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明るい地下と暗い地上  作者: シゲさん
序章 旅立ち
4/20

2話 再会 <後編>

2話後編です。日にちが空いてしまいましたがお時間があればどうぞ。

『何でそんなゲッソリしてんの?』

「色々あったんだ、ほっといてくれ…」

『気になるじゃーん…………あーそゆことね』

「不用意に俺の心読まないんじゃなかったのか?」

『ケースバイケースってやつだよ~、まぁアタシにも原因はあったし?一緒にヘクトルに謝ってあげる~』

「んじゃ遠慮なくお前を置いて逃げる」

『ムキーーー!!』


ハクは、何でもかんでも動画に撮ってSNSに投稿するこの世の中にイラっとしたのでベルに八つ当たりする。


例の動画を見て絶望したあと、読書に励もうとしたものの、ヘクトルからの連絡がきたときにワンコールで出れるように心構えをしていると、流石のハクも集中することができなかったので、何故か船内に備えられているジムに行って体を動かしていた。


普段は魔力を込めて非適合者の20倍以上の負荷をかけてトレーニングするのだが、同じ過ち(あやま)を犯すわけにはいかないので、目立つようなことができず、地上なまりのメル語を携帯端末でリスニングしながら有酸素運動を中心にトレーニングしていた。


そんなこんなで、時間はあっという間に過ぎ、船から見る外の景色がオレンジ色に染まっていた。


「師匠から何の連絡もないしよかったよかった」

『そんなこと言うと連絡来るかもよ?』

「やめてくれよ」


今日は特にフラグを立てられるのを気にしているハクであったが、地上でしか見れない景色を堪能していた。

しかし、はじめて見る景色のはずなのに何故か見覚えがあるかのような感覚に陥り、モヤモヤした感情が湧いてくる。


確かに、ネット上では何度か写真として見たことはあったのでそれが原因ではないかという結論に行きつき、目の前の景色へと意識を戻す。


「それにしても・・・・キレイだな、この景色」

『うん・・・・とってもきれい、昔を思い出す…』


あまりの美しい景色に、ベルがつい口にしてしまった発言をハクが問い詰める。


「この景色を見たことがあるのか?」

『あ…うん、前の契約者が地上に住んでたの』

「初耳だな。守護霊が契約者を失ったとき、新しく契約を結ぶ人を探すのは知っていたけど、ベルはそういう話を一切して来なかったから、てっきり俺が初代なのかと」

『ハクは2人目の契約者だよ』

「へ~そうなのか。どんなやつだったんだ?」

『過去の契約者についての情報を明かしてはならないという掟があるのよ』

「いや、でもお前天界を追い出されて、だて

『ピンポンパンポーン、間もなく中立都市アトランティアに到着致します。乗客の皆様は下船の準備をお願いいたします』

っともう着いたみたいだな」

『そうみたいだねー、んじゃレッツラゴー!』

「はいはい」


ベルは到着を知らせるアナウンスに感謝をしつつ、こればかりは思ったことを口にしてしまう性格を治さねばと思い始める。


実は守護霊は過去の契約者について話してはいけないし、記憶が継続されること自体も隠さなければいけないのだが、ハクは単純に自分の勉強不足だと思いこんでいて助かった。


ハクは下船の準備を進めながら先程の会話を振り返る。

ベルが何かを隠しているのは契約当時から百も承知なので、気にはなるものの問いただすことはなかった。いつか自分の口から話してくれることを祈って…


____________________



「んぁー着いたー(ん?また寝てんのか?さっきの気にしてんのかね)」


20時間近い長い船旅を終えて久方ぶりの地上で伸びながらベルの姿が見えないことに気付く。


以前もベルが知られたくない過去にに触れてしまったときに同じようなことがあったのだが、日付が変われば何事もなかったかのように姿を現したので、今回もそのうちひょっこり出てくると予想して、特にどうこうすることはしない。


