3年蓮組の授業風景 弐
「まずはみなさん日本は、いえ世界は今から10年前に一度滅びかけたということは知っていますね?俗に『審判の日』と呼ばれたあの災厄の日がきっかけです。」
そこで一度メグミは言葉を切ると周りに目を向ける。
「そうさねぇ、あの時はまだうちらは8才かぁ時が経つのは早いねぇ!
あのときは死ぬかと思ったよ、いきなり化け物が町中に現れて。
合図も無しに命がけの鬼ごっごたぁ洒落が効き過ぎてるよ。」
目が覚めるような赤髪の少女、赤城 鉄火は自らの偽腕でタバコをふかしながら言った。
「そうです、あの『審判の日』に世界中の人間は不思議な声を聞きました。そしてその声が消えた直後世界中に黒い渦のようなものが出現しました。さらに、その黒い渦からはさっき鉄火さんがいったように化け物__幻想種や竜種といった凶暴な生物たちそれらは一晩で都市を焼き払い、人々を蹂躙しました。
そして………」
「そして世界は滅ぼされかけた、でも滅ぼされなかった。なぜだか分かる?私の可愛い生徒たち。」
そう言ってメグミの話を途中から引き継いだ影宮は、希望に満ちたような顔で腕を広げる、それは自分の生徒から正しい答えをくるのを確信しているからだ。
そして当然のように生徒は答える。
「ふん、アマゾネス教諭よ、ならば私がその答えを言ってやろう。」
錐揉み回転し地面に体を預けていたサイシネンは体についた土を忌々しく払いながら立ち上がった。
「『審判の日』に聞こえた声、あの声を仮に神とするならばだ・・・
神は災厄を撒くと同時に、人類へその災厄を退ける希望を与えたということだ。
それが人類が現在存在し、のうのうと私のようなモノが小説を書き連ねていける理由だ」
サイシネンの答えを聞いた影宮は満足げにひとつ頷くと。
「ん!正解!!まぁ実際『審判の日』以降世界人口は約10分の4になったし、大規模な地殻変動?みたいなもので世界の陸地は1つになったりして・・・まぁ生きてるんだからそんなことはどうでも良いわよね?」
((いやよくねぇよ))
生徒の大半が教師の言葉に全力で引く中、影宮はそれに構うことなく授業を続ける。
「さて、それじゃあ!そろそろ体育に移るわよ!人類は災厄を打ち払うために希望を手に入れたわ!ではそれはなにか・・・実践しながら復習するわよ?」
「「っ!?」」
そういうと影宮の目がすぅとわずかに細まる。
それに対応して対面していた生徒は一斉に飛び退く。
「そうそう、この時代それぐらいの危機察知能力がないとおちおち夜にトイレにさえ行けないわよ、さてと・・・それじゃ静波あんたまず来なさい」
「ん、僕?」
指名されたのは全身白のパーカーのように見える拘束具に体を包みさらに拘束具を所々鎖でしばられている静波 荒彦だった。
「ん〜何割?」
そう首を傾げキラキラと光を反射する金髪をゆらし、ついでに両腕がだせないようになっている袖口がしまった腕をふりふりとしながら静波は影宮に聞いた。
「そうねぇ、あんた相手だとこっちもうっかり授業だってこと忘れそうだし5割でいいわ。
私もそれぐらいの出力でいくわ。」
「うぃ、そゆことみたいだから。てっちゃん、お願い。」
静波がそう言うと赤城はため息と共に紫煙も吐き出しながら。
「はぁ、あんたが暴れる度にその鎖直すのはうちなんだから、ちゃあんと加減しいや。
でもまぁ遊んどいで、しず。」
親しげにそう静波に赤城は言うと指を鳴らす。
パチンと指と鳴る音と共に、静波に絡みついていた鎖の約半分がガシャリと金属特有の音を立てながら地面に落ちる。
(ま、たまには遊ばせてやらないとさね)
コキコキッと首筋や肩を回しながら静波が影宮の前まで出る。だがその目はニコニコと優しげな表情とは裏腹にギラギラと影宮を見つめている。
「おまたせ〜せんせ。はやくやろ?」
「おーおー、可愛い顔して殺気全開ね。まぁそうでなきゃ面白くないわよね〜まったく、佐藤辺りには見習ってほしいわ、だから彼女の一つもできないのよね〜」
そういいながらいつの間にか手にした紅い槍を回す影宮。
「ちょっ!?俺関係あった!?俺は普通だ!この戦闘狂ども!つうかあんたも独しっちょ!?危なっいまガチで顔狙ったろ!?このアマゾネスまじやべぇ!!?」
影宮の槍で髪を数本もっていかれながらも転がって影宮から逃れる佐藤。
哀れ佐藤。
そしてその佐藤を見て爆笑しているドム。
「ぶふっ、おもしろすぎでござる佐藤氏wプゲラ」
「てめぇぇぇぇ!!」
そして殴り合いを始めるバカ二人。
「さて、あのバカ共は放っておきましょ。来なさい静波」
「ん、いくよ。
権能【彼の王よ、若かかりし姿を】」
静波が言葉を発すると同時、静波の筋肉が拘束具の上からでも分かるほどに盛り上がる。
さらに顔つきも、元のやわらかな人相から人を視線だけで殺せそうなほどに目をつり上げ獰猛に笑う。
「さぁ、拳がつかえないのは残念だが。まぁいい、こちとら最近運動不足でイライラしてるんだ。鉄火に慰めてもらうのもいいがこっちのほうが俺にはあってるもんでな」
その言葉に静波が豹変したことにはだれも触れず『慰めてもらう』の部分に過剰反応する外道ども。
「「おぉ〜」」
「なぐさめるって・・・
きゃー!!どろどろー!!」
「ふふ、やっぱり男を癒すのは女ね!」
「そうねカレン姉様の言う通りね、鉄火も隅に置けないわねぇ」
「っっっ!?しず!あんた授業がおわったら覚えておきなよ!あとエロ兎とチビ姉妹はだまっときな!」
髪と同じくらいまで顔を赤くした赤城、プルプルと震えながらも声を張り上げる。
それを温かい目で見ていた影宮だったが静波が正面に立ったところで改めて口を開いた。
「あっはっは、ちゃんと着いておいでよ?若き日の王様。権能【我は女王、影の国を守護する門番哉】
影宮も言葉を発した瞬間、ジャージ姿で槍を回していた影宮の周囲に影がまとわりつく。
そして両者共に、足下の草を舞い上がるほどの威力で地面を蹴りだし一瞬後、激突音が響いた。




