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明るい地下と暗い地上  作者: シゲさん
序章 旅立ち
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1話 地上の光 <後編>

1話の続きです。最初の部分はどうしても説明が長くなってしまうのであまりテンポは良くないですね・・

ご了承ください。あと誤字脱字の指摘を下さると助かります。

2人は第1層、軍事基地層に到着すると、地上行きエレベーターに乗り換えるために、早速移動を始めた。

すると道行く軍人たちがヘクトルを見るやいなや道の端まで移動し敬礼をし始める。

ヘクトルはそれに対して軽く手を上げて応えていく中、一人の男がヘクトルの元へ駆け寄ってきた。


「おはようございますヘクトル中将!今日は研究所の方に向かわれると聞いていましたが何用でこちらへ?」

「おはようバレク中佐。今日はこの子が地上に上がるんでその見送りだよ。見送り次第下に降りる」


それを聞いた周りにいる兵士はざわざわとし始める。


「おお!隣にいらっしゃるのが噂のお弟子さんですね!僕はバレク・ハーベルです!宜しく!」

「ハクです。よろしくお願いします」


物凄くハキハキと自己紹介したのは、程よく引き締まった肉体を持っており、金髪をツンツンにした髪型に青い瞳が特徴であり、この第9避難地区陸軍中佐のバレク・ハーベルである。


「お噂は聞いております。何でも避難地区史上最年少で守護霊と契約し、僕よりも強いのだとか!一度手合わせ願いたいね!」

「あはは…そんなのただの噂ですよ、俺が中佐であるバレクさんに敵うわけがありません」

「今はそうかもしれないけど、地上で魔法の腕を磨けば非適合者の僕なんか捻り潰せるようになると思うよ!」

「冗談はよして下さい。それにバレクさんは本職はアサルトスーツのパイロットでしょう?師匠から聞いてますよ。『今私の付き人をしてくれているやつがスーツ部隊の時期エース候補』だと」

「よく知ってるな。なら学校を卒業したらスーツの私と手合わせしようじゃないか!」

「えぇ、ぜひ。お手柔らかにお願いしますね」


その言葉を最後にバレクは去っていった。

戦闘服を着ていたため、おそらくこの後訓練でもあるのだろう。周りで敬礼をしていた兵士もバレクの後に付いて去っていった。

それを見届けた二人はそくさくと地上行きエレベーターに向かって歩き始めた。


そして、目の前に巨大なリフトが近づいてきた。

大きさはここに来るときに使ったエレベーターと同程度なのだが、外装が質素になっており無機質な感じを漂わせる。


「これが地上行きのエレベーターですか。第1層には何回か来てますがここに来るのははじめてですね」

「そりゃそうだ。このエレベーターは最重要防衛ラインだからな。我々が文字通り死んでも守らねばならないものだ。弟子と言えどもそう簡単に見せるわけにはいかんな」


そんな当たり障りのない会話をしているうちに箱の入り口までたどり着いていた。


「私はここでお別れだ。もし何かあれば連絡するんだぞ」

「わかってますって。その辺はリムに似てますね」

「…まぁ私も近いうちに地上に上がる予定だ。会えるかどうかはわからんが何かあったときは駆けつけることができると思う」

「便りにしてますよ」


「では、最後になるが…お前は今までも、そしてこれからも多くの困難に立ち向かうことになるだろう。たが一人で何でも解決しようとするなよ。地上ではたくさんの友人を作れとは言わん。でも一人でもいいから信頼できる友人を見つけろ。憎しみに溢れたこの世界にも光は存在することを忘れるな」


