キャンパスの闇
これは体験をモチーフに書かれた短編集です。
その地方に伝わる怪談話等ではないので、そんなに怖くはありません。すごい話を期待していたのならごめんなさい。
さて、大学生時代の話になるが、その頃の私は学校の近くの学生マンションに住んでいた。マンションは正門から学校を挟んで逆方向なので、裏口の金網フェンスが途切れた場所から山道を抜けて草を掻き分け登校していた。
獣道に近いその裏道は昼間でも薄暗く光源がない。
日が高いうちは感じないのだが、夕方近くになると、ある一方向から圧迫感に近い何かを感じる事があった。
なんとなくだが、その圧迫感のある方向に目を向ける事には抵抗があり、今までまともに見ないようにしていたのだが、ある日たまたまそれをマトモに見てしまった。
幽霊など見たことがないし、そこにそういう物がいたかどうか分からない。しかし、視線の先にある一本の木は無数にある他の木々とは違う雰囲気を持っているように見えた。見た瞬間に寒気がして嫌な気分になり、とにかく無性に怖かった事を覚えている。
「ヤバいもの見ちまった・・・」
足早に森を抜けマンションに帰宅したが、その後何か体調が悪くなったというような記憶はない。変わったことといえば、今まで喧嘩したこともない秋田県産まれの親友と理由も無く3ヶ月ほど険悪なムードになった事くらいだ。
周囲には何で喧嘩してるのかと聞かれたりしたが、本当に原因が分からず、きっかけすら不明だった。仲直りしたあとに本人に理由を聞いてみたが、何でか解らないと言ってたしお互いに同じ状態だったようだ。
その木の事だが、友人たち数名と幽霊を見たこと有る無いの話しをしてた時にその正体が判明した。その木が生えていた森の向こう側には音楽学科の校舎があるのだけれど、昔、ある女生徒がその木で首吊り自殺をしたのだそうだ。
ただの噂か真実なのかは確かめてないが、親友に裏切られてとか、教授と不倫して妊娠したうえ捨てられてとか、いろんな説があるらしい・・・
その話の中にあった親友に裏切られ・・・とかいう話しを聞いた時、もしかしたらあの時の原因はソレ??とか思ったわけだ。何の確証もない話なので他言していないが、私は今でもあの木の事が嫌いである。
今にして思えば、コレが始まりだったのかも知れないとも感じられる。なぜなら私は、この出来事をきっかけに数々の怪奇体験をする事になったからだ。多少順番は前後するかも知れないが、大阪芸術大学という特殊な環境で大学生生活を送った日々に出会った不思議体験を、これから数話に渡り語り尽そうと思う。
以後文中での口調や表現方法が変わるかも知れないが、それは当時の自分の口調であるので了承して欲しい。この第一話は触りであるが、プロローグと言って良いものかは判断しかねるのでプロローグとはしなかった。
第二話からは少しレベルアップし多少怖い話になるので、この手の話が苦手な方はここで終了する事をお薦めする。怖い話が好きな方は是非ともこのまま読み進めて欲しい。素人文章なので読み難い部分もあるだろうが、そこはあたたかい気持ちでスルーして下さると助かる。
では、『掘り起こしちゃいけない昔の話』の続きを語ろう。芸大卒業生らしく、自作イラスト付きでお贈りします。




