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Legend of kiss3 〜水の王子編〜  作者: 明智 倫礼
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Miracle riddle

 そして、昼休み。


 冬空の下は寒いということで、いつもの五人は八神の部屋にいた。部屋のあるじーー瑠璃色の髪の策略家は用があり、今は席を外している。


 亮はフライドポテトを、フォークに刺したまま、ぼんやり、


(前、こっちにいた時より、ずいぶん、過ぎちゃったんだね。

 呪いの解き方、見つからないなぁ。

 文章の意味もわからないままだし……。

 ヒューさんからの宿題の答えもわからないし、困ったね)


 自分が十八の誕生日で死ぬという運命に立たされているのに、のんきに考えているボケ少女を前にして、ルー以外の、祐、誠矢、美鈴はお互いの顔を見合わせ、


(何かあったんだろうな。

 これだけ、日付過ぎてるから)


 ヒューが現実だと気づいたので、一気に時が過ぎた。もちろん、それだけの理由ではない。微調整されている、世界は。この先、どのシリーズでも同じ。


 祐、誠矢、美鈴は、メロンをおいしそうに食べていたミラクル天使に顔を向けて、


(ルーが話すのか?)


 それを受けて、純粋無垢なサファイアブルーの瞳を持つ人は、可愛く小首を傾げた。


(ボクの番?)


 あるルートで、ミラクル天使は情報を知っている。他の人たちに明かす必要のないことがあるのも、わかっている。祐、誠矢、美鈴は、ルーの視線に小さくうなずくしかできなかった。これだけ急激に、時が過ぎた理由がわからないのだから。


(そう)


 ルーはメロンを食べていた手を止めて、ボケ少女に、


「亮ちゃん、ボク、聞きたいことがあるの」

(大切なことなの)


 くりっとしたブラウンの瞳に、金髪天使が映った。


「えっ?」

(ルーが聞きたいこと?)


「Are you ready?」


「あぁ、うん」

(何か気になることがあるのかな?)


 ミラクル変化球と大暴投の嵐が、祐たち三人に襲いかかる!


「Riddle」

(困ってるさんなの)


 一番困っているのは、スメーラの部下のあき。次は、答えを見つけることができない八神と亮。他に、付随する二名。五名がただいま迷走中。


 大変なことが起きているとも知らず、亮はぽかんとして、


「え……?」

(リドル……?)


 誠矢がため息をつきつつ、


「なぞなぞだって」

(勉強しとけって)


「あぁ、わかった」


 亮は赤髪少年から、金髪天使へ視線を戻した。いつの間にか、ルーの瞳から純粋無垢な色は消え、全ての人々をひれ伏させるような皇帝のものに豹変していたが、


「ニンジンさんで逃げたら、別のことを考えたのは誰?」

(The answer is water)


 ミラクル天使の言動を前にして、祐、誠矢、美鈴はため息をついた。


(混在してる……)


 一番予測しずらいルーになってしまった。亮は気づかず、一生懸命考えて、


(ニンジンって、食べ物だよね? んー……?)


 従兄弟の大好物に目がいき、


(あぁ、わかった)

「パン?」

(焼きそばにニンジン、入ってるもんね)


 亮の宇宙の果てーー焼きそばパンまでの大暴投を聞いて、祐、誠矢、美鈴は盛大にため息をつき、


(誰って聞いたのに、食べ物で返してきた。

 もう、収拾つかない。黙って、見とこう)


 そうして、ボケ少女とミラクル天使は、他三名に放置された。ルーは春風のように微笑んで、


「亮ちゃん、可愛いさん♪」

「あっ、ありがとう」


 亮は少し照れながら、お礼を言った。

 ふたりのやり取りを見て、祐、誠矢、美鈴はまたため息。


(答えはどこにいったんだろう?)


 ルーは気にせずに、


「Next riddle」


 亮は正解を聞くことをすっかり忘れて、笑顔でうなずき、


「あ、うん」


「ご飯が落ちて、高くなると困る人は誰?」

(The answer is water&sun people)


 ルーは絶対嘘はついてこない。事実を表している。亮はすぐに、


「パンダさん?」

(竹から落ちたら、困るね)


 誠矢がすかさずツッコミ。


「いやいや、竹じゃねぇって、高くだって」

(次から次へと、遠くに投げんなって)


「あぁ、そうか」

(ご飯と高く……?

 おにぎりが遠くに飛んだ?)