「んじゃまー行きますか、もう夜だしな」


ベルのせいなのか、独り言を言うのが癖になってしまったことに自覚が全くないハクは、船着き場からタクシーを拾って目的の傭兵団本部まで行くことにした。


早速タクシー乗り場に行き、一台のタクシーへ乗り込む。


「こんばんはー。お客さん、今日はどこまで?」

「えーと、ブリューナクの本部まで」

「かしこまりましたー」


目的地を伝えると、早速ドライバーのおじさんはタクシーを運転し始める。


「傭兵団の本部なんかに何の用事なんですか?見たところまだ学生さんくらいにしか見えないですけど」

「あー何というか、知り合いがそこで働いていて、呼び出しされたんです」

「そうなのかい、でもあそこは実力主義だからね、変な輩に絡まれないように気を付けてね」

「ご忠告ありがとうございます(変なフラグ立てたなこのおっさん)」


その後も、どうも客との会話が好きな運転手から、どこから来たか、出身はどこかなど、当たり障りのない質問をされ、少々の嘘を交えながら答えていると、いつの間にか目的地に近づいていたようだ。


「ブリューナク本部に到着しましたー。料金は20メルになります」

「電子で」

「ではここに端末をお願いします」


料金の支払いを終えたハクはタクシーから降り、改めてブリューナク本部の全体を見渡す。

周囲に10階建てを超える高さのオフィスビルが建ち並ぶ中、更に背の高いひと際デザインの異なる建物が目に入る。


「傭兵団とかいうからもっとごついのイメージしてたけど、近代建築って感じがするな」


感想を漏らしてから、早速入口へと足を運ぶ。

一階は受付とロビーがあり、多くの人でにぎわっていた。タクシーの運転手が言っていたように、世界最大の傭兵団というだけあって歴戦の戦士たちが行きかっているのがわかる。

それぞれが黒と赤を基調とした戦闘服を身に着けており、デザインは地下軍の戦闘服と大差ないのだが、違いと言えば種類が豊富なように思えた。


身軽なものから、厚い防弾チョッキが備わっているものなど、用途や得意分野によって分けられているようだ。

ちなみに、女性陣はパンツスタイルの人もいるが多くはスパッツにスカートのスタイルで過ごしている。


ハクは嫌な予感しかしないが、目線を気にせず窓口を目指すものの、ハクの嫌な予感は外れたことがないので良くも悪くも的中してしまう。


「おいそこのガキ、ここはケツが青いようなやつが来る場所じゃないぞ?迷子か?」


案の定プライドの高そうな団員と思われる中年の男が近寄りながらそう声をかけてきた。ハクは大人への対応は手慣れているので冷静に対処していく。


「いえいえ、迷子ではなく用事があってここに来ました」

「ほぉ、用事か?いったい何のようだ?」

「ここの団長さんに呼ばれているんです」

「団長に?・・アッハッハ!面白い冗談だ!どうせ団長のファンだろ?団長はあのルックスでめちゃくちゃ強くてファンが多いって聞いてるぞ?ほら帰った帰った、サインなら上げられないぞ」

「いえ、残念ながら本当です。なのでここを通してくれませんか?」

「お前みたいなガキに団長から用があるわけないだろ?そんなのあの生意気なやつ一人で十分だ」

「(同い年のやつがここにいるのか?)話を聞かない人ですね、そこをどいてください」


面倒なやつに絡まれてしまったと思いながらも、その人が気になってまうがそうも言ってられない。

この場合を想定して、ヘクトルからとある許可をもらっているので、それを実行する。


「あぁ?てめぇも生意気だな?同じことを言わせんな」


そう言いながら中年の団員はハクへと殺気を送り始める。


「その言葉そっくりそのまま返しますよ。その生温い殺気で脅しですか?そんなのに怯えるのなんてワンコくらいですよ」


そう言い返すハクは、トールに当てた殺気よりも更に強めて中年の団員を睨みつける。

すると、その男は先ほどと明らかに様子が変わり、体中から大量の汗をかいて、手を震わせているのがよく分かる。

そして、ここの建物に入ってからずっと嫌悪感を向けてきている連中にもついでに殺気を送ったので、このフロア全体に緊張が走る。

膝をついて吐き気を催す者もいれば、反射的に腰の剣に手をかけているものもいる。


「!?なんの真似だクソガキ・・調子乗んじゃねぇぞ?」


反射なのか血が上ったのか定かではないが、当てられた殺気に見合う本気の右ストレートが目の前に迫ってきたものの、ハクにとってはスローモーションにしか見えないので、落ち着いて対処法を考える。


(どうしようか、あえて身体強化使って受け止めるか?それともカウンター決めるか?・・ん?この気配は・・なるほど、じっとしとくか)


