周辺探索
今回お邪魔しているお宅はこちら、二宮 茜さんのお宅です。
茜さんの人生はまさに、波乱万丈、、高校三年生の時に運悪く、頭の中身が悪くて急死、もうだめかと思った時に突如異世界に飛ばされ、無人島芸人も真っ青のサバイバル生活に突入しました。
まさに困難の連続でありましたが、現在では責任ある立場(魔王)に就任し、東京ドーム1000個分以上ある敷地に、堅牢な魔王城(洞窟)を構え、趣味のガーデニングに没頭する優雅な生活を送っております。
「ふははははは、私の右手が真っ赤に萌えるぅ!この辺一帯を灰塵に帰せとぉ、とぉどろきさけぇぶぅーッ!!」
はい。今日も元気に通常運転。
魔王で人類の敵。二宮 茜 18歳です。
私が今、何をやってるかと申しますと、、、魔王の右腕のもう1つの効果、、マナを奪う(マナドレインと名付けた)の実証実験中です。
え~、この能力、、結論から言うとかなり凄まじい。
発動すると私の右腕は呪われたように赤黒い光を纏って輝き、、触れたものが片っ端から灰色の塵になって崩れ落ちるという魔王ファンタスティック!!的な能力なのだ。
そう!!
調子に乗った私は洞窟のすぐ近くから、半径30メートル程の草花、樹木、岩石を全て灰色の砂塵に変えてしまっていた。所要時間、約一時間。
ともにパーティーを組んでくれたバトラーさんをはじめ、ネズミの方々は、肩を寄せあって50メートル後方でこちらをうかがっている。うふふッつぶらな瞳が可愛いね!
、、、、ごめん。悪かったよぅ。
そして、問題のマナ総量、、どれだけ増えたか気になりますね。はい。ドン!
236マナ→237マナ
ドォォンンンン、、。
1って、、、、。一時間の草取りと樹木伐採の対価が1マナ、、、えぇッ?!
そして今、気付いたけど、この拠点のまわり、、こんな更地にしちゃって、正直、目立つ事、この上無しぃ~ッ、、、、遠くから見たらここだけ綺麗な十円ハゲに見える事でしょう!
フゥォォォッ! や・ら・か・したぁぁ、、。
「、、茜ちゃ~ん、、い、いや、茜様。スゲェ~力だけど、、この辺一帯、、地形変わっちまって、、ちょっと目立ち過ぎんじゃねぇかな?」
「え?、、そうかなぁ。そんな事ないよー。」
「ど、どうなんだろうな?こんな緑満載の山のなかで、ここだけ灰色一色になっちまってるんだけど、、。」
「さ、実験も終わった事だし、、早く周辺探索行くよー?」
「あ、茜ちゃーん?」
「ほら、早くしないと、日暮れちゃうぞ!キラッ。」
拠点の隠蔽は時間かかりそうだから、みんなが戻って来てからゆっくり考えよう、、、。
とりあえず、今は西に向かって走りだそう。
そう、あの夕日に向かって走るんだ。
ちなみに、私はネズミ魔獣の背に乗って楽してる、、、西に向かっている事に理由はあまりない。
ただ、夕日に向かえば方向が狂う事も無く、帰る時に夕日を背にすれば迷う事がないかなと単純に考えただけだ。
先頭の騎士ネズミが木々や下ばえの草を切り払い払い、バトラーが周囲を警戒しながら手に持った礫を前方にポンポン投げながら帰ってくる音を感知して5歩先穴がある、とか10歩先から坂とか指示を飛ばして軽快に駆けて行く、その時、、。
「全体ストップ、、水の音が聞こえる!茜ちゃんどうする?そっち行くか?」
「うん!行こう!」
水はとても貴重な資源の1つだ。現代日本に住んでいた茜は実感として感じた事は無いが、真水がなければ農耕というのはまず、成り立たない。
そして、利用可能な水資源というのは農業に限らず、工業にも無くてはならないポイントの1つだ。今後の事を考えると水場を押さえられるのは大きい。
そんな事を考えながら山森を縫って走ること5分。
生えている木の種類が変わってきたなと思った時に
「止まれッ!、、この先多分、崖だ。」
バトラーに制止され、速度を落としてそろそろと慎重に進んで行くと木々が途切れた所で忽然と足場も途切れ、切り立った崖になっていた。
見渡す限り、ゴツゴツした岩肌が一直線に南北に走っている。
そして、その20メートル程下には流れの激しい川が流れている。水の流れが長い時間をかけて山に掘り刻んだ渓谷だ。
茜は思わず、よっしゃとガッツポーズをとるのだった。