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名無しの物語  作者: さとり
2/2

1話

突然ですが皆さんは自分の理解が追い付かないことに直面したらどうする?

たとえば自分の家で寝ていたと思ったら見知らぬ風景と目の前にファンタジーでしか見れないようなドラゴンがいるそんな事態に直面したらどうなる?

僕こと、草壁久遠は目の前の光景が理解できずにフリーズしてる。


いきなりこんなことを言われても困ると思うので僕のことから説明しよう。

容姿は中肉中背で黒髪黒目のどこにでもいる普通の高校生、少し違うところがあるとするなら母方の実家がそこそこ有名な神社でありこの神社ではその親族の家計に男児が生まれるとその子供に久遠という名前を付ける風習があり僕は何世代かぶりに生まれた男児ということぐらいかな。

その日もいつもどうり学校に行き友達と無駄話に花を咲かせ家に帰宅しご飯を食べて就寝という普通の生活をしていたはずだった、ベッドで寝ていたはずなのに妙に背中が痛いなと思い目を覚ますと目の前には見慣れた自分の部屋ではなく見たこともない草原が広がっていて近くには人の何倍もでかいドラゴンがいるこれが僕、草壁久遠が今置かれている状況。

自分でもビックリするぐらい冷静な思考をしてるけど、冷静なのは頭だけで体の方は現在置かれている状況を正確に把握しているようで歯の根はかみ合わず顔からはいろんな体液が流れ出している。

不思議なことに人間本気で死の恐怖を感じると思考は冷静なんだなとか死んじゃうんだなとかまるで人ごとのように感じる。

そんなことを考えている時に目の前のドラゴンが吠えた、それは今まで聞いたことのないような轟音で僕の乏しい知識で表すなら密閉式のヘッドフォンで爆弾が爆発する音を爆音で聞くような感じだと思う。



「っ…死にたく…っない」



それが自分の声だと気づくのに少しの時間がかかった、嗚咽交じりで今にも消えてしまいそうな声、恐怖を感じていることは理解していたし体は素直な反応を示していた、でも頭は不思議と冷静だった…その自分の声を聴くまでは。

聴いた聴いてしまった嗚咽交じりのその言葉を…自分の心からの声を、その声を聴いた瞬間から僕の思考は死の恐怖と生きたいという想いそして逃げなきゃという考えに埋め尽くされていた。

それでも体は全く動かずにまるで縫い付けられたようにその場から動けなかった。

徐々に近づく異形に死を感じながら動けない体…終いには神に祈ることしかできない頭…確実な死を感じながら何もできない自分。

祈りが通じたのかたまたまなのか分からないけど僕とドラゴンの間に影が舞い降りた、その影は綺麗な金の髪をしていた、僕を守るように僕とドラゴンの間に立っていてそれが嬉しくて嬉しくて、だから声をかけてしまったんだ。



「もう大丈夫よ、安心して私が守るから」



僕のかけた声に対してそう声を返しながら影が振り向いた、その顔には髪と同じで綺麗な金の瞳があってその瞳を見たとき僕は安堵からか笑顔が出て相手もそれを見て僕を安心させるためなのか微笑んでくれた、それが悪かったんだと思う…ドラゴンから二人共に眼を離していただから気づけなかった猛スピードで迫るそれに。

僕には気づけても見えなかっただろうそれはその人の体に深く突き刺さっていた、その人、僕と同じくらいの年頃で金の髪と瞳が綺麗な女の子その体には大きな爪が突き刺さっていて希望は絶望に変わった。

貫かれ口に運ばれていく女の子はまだ息があるようでか弱い抵抗をしていた、そんなものは歯牙にもかけずドラゴンは大きな口を開き女の子をかみ砕こうとする。

声が聴こえる、女の子の声が…

叫ぶ叫ぶ叫ぶ、痛みを叫ぶ

叫ぶ叫ぶ叫ぶ、死にたくないと叫ぶ

叫ぶ叫ぶ叫ぶ、生きたいと叫ぶ

叫ぶ叫ぶ叫ぶ、助けてくれと神に祈りを叫ぶ

叫ぶ叫ぶ叫ぶ、なぜ助けないのかと怨嗟を叫ぶ

叫ぶ叫ぶさ…け…びはもう聴こえない、ドラゴンの口にはもう女の子はいなかった、足元にはおびただし血と彼女の持っていた刀だけが転がっていてきっと次の標的は自分なのだろうと考えた。

その瞬間、恐怖からか残酷な死に様を見たからか分からないけど僕の意識はそこで途絶えた。

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