そんなことを考えた結果、その男性を睨みつけながら拳がくるのを待つことにしたハクは、身体強化もすることなく、迫ってくる他の気配が到着するのを待っている。

すると、拳がハクの頬にぶつかろうとした瞬間、誰かの手のひらが間に割って入り、パシッという音とともに拳を受け止める。


「何を考えているんですか?ベクリーさん、来客者の相手は誰であれ私達の担当です」

「じょ、じょうちゃん、でもこいつが・・・」

「うっせーなじじい、ぶち殺されてぇのか?・・・・う、うぉっほん、ん゛ん・・・・少し取り乱しましたね、早くお仕事に戻って頂けますか?」

「お、おう、わーったよ」

「はい、お気を付けて行ってらっしゃいませ」

(え、この人めっちゃこわっ!?)


ベクリーというらしい男性とハクの間に入ったのは、他の団員と同じようなデザインの制服を身にまとっていて、緑色のロングヘアーをポニーテールにまとめているのが特徴の女の子である。

明らかに裏の顔を持つと予想されるこの子は、一瞬ハクでさえも怖気づいてしまうような気迫だったが、身だしなみを整えてから何事もなかったかのようにこちらを振り返る。


「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。私はブリューナク本部受付をしております、ミク・クロールと申します。これからよろしくお願いします」

「こ、こちらこそお願いします」


二人は軽い挨拶を済ませると、ミクがもともといた窓口へと並んで向かう。


「あ、ちなみに私はファールティ様と同じ年齢ですので敬語は結構ですよ」

「んじゃお互い敬語は無しにしよう。そっちの方が気楽でいい」

「ウフフ、ヘクトルさんから聞いてた通りの人柄ね」

「師匠のこと知ってるの?」

「えぇ、ときどきここを訪れるので専用の受付をさせてもらっているの」


そんな会話をしながら、ハクはカウンターの前、ミクはカウンターの向かい側の定位置へと戻る。


「改めて、団員がご迷惑をおかけしましたことをお詫びします」


カウンターの向かい側で一礼すると、手続きの準備を進めるためなのか、備え付けのキーボードを操作しながらハクと会話を続ける。


「実はヘクトルさんから、騒ぎが起きても傍観して欲しいと言われていたのだけれど、流石にお客様が殴られては問題になってしまうので、思わず止めてしまったわ」

「いや助かったよ。これから長く過ごすことになるであろう傭兵団になめられては仕事にならないからと、師匠に言われてやったことだけど、ノープランだったからねー」

「あらそう?男の人が女の人に助けられるのはプライドに傷をつけてしまうもののかと」

「俺はそんなこと気にしないよ。このアトランティアでは特に性別は関係ないと聞いているけど。ここの団長さんも女性なんでしょ?」

「ウフフ、違いないわ。その団長さんとの面会だけど、ヘクトルさんからの手紙をもらっていいかしら」


そういえば、と思い出したようにカバンをあさりだし、手紙を探しはじめる。


「おたくの団長さんって電子機器が本当に嫌いらしいね。今時紙製の手紙なんて・・・っと、あったあった。ほい、これ」

「ありがとう。確かに受け取ったわ。まぁ側近の彼が凄腕のハッカーだったら電子機器を信じたくなくなる気持ちもわからなくもないわね」


手紙を受け取ったミクは、手紙をカウンターの上に置き、目をつぶりながら手紙の上に手をかざすと、手紙に魔法陣が出現し、キラキラと解析音を出しながら回転し始める。

ものの3秒程経つと、魔法陣が消え、手紙からかざしていた手をどかして目を開ける。


「ヘクトルさんの登録されている魔力の痕跡が確認されました。ではこれから団長のもとへ案内するのでこちらへどうぞ」


そしてハクをエレベーターへと案内をはじめる。


「その年で魔力を読み取ることができるなんてそうとう優秀なんだな」

「あなたにをんなことを言われても嫌味にしか聞こえないわよ」

「あらら、全部お見通しですか。あと俺のことはハクでいいよ」

「じゃあ私もミクと呼んでいいわよ」

「りょーかい」


お互いの呼び方を決めたとき、目の前のエレベーターの扉が開き、二人は並んで中へと進む。

ハクが乗り込んだのを確認すると、閉まるボタンを押したあと、最上階の20階であるボタンを長押しする。

すると、機械音とともにボタンの表面がスキャンをはじめて指紋を読み取りはじめる。

数秒したら20階のボタンがオレンジ色に光り、エレベーターが上へとと上昇し始めた。

最上階には団長の部屋などがあるものの、決まった人しか入ることが許されておらず、20階のボタンだけ指紋認証が搭載されているのだ。


「そういえば、さっき俺が殴られそうになった時、間に入ってくれたけど、あのスピードを見るに戦闘員として所属してないのか?」

「んー、もちろん命令されたら現場に向かうけど、基本的には団長の側近をしている人の補佐と受付が仕事だから。それに一応学生だし、バイトとして雇ってもらってるから戦場には出向けないの」