 亮は異次元にワープしそうになった。祐はレースのカーテンから垣間見える空をぼんやり眺めて、


(時間のむだだから、聞かないことにする)


 不機嫌王子はジュレイテの人々の幸せを考え始めた。ルーはさらに次へ、


「優しさと厳しさを、降らせた人は誰?」

(The answer is God)


「あぁ、メロン?」

(ルー、大好きだよね)


 誰と聞かれているのに、また食べ物で返して来たボケ少女。ルーはしっかりとしたサファイアブルーの瞳に映し、


「素敵さん♪」

(そう、キミは昔から変わらない)


「え……?」

(ステッキ?)


 さらに、大暴投した亮には構わず、ルーはさっと次へ。 


「優しくなって、空を渡った人は誰?」

(The answer is you)


 亮は自分のランチボックスに視線を落として、


「ポテト?」

(からっと揚がったから)


 亮は『空』をなぜか器用なことに、音読みーー『カラ』にした。美鈴がツッコミ。


「それ、人じゃないよ」

(どうして、そこにたどり着いたのかわからないよ)


 誠矢は心の中で、ゲラゲラ笑った。


(世界の果てかも知れねぇな)


「あぁ、そうか」

(ルーのなぞなぞは難しいね)


 亮は親友の忠告を、何とか大暴投せずに聞いた。今までの質問、実は二重に罠が仕掛けられている。だから、亮が答えられないのだ。他の人のために、用意されたもの。ルーは無意識下でやってくる、こういうことを。


 質問が途切れたところで、扉がノックされた。ルーがふんわり、


「は〜い」

(お帰りなさいさんなの♪)


 瑠璃色の髪を持つ策略家ーー部屋の主が入ってきた。八神は情報を得ようと、受け持ちの生徒を見渡して、


「今日は何の話ですか?」

(最初に言葉を返してくるのは、誰ですか?)


 冷静な頭脳に、天文学的数字の膨大なデータが流れ出した。ルーが真っ先に、


「Today's conversation is a riddle.(なぞなぞの話です)」

(It is my turn.(ボクの番なの))


 流暢りゅうちょうな英語が、優雅な部屋に舞い始める。八神は冷静な瞳を持って、


「I understand.(そうですか)」

(Also, you talk first.(また、あなたからなんですね))


 ミラクル天使は策略家に、春風のように微笑んで、


「Mr.Hikaru, can I take a riddle for you from me? (光先生、問題出してもいいですか?)」


 英語の上に、ルーの意味不明な質問。祐、誠矢、美鈴はあきれた顔。


(今日のルーは、いつにも増してわからない)


 八神は英語がペラペラだ、ミラクル天使の言語を何の支障もなく受け止めた。しかも、冷静な頭脳は、今も正常に稼働中。


「OK.(えぇ、構いませんよ)」


 策略家は書斎机に腰でもたれかかった。英語では、曖昧な表現ができない。だから、確定するしかない。ルーは純粋無垢なサファイアブルーの瞳に、担任教師を映して、


「What stands behind the falling blue? (降ってくる青の後ろに、立つものは何ですか?)」

(That heart is very beautiful.(綺麗さんなの))


「Is there a hint in that riddle? (ヒントはありますか?)」

(Is that only information? (情報はそちらだけですか?))


 冷静な策略家が一歩リード。疑問形になっている。ルーは純粋無垢な瞳で、小首を傾げて、


「Hmm……? (んー……?)」

(How do I say? (どう言えば、いいかな?)

 Because it is a riddle, as you do not understand, I have to…….(なぞなぞだから、わからないようにしないと……)

 All right, I. (わかった、ボク)


 ミラクル天使、独特の思考回路でたどり着いた質問を、策略家へふんわり投げた。


「What does not change, what changes? (変わらないで、変わるものは何ですか?)」


 八神はあごに手を当てて、考える振りをした。


「Hmm……? ( そうですね……?)」

(Why do you listen to me now? ( なぜ、そちらを今、私に聞くのでしょう?)

 I was worried, you seem to be unable to measure with just the possibility.(困りましたね、あなたは可能性だけでは計れないみたいです)


 今までのデータから取り出した事実を元に、八神は可能性を見出したが、確定はできなかった。


 ミラクル天使は順番がめちゃくちゃなのだ。理論を使って、順序立ててくる八神には、ルーは非常に予測しづらい。


(困りましたね)


 優雅な策略家は、心の中で降参のポーズを取った。だが、何とかやり過ごした。ミラクル天使の質問に、策略家は一切応えていない。情報漏洩ろうえいは免れ、新しい事実を手にした。


 英語でのやり取り、しかも、冷静な頭脳の持ち主、策略家対ミラクル天使の複雑な思考回路が展開され、他の四人はついていけなかった。


 亮たち四人がランチを食べ終え終わると、昼休み終了のチャイムが鳴った。

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