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Legend of kiss3 〜水の王子編〜  作者: 明智 倫礼
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途中までは……

 一方、先に帰宅した亮は、ぼんやり部屋で考えていた。ドライフラワーにしたカーネーションを見つめて、


(先生、今日、今までと違ったなぁ。

 いつもは、何だか落ち着かなくて、先生とはよく話せないんだけど、今日は平気だったね。

 先生が変わった?

 それとも自分が変わった……!)


 そこで、重要なことを思い出した。


(そうだ!

 ヒューさんから出された宿題の答え、まだ見つけてないよ。

 大切なことだよね、すごく真剣な顔して聞かれたから。

 どうして、急に気になるようになったんだろう?

 いつからかな? よし、思い出してみよう)


 亮はそう思って、ラピスラズリに行くようになってからのことをボケ少女なりに、思考回路を展開。


(初めて会った時……?

 違うね。

 ヒューさんが先生だとわかった時……‼)


 そこで、椅子から飛び上がった。


「えぇっっ!」

(キ、キスしたから、気になるようになった?

 ん? でも、変だよ。

 あの時も、学校で話しかけられた時みたいに、ドキドキしてたから。

 変わってないってことだ。

 じゃあ、次はどうしたっけ?)


 さらに時を進める。


(マリアちゃんに初めて会った時……? 違うね。

 こっちで、先生が眼鏡かけてなかった時……‼)


 八神の罠にはまって、亮はドキッとした。


「えっ!」

(ど、どうして、眼鏡かけてこなかったのかな?)


 八神、罠を仕掛けすぎである。呪いが解けない状態になっている。


(すごく優しい目をしてるんだよね。

 マリアちゃんと話してる時は特に)


 亮は自然と笑顔になった。ふと、あることを疑問に思って、


(そういえば、最近、ずっと眼鏡してこないね。

 何か意味があるのかな?

 重要なことみたいだけど……ちょっとわからないね)


 八神とは比べ物にならないほど、情報が穴だらけ。それでも、ボケ少女は時を進める。


(マリアちゃんに首飾りをつけた時……? 違うね。

 Little Mermaidを読んであげた時……?

 ヒューさんの淋しそうな目を見ると、切なくなるんだよね。

 どこかで見たことがあるんだよね。

 いつ、どこで見たんだろう?)


 事実は歪めてるは、記憶力は崩壊しているは、可能性も導き出せない。さすがのボケ少女も、珍しくため息をついた。


(わからないなぁ。

 とりあえず、次かな?)


 先走り少女気にせず、先に進む。


(ピアノを教えてもらった時……‼)

「えぇっっ!」


 亮はびっくりして飛び上がった。


(ドキドキしすぎて、よく覚えてないよ、そのあとは。

 で、でも、よく思い出さないとね。

 答え見つけないといけないから)


 あれは、ヒューの罠が行くつくとこまで行ってしまったので、リエラが覚えていないのだ。ヒュー、罠仕掛けすぎである。


 それでも、策という鎖から、何とかはい出ようとして。心臓バックバクのまま、亮は一生懸命考えようとした。


(最初はドキドキしたけど、ヒューさんがピアノ弾いたあとは、ほっとしたね。

 優しい人なんだよね、ヒューさんは。

 そういえば、花火大会の時も手に触れたね。

 あの時も最初ドキドキしたけど、つないだら、ほっとした。

 ここが、気になるようになった時?

 でも、そのあとも、よくドキドキしてたような気がする。

 じゃあ、違うかも知れないね)


 亮はベッドに寝っ転がって、天井を見つめた。


(そのあと、どうしたかな?

 マリアちゃんに勉強を教えて……チョコレートパフェ食べて……‼)


「えぇっっっ!」


 大声を上げて、勢いよく起き上がった。


(先生、どうして、近づいて、じっと見つめたりするんだろう?

 ドキドキして、倒れそうだったよ。

 よく、言ってる意味がわからなくなるし……)


 それも全部罠。言葉を途中で擦り変えられているし、そこに意味などないのだ。八神の罠に見舞われている亮は、深呼吸をして、


(お、落ち着いて、考えないとね。次だね。

 そのあと、木に登って街を見てたら、ヒューさんが来て……急に抱きしめられた。

 でも、あの時はドキドキしなかったなぁ。

 『……急に消えたりしないでください』)


 ヒューはあの時は罠を仕掛けていない。だから、リエラは普通でいられたのだ。しかも、完全に冷静な策略家の地位を失っていた時。姫が普通にしていられるのも当たり前。ヒューの突然の言葉に、亮は首を傾げ、


(どういう意味なんだろう?

 そのあと、泣いてたよね。

 湖のところでも、泣いてたね。

 待ってるだけで、救えるのかな?

 あの時はそれが一番だと思ってたけど、今は少し、違うような気がする)


 八神のように理論立てて、亮は考えていない。感情のまま動いているので、その時の気分で、行動が変わってしまう。しかも、記憶力は崩壊、自分で自分を分析できない状態。


 それでも、宿題の答えを出したくて、さらに考える。


(遠出に出かけた時、ヒューさんの手がすごく震えてた。

 そして、自分はヒューさんの手から手綱を取って……‼)


 ここで、気づいた! 気持ちの変化があったことに、亮は大声を上げ、


「あっっ!」

(あの時からだ。気持ちが変わったよ。

 ドキドキしたり、戸惑ったりじゃなくて、自分から自然と、ヒューさんに何かしたいと思った。

 自分がしっかりしなくちゃと思った。

 でも、何でそう思うんだろう?)


 恋愛鈍感少女、一生懸命考えて、首を右左に傾ける。


(怪我しないで欲しいと思ったから?

 ヒューさんを救いたいと思ったから?

 助けたいと思ったから?

 守りたいと思ったから?

 どれかな? ……それとも全部?

 んー……確かに、全部かも)


 青き石版で、自分の両手首をぎゅっとつかんで、真剣な顔をしたヒューを思い返して、


『なぜ、あなたは私のことを急に気にするようになったんですか?』


 やっと、策略家の心が届いたか。と思いきや、


(これが宿題の答えかも知れない)


 宿題だって言われていたではないか、ヒューから。ボケ少女、遠回りしすぎである。記憶力が崩壊しているのに、なぜか、その次のヒューの質問へ。


『そちらはいつからですか?』


 冷静な瑠璃紺色の瞳を思い浮かべながら、亮はたどり着いた。


(答え。ヒューさんの手から、手綱を取ろうとした時)


 次の質問も、ボケ少女しっかり記憶していた。


『なぜですか?』


(答え。………。

 なぜの方がわからないね。

 んー、どうして、そう思うんだろう?

 …………。

 …………。

 …………)


 亮はいつからかは突き止めたが、それが恋だとは気づかなかった。

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