「なるほどねぇ…え、もしかしてアトランティア学園?」

「そうよ、言ってなかったかしら?」

「お、おう、そうなのか、学園でもよろしくな」

「えぇ、こちらこそ。『ポーン』着いたわね」


エレベーターが目的地の20階に到着すると、扉が開いたので二人は外に出る。

すると、正面にもエレベーターがあり、左右へと通路が伸びているのが確認できた。


「こっちよ」


ミクはそう言うと、左に向かって進み始める。

通路を少し進んだところに扉があり、下に倒すタイプのドアノブに手をかけるが、すぐには手をおろす素振りは見せず、握ったままじっとしている。


「ごめんなさいね、魔力を流さないと入れないのよ」


ハクが疑問に抱いていたことに対してこたえるかのように説明をすると、ドアノブを下に倒してドアを開けて中に入るように促す。

それに従って中へと入ると、手前に来客用の机とソファーがあり、奥に書類が山積みにされている大きな机が見えた。

しかしながら、書類が積んである机なんかよりも、手前のソファーに座っている少年に驚きを隠せずにいる。


「やぁ、長旅だったねハッ君、久しぶり」

「え?え?マー君、なの?」「ぷっ・・マ、マー君って」


ハクがそこに座っていた少年をそう呼ぶと、後ろでミクが口に手を添えて笑いをこらえていた。

それを見たマー君こと、マルス・マルバスはため息をつきながら席を立つと、ハクの目の前まできて手を差し伸べる。


「ようこそブリューナクへ、これからよろしくね」

「こ、こちらこそよろしく。引っ越した先がまさかの地上で、更にブリューナクに所属していたなんて、流石だな。それに…」

「あぁ、この背中のやつかい?僕は反対したんだけどね、あまり気にしないで欲しい」


ハクと握手を交わしたマルスはというと、眼鏡をかけて目の下のほくろが知的なイメージを漂わせている。

そして、黒髪で黒目でハクと同じくらいの背をしていて、傭兵団というには少し物足りない体格をしている。

例外なくマールスも団員の服を着ているのだが、他と違うのは黒を基調にした戦闘服の背中に大きな獅子の刺繡が施されており、イメージとかけ離れている。


「ワシを無視するでない、団長じゃぞ」

「すいません、団長、決して忘れてたわけじゃありませんよ」

「ムムム、何かしゃくにさわるのぉ」


そう言いながら、書類が山積みになっている机の横からひょいっと少女が姿を現した。

背が小さく、狐の物と思われるが髪の色と同じ白色の耳と尻尾がついており、見た目の幼さを際立たせる。

膝あたりまで伸ばした白髪が特徴でもあり、団長の証である羽織を肩にかけて威厳を感じさせ、声色にも貫録を感じるような不思議な感覚に陥らせ。

そして、自称団長がこちらに向かってくる。

ハクの目の前にまで来るとより、その背の低さが際立つ。


「改めて、ここの団長を務めているアカリ・アメノだ、よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします。変わったお名前ですね」

「ウム、ワシのご先祖様は日本生まれでのぉ、本来であれば天火明命アメノアカリというらしいのじゃがワシ本人もよーわかっておらん。話し方も変かもしれんが我慢してくれると助かる」

「いえいえ、全然平気です。それよりも、説明して欲しいことが山ほどあるのですが・・・」

「そうじゃの、そこの席に座っておくれ」


そう指示されると、ソファに腰をける。

それに続いて、隣にマールス、向かい側にアカリ、その隣にミクという配置でそれぞれが座り始める。


「さて、まずは何から話そうかのう・・・とりあえずブリューナクについて説明しようかの、ミク、説明を頼むのじゃ」


「わかりました。我々ブリューナクはここ、中立都市アトランティアに本部を置く傭兵組織です。ここは3国がそれぞれ援助をしあって成り立っているので、警察や軍が一つの国に依存させてはならないとされて結成されました。そのため、この島の自警や防衛も我々が行っていますが、実力が買われ、現在では他国にも活動範囲を広げております。本来であれば国籍をアトランティアに移さなければここで働くことはできないのですが、ハクは留学生の立場なので、避難民生活支援局、局長のレン・コウメイ様の許可により、特別にここでの活動を許されております。そしてこれが、団員証になります。ここまでで質問はある?」


