プロローグⅠ
初めまして。牧瀬と申します。
今回が初投稿です。ふとした思い付きで書きはじめたものなので今後どのようになっていくかはわかりませんが、ゆっくりと見守っていただけるとありがたいです。
冬の寒空の下、白川圭はバイト先の定食屋から自宅への帰路についていた。
時刻は午後10時30分。15時からその日のラストの22時までシフトが入っていたので、締めの作業をしていたらこの時間になった。今日は火曜日だったので休日に比べれば混み様は普通で、むしろ少なかったのかもしれない。
その帰路の途中、自宅からバイト先まで自転車で15分ほどかかる道のちょうど中間あたりにある、いつも世話になっているコンビニに立ち寄った。いつも買っているスナック菓子を数個と大きめのパックのお茶、あと牛乳が切れていたので牛乳も買っておこうか。
ここまでは大体いつも通り。圭の生活はそこまで豊かなわけではなく、お金を貯める理由もあるので、基本的に無駄な出費はしないようにしていたが、その日は圭にとって特別な日だったのでスイーツコーナーにも立ち寄りシュークリームとエクレアを2つずつかごに入れて清算を済ませた。
「白川くん、いつも利用してくれてありがとうね。」
店長である佐々木さんから利用するたびにかけられる一言だ。
「こちらこそ、いつもお世話になってます。」
圭は笑顔で答えた。 今のバイト先を紹介してくれたのは佐々木さんで、そのバイトを始める前はこのコンビニでバイトをしていたこともあり、コンビニに用事があるときはできる限りここを利用するようにしている。
いつものあいさつを終え、会計も済んだのでコンビニを出てまた自転車に乗り自宅へと向かう。
今日の出費はいつもコンビニによる時より600円ほど高い。気にするほどではないが、今月はいつもより節約しよう、そう考えながら自転車を漕いでいたら自宅についた。
築30年ほどのワンルームバストイレ別、光熱費水道代込々で家賃6万円のアパートの105号室。
そこまで都会ではないので家賃も田舎仕様。とはいえ年季を感じさせる風貌をしているのも確かだ。
駐輪場に自転車を置き、短い廊下を歩き、自室の扉の鍵を開ける。
「ただいまー。」
圭は一人暮らしであるため誰の声も返ってこない。そんなことは当然知っているので靴を脱ぎ部屋に向かう。さっき買ったスイーツは早めに冷蔵庫に入れないと、そんなことを考えながらキッチンのそばの扉を開けて部屋に入ろうとしたとき、
「誕生日おめでとう!!!」
いきなりであった心地よいクラッカーの音とともにかけられたその言葉に圭は少し驚いた。
目の前にいるのは水上栞。このアパートに圭が入る前から住んでおり、部屋番号は104号室。圭の隣人さんに当たる。年齢は19才で大学2年生、圭の3つ上..ではなく今日で2つ上になった。
栞は年下の圭を気にかけてか、時々バイトから帰ってきた圭に夕飯を作るべく家に来ることもある。そんなこともあり圭は栞に合鍵を渡していたので部屋にいることはまあ不思議なことではなかったが、自分の誕生日を祝福してくれるためにいたということには驚いた。
「反応薄いな~。年上のお姉さんが君の誕生日を祝うためにずっと待ってたんだよ??」
そんなことをふざけた調子で圭に問いかける。
「いや、いきなりだから驚いただけですよ、ありがとうございます。」
そういって冷蔵庫に入れる予定だったスイーツの袋を取り出した。
「どうせだったら一緒に食べてもらえませんか?一人だと多分寂しいので。」
恥ずかしがりながらそんな言葉をつぶやく。
「いいよ、食べよっか。」
栞は満面の笑顔でそう返した。