第四話 仮初の平和 崩壊 その2
各個散開後、俺たちは唐突に感知された魔力を目指した。
「いたっ!やっぱり執行官だ」
「うむ、半ばエリウン化しているようだがナ」
「…あの甲殻、硬そう。私の簡易兵装じゃムリかも」
クレハは、銃を持つことによってマインドセットし、感情を完璧に制御、
黙々と任務をこなす狙撃手となる。
「…あぁ、でも精度の高さではキミはとても優秀だよ…ふふっ」
……いや、さっきまでの気弱気弱キャラから、銃に語りかけ、頬擦りする
サイコパスとなっていた。
何処かの某派出所に出てきた、バイクのハンドルを握ると人格が変貌する人の様な……
(…ギャップ萌え、かな。俺は萌えらないけど)
(才覚はあるんだけど…どことなくヤバい雰囲気があるナ)
ついでに、彼女は昔からサイコパスではなく、
彼女が師事した師匠-カビン・ナーズの影響である。
(…後でカビンの野郎をぶん殴ろう)
(……後でナーズのど阿呆には、鉄槌を下すとしようかナ)
2人が、1人の少女の人格を思い切り変えた(もはや洗脳レベルでは?)
男に対する裁きを思案していた頃、
遠くで、くしゃみが聞こえた気がした。
「2人とも、落ち着く。普段通りに頑張らないと、殺られる」
「あ、あぁすまない。少しハイになってた」
「んん、すまぬのぉ。…ここは戦場、油断は大敵だったナ」
そう、いくらサイコパスっぽくてもクレハは優秀なのだ。
それに、こちらに奴は気づいたらしい。
変質した盾を前方に掲げ、突進してくる。
「撃っていい?」
「牽制頼んダっ!」
「〈蒼狼〉!スマンが2人で時間稼ぎ頼っ」
ゾクッと悪寒が走る。
直感に任せて受け身を構え、瞬間
ドッガアァァン!!!!!
トラックにぶつかったような衝撃を受け地面に叩きつけられる。
(や、 べぇ意識がトブ……)
「かふっ、な、何が……」
「マヤっ!くっそおおおお!!!」
どうやら、敵はシールドバッシュをかましてきやがったらしい。
激昂した〈蒼狼〉が疾風の如く駆け抜ける。
瞬時に背後を肉薄し、小太刀と短刀の二刀流で、左右から首を斬る
〈双爪牙〉で仕留めようとし…。
パキィィン
「なっ、折れ、いや、砕けたノカ…?」
当然、呆然とした〈蒼狼〉などお構いなく、敵は盾を振りかぶり〈蒼狼〉を潰そうとし…。
「よしっ上出来だっ〈蒼狼〉!!」
「っ!」
〈蒼狼〉が、演技を止め、機敏に回避した瞬間。
甲殻の薄い背中に、クレハの徹甲弾が直撃する。
「……」
「済まないな、こちとら死にたくないんでな」
「虚偽情報を与えられてたことに気づかないとダメだゾ」
「ん、PvPの基本」
そうして、今日も任務完了、……早く風呂に入りたい。
身体めちゃくちゃ痛い、と一言も本音を漏らさずに、
俺たちは帰路についた。