団員専用の携帯端末を渡されて、ポケットにしまいながらレンが意外と結構偉い人だということに驚きつつ、首を横に振って返答する。


「いや、大丈夫。続けていいよ」


「そう。では、次はここでの仕事の仕方について説明するわね。まずその端末だけど、留学中は肌身離さず持ち歩くようにしてください。団員証がないにもかかわらず武器を携帯すると逮捕対象になります。そして仕事の依頼主からの依頼完了サインをその端末にしてもらうなどの役割もあるので、忘れずに持ち歩いてください。

そして、仕事は大きく分けて三つあります。

一つ目は街のパトロールです。3国からの常時依頼とされ、固定給になりますので、低位団員がアルバイト感覚でやることの多い仕事になります。

二つ目は、依頼をこなして報酬を頂く通常依頼です。この内容はまちまちで、行方不明者の捜索から指名手配犯の逮捕まで様々な依頼が送られてきます。そのため、自分のランクを満たしている依頼しか受けることができません。ちなみにハクのランクはこの後、団長直々に決定させていただきます」

「このときを楽しみにしておったのじゃ、よろしく頼むぞ」

「こ、こちらこそお手柔らかにお願いします」


首や肩の関節をぽきぽきと鳴らして戦意をあらわにするアカリに対して、ハクは苦笑いで答える。


「ちなみに全世界のブリューナクに在籍している10000人の中でランク10が副団長と団長の二人のみ、ランク9がマルス含めて10人、ランク8が私含めて20人いるわ」

「ブリューナクに入るだけでも難しいって聞いたけど、その中でもマー君とミクは上位ランカーなんてすごいな」

「言葉とは裏腹にあまり驚いているようには見えないけど」

「さっきミクの実力もほんの少し垣間見えたし、マー君も別れたあの時から随分とオーラが変わってるからな、ある程度は想像できてた。それで三つ目の仕事については?」


守護霊であるベルの能力の影響で、人を見る目に長けてしまったなどとは口が滑っても言えないので、話を戻すことにした。


「三つ目は特別依頼よ。これは特定の団員を指名して依頼する形式だから当分ハクには関係ないわね。細かい話は、明日からマー君ことマルス君がレクチャーするらしいのでその時に聞いてください」

「君絶対僕のことからかってるよね?」

「何のことかしら」

「・・・ということだから、明日からよろしくね、ハク」

「あぁ、こちらこそよろしく」


「では今度は学園についてワシから説明させてもらおうかの。学園が始まるまではこの建物の宿泊施設を使ってくれて構わん。荷物はその部屋に送っておいた。入学してからは寮生活になるからそこで3年間過ごすことになる。ちなみにマルスもミクもおぬしと同じアトランティア学園に通っておるので、困ることはないじゃろう」

「それは助かります」

「後は入学式前日に説明すれば十分じゃろ、質問はないな?ないよな?それじゃ早速地下の訓練施設に行こうぞ!」


長い話を無理やり終わらせて、腕と尻尾をぶんぶん回しながらアカリが立ち上がると、それに続いて3人も立ち上がる。

そして一足先にエレベーターに向かうアカリの後ろ姿を追いかけながら、マルスがハクに耳打ちをするように声をかける。


「団長は最近、事務仕事が多くてストレスが溜まってたんだよ。ランク10の仕事なんてなかなかないからね。ストレス発散に使われると思うから気を付けてね」

「まじか、精一杯頑張るよ」


実はハクも最近本気で模擬戦をすることがなかったことに加え、下手に実力を見せるとSNSに投稿されてしまうというジレンマに苛立っていたため、楽しみにしていたのである。


ここに来るまでに使用したエレベーターが20階にそのままあったので、ボタンを押すとすぐに扉が開いた。

そして自分を含め4人が乗り込んだのを確認したミクは、B4と書かれているボタンを押し、下へと向かうのであった。



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