旅に必要な物はちゃんと揃っている。あそこにいた旅人じゃ、たぶん行っても無駄死にするだけだ。だったら俺が先に行ってこの勅命を終わらせてやる。そんなことを考えていると、女性の声が聞こえてくる。

「すいません…もしかしてミキス・クロウディさんですか?」

声を掛けられた俺が見上げた先には、ピンク色のリボンを着けた女性が立っていた。カバンを背負っているってことはこの子も旅人なのかな?全然そうは見えないけど。

「そうだけどなにか?」

「やっぱり!!」

 彼女は手をパチンと鳴らしながら喜んでいた。俺はそんなこと気にもせず旅の準備終えたカバンを担ぎ、立ち上がった。

「お願いがあるんです。私もいっしょに連れていってもらえませんか?」

「君を?」

「はい、私こう見えてもカード魔法が使えるんです。だから自分のことは自分で守りますので…だめでしょうか?」

カード魔法…この世界の道具には自然界の力が宿っているものが存在するという。そのことを『トゥールマジック』というのだが、道具に秘められている力を、呪文という名の鍵で解放することにより、強力な攻撃魔法や治癒魔法を使うことが出来るという便利な道具である。

魔法は確か、遠距離攻撃や援護に向いている。さすがに一人でマグレス山脈行くのは危険だし…この際仕方ないか。

「わかった、こっちも一人で行くのは危険だと思っていたとこなんだ」

「やった!!そうそう、報酬は三割程度でいいので」

「了解」

俺は少し笑って返事をした。

「えっと、君名前は?」

「私、ユカ・ユミニイスと言います」

「よろしくユカ…ねぇ、敬語はやめない?たぶん俺と歳はそんなに変わらないと思うから」

「何歳ですか?」

「俺は十六歳」

「私と一歳違いで年上か…それでもいい?」

「もちろん」

「それじゃよろしくね、ミキス」

 元気がいい子だな。ん?なんだ、体中に妙な殺気を感じる…まさか!?

「それじゃ行きましょう」

「そうしたいのは山々なんだけど…まずここから逃げないことには、どこにもこうにも行かないな」

「え?ええ~!?」

 さっきまで城にいた連中が自分達の武器を手に、俺達を包囲していた。俺も有名になったものだ。

「ミキス・クロウディ、ここで死んでもらうぜ」

「報酬は俺のものだ、お前なんかには渡さねえ」

 まったく、考えることはみんな一緒って訳か。

「ど、どうするの?」

 ユカは俺の顔を少し震えながら見てきた。こんな状況になったら。

「正面突破しかない。俺の合図で一気に行くぞ!」

「わかったわ」

俺は剣を抜き、ユカは腰のカードケースからカードを取り出した。この人数相手になんとかなるか…

「行くぞ、ユカ!!かき消せ、風翔激滅波!!」

「雷よ、その姿を矢に変えて放て、サンダーアロー!!」

 【ドカァァァン!!】

 風の刃と雷の矢は前列にいた連中を吹き飛ばした…が、ほかの奴らはそいつらの事を気にもせず特攻してきた。少し気遣えよな!

「ここで終わりだぁぁぁ!!」

「そっちがな!」

【ドフッ!】

「どうだ!!」

 俺は襲い掛かってくる相手一人ひとりを峰打ちでなぎ倒して行った。くそっ、いったい何人いるんだ?

「死ねー!!」

「こっの!!」

 【ドフッ!】

「まだまだ!!」

次の相手に斬りかかろうとしたその時であった。

【ドンッ】

「何だ!?」

 俺の背中に何かが…いや、誰かがぶつかってきた。

「きゃ!」

「ユカか!?」

 首を後ろにした時俺の目に映ったのは、冷や汗をたらしたユカと迫ってくる旅人達だった。

「ごめん、こっちはもうだめみたい」

「そうか…こっちも同じだ」

 再び目を正面に向けた時には、俺方の旅人達も間合いを詰めてきていた。ここで終わりか、終わりなのか?まだやり遂げてないことだってあるのに。

 【モクモクモク】

「ぐわっ、なんだこれ」

「前が見えねえ」

 これは…煙?

「ミキス、これは?」

「どうやら煙のようだけど」

 何で煙が?しかも襲ってきた旅人達の方にだけ。

「さぁ、今のうちに」

 その時、聞き覚えのない声が俺を呼んだ。

「誰だ!?」

「それより早く」

「…わかった。行くぞユカ!!」

「う、うん!!」

 あの声はいったい…いや、今はそんなことを考えるより逃げることが先決だ。俺とユカは煙の中を潜り抜け、旅人達から遠ざかっていった。


 ▽


ペルシニム王国の外に逃げ切った俺とユカは、息を切らしながら生きていることを確かめ合った。

「い、生きてるな俺達」

「そ、そうみたい。でも誰が助けてくれたのかしら?」

 すると俺達の後ろから男性の声が聞こえてく。

「わたしです」

 後ろを向くとそこには、優しい顔をし、髪をくくった一人の男性が立っていた。

「大変そうだったので手を貸しましたが、不必要でしたか?」

「断然必要、本当にやばかったから」

「ふふっ、それはよかった。ミキスさん、あなたは今狙われる身、気をつけないと命を落としてしまいますよ」

 優しい顔つきだったその男の目つきは、一瞬のうちに獲物を駆るかのような目つきに変わっていた。

「どうゆう意味だ?」

「あなたがやろうとしていることはそれほどの危険が伴うということです。そして今、何か起ころうとしていることは、あなたもお分かりでしょう」

「王がやろうとしていること、か」

「ええ、この国に何かが起ころうとしている」

「それは一体なんなんだ?」

「わたしにも分かりません、調べてみない限りは…と言うことでミキスさん、わたしもあなた方に同行させてもらいますね」

「わかった…って、何だと!?ちょっと待て、急過ぎやしないか!?」

「人生とは急なものです」

「理由は?理由はなんなんだよ!?」

「知りたくなったんですよ、いろいろとね」

「…戦えるのか?」

 俺は訝しげな顔でその男を見た。

「背中の槍は飾りじゃないですよ」

 男性は背中の槍を手に持って見せた。ずいぶん使い込んでいる槍のようだ。

「…わかった、よろしく頼む」

「ありがとうございます。わたしの名はバム・バッシュと申します、以後お見知りおきを」

「俺はミキス・クロウディ、でこっちはユカだ」

 俺はユカのほうに手をやって紹介する。しかしユカは何か考え込んでいるらしく、何も返事をしなかった。

「(国王はいったい何を考えているのかしら)」

「ん?おいユカ、自己紹介しろよ」

「え?あ、ごめんボーっとしちゃってた。ユカ・ユミニイスです、よろしく」

 バムはそれを聞くと軽くお辞儀をした。

「よろしく」

 旅の準備も人手もバッチリ。次に向かう村は『シスル』だ。追っ手が来る前に出発と行くか。


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