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掘り起こしちゃいけない昔の話  作者: 鈴宮ハルト
2/10

丑三つ時の高野山 (第一夜)

 大学生というモノは時間と暇を持て余し、よくくだらないことに夢中になったりするものだ。霊所巡りもその一つ。


 夏になると特に、女達は恐がりながらも「オバケ見に行くぞ!」と言えば必ず数名の参加者が集まった。その日は近くの女子寮に住む“あっくん”と“ナルミちゃん”の2人と、友人の染浦(男)の4人で完全なる思い付きによる高野山探索に向かう事になった。


 高野山へのルートは染浦が知っていたので、ナビは彼に任せて俺が運転する事になった。午後9時過ぎに出掛けたので、高野山に着いた頃には午前1時を完全にまわっていた。あと少しで丑三(うしみ)つ時と言われる時刻である。


 高野山には2キロ近い長~い墓ばかりが続く道が森の中を走っている場所がある。“奥の院”と呼ばれる場所の事だが、そこには有名な戦国武将"織田信長"や将軍"徳川家康"などの歴史的有名人の墓がある。はじめて来たので物珍しく、俺たちは有名人の墓標を探しながらどんどんと奥に進んで行った。


 そして2㌔もある墓場を抜け、世界遺産でもある奥の院の巨大ピラミッド、山と積まれた無縁仏の姿を見てから何事もなく御堂がある場所までたどり着いた。


 当然ながらこんな時間に誰も居ない。

高野山の魔除け札を買うという目的も達成できそうにないので、俺たちは腹も減った事だし帰り道でラーメンでも食うか!と言って早々に高野山を下りることにした。


 女子の手前、全く怖くないと言いながらもホントは少し気味悪かった。一人だったら絶対、丑三つ時にあんな場所を歩いたりしないだろう。思い付きで来てしまったので、その日は誰ひとりとして懐中電灯すら持っていなかったのだ。


 今ならライトの代わりにもなるスマホがあるが、当時そんな便利グッズは存在しない。月の明かりだけを頼りに2キロ近くもある墓場の真ん中を歩くなんて正気の沙汰ではないのだ。あの時の俺たちは皆、異常なハイテンションで何かに引き寄せられるように墓場道を歩いた。帰りは普通に参道を歩き、駐車場まで戻った。



 数日後、あっくん(女子です)があの日からゼミに来ていない事を知らされた。心配になって彼女の住む女子寮まで見舞いに行く事にした。染浦も誘い彼女のアパートまで行くと、あっくんは寒いからと言ってエアコンもつけず、膝を抱えてうずくまるような状態で部屋で寝ていた。


 真夏に?

 寒い?


 すぐに病院に行ったが、熱もなければ異常も無い。どこも悪くないからと薬も出されずにそのまま家に帰された。


 次の日のこと、彼女の友人のひとりが霊感のある人から「彼女の部屋には何か悪い物があるハズだから探してみてくれ」という伝言を聞いて来た。最近持ち込んだ物だというので、本人に覚えがないかを聞きながら、友達数人がかりで部屋中を探しまわった。


 別に怪しい物は見付からなかった。

その日は解散してそれぞれの部屋に戻ったのだが、その日の深夜、午前2時頃になって電話が鳴り叩き起こされた。


 電話の主はナルミちゃんだった。

ちょっと内緒の話しがあるからと、彼女の部屋に呼び出された。普通ならエッチな話しの一つでも期待したいところだが、どうやらそんな雰囲気ではない。



 部屋の中にはあっくんがいた。

タオルケットで体を包み、尋常ではない変な目つきをしてこちらをジッと眺めている。


 またもや嫌な予感がした。

そして、その彼女の口から出た言葉・・・

それは、俺の理解が及ばない罪の告白だったのだ。




 (つづく)

挿絵(By みてみん)

高野山・奥の院

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