「……俺には難しいかもしれないけど…わかりました」

「うむ、では達者でな」


別れを告げたハクは箱の中に入ろうと背中を向け歩き始める。


「ハク!一つ言い忘れたことがある!」

「はい?何です?」

「お前は現時点で魔法は使えないが、十分に強くなった。私が胸を張れるくらいにはな。だが適合者が皆お前と同じと思うな」

「わかってますよ。力を抑えればいいんですよね?」

「あぁわかってればいいんだ、それじゃあな」


今度こそ最後の言葉を交わすと、ハクは箱の中へと足を踏み入れ、中に設置してある座席に着席する。それを確認したヘクトルは、隣にいた作業員に「頼む」と一言入れる。それに頷いた作業員は手元にあったパネルを操作し始める。すると重低音の機械音が鳴り響き、箱の扉が全て閉まり始める。閉まりきったと同時に地面から二つの台が姿を表し、ヘクトルと作業員の腰辺りまで伸びる。


「カウント…3,2,1」


とヘクトルがカウントし終わったとき、作業員もそれに合わせて台に手をかざす。それと同時に、コピー機が紙を読み込むかのごとく掌の指紋を確認していく。すると台のパネルにCLEARと表示されエレベーターが動き始める。


「行ってこい、ハク。お前が知らない世界、知るべき世界が地上には広がっている」


とヘクトルが呟きながら箱が見えなくなるまで見送る。そしてハクもまるでそれに答えるかのように、


「行ってきます、師匠」


と呟き返すのであった。




________________________




「もうそろそろ着くかな」

『アタシも楽しみでしょうがないよー!』

「起きてたのかベル」

『ついさっき起きたばかりだよ〜。魔素がたくさんあるところに近づくのを感じたの!ふぁ〜…』


端から見たら独り言を呟いているようにしか見えないが、ハクは自分一人しかいない状況だとわかっていて声にしていた。ちなみに自分の守護霊とは声に出さずとも念話が可能である。


現在は半透明の手のひらサイズになったベルが頭上に浮いている状態であり、もちろんハクにしか見えない。





次第に速度が落ちてきたかと思うと、火災報知器のような甲高い音が鳴り響き、地上への到着を知らせた。

箱についている窓から外の様子をうかがうと、ヘクトルが箱を上昇させる際の作業を同じようにこなす二人の軍人がいた。


しばらく待つと、扉が開きそれに従って外に出る。

すると、青い短髪と眼鏡が印象的な人がこちらへ近づいてきた。


「地上へようこそハク君。私は地上に暮らす避難民のサポートを統括している少将のレン・コウメイだ」

「こちらこそよろしくお願いします。ヘクトルさんの弟子のハクと申します」


一言ずつ言葉を交わすと両者は握手をする。


「さて、この建物内だと地上に出た実感はないだろう。早速だが港町行きの電車に乗ってもらう。時間もそんなにないしね」

「そうですね。俺も早く空を見たいです」


二人は肩を並べて歩き始める。すると、周りにいた兵士がヘクトルのときと同じようにレンに対しても次々と敬礼をし始める。

それに対して、歩きながらではあるもののきっちりと敬礼を返すところを見るとヘクトルの緩さがうかがえる。


しばらくすると、目の前の光が強くなるのを感じて、基地の出口へとたどり着いたことを感じさせる。

そこでハクは眩しさに目を細めながら空を見上げ、空に向かって手を伸ばす。


「これが本物の空か……延々と続いてるかのように広いですね」

「空の向こうは宇宙が広がっているからね。実質延々と続いてるようなもんだよ」

「想像もつきませんね」

「一説によると、守護霊たちは宇宙の外側から召喚されているらしい」

「もっと想像がつきませんね。まぁ俺にとっては守護霊がどこから来ようとあまり関係ありませんが」

「そういえば君は契約者だったね。こりゃ無粋なことを言ってしまったかな」

「いいえ、気にしないで下さい」

「そう言ってくれると助かる。さぁ、駅に向かおう」


空を堪能した後、二人は出口の側に停めてあった自動車に乗り込み基地をあとにする。


基地の出口には、何やらプラカードを掲げている集団がデモ活動のようなことをしているが、ハクとレンはチラッとその様子を見るだけだった。


ちなみに史上に出回っている自動車は99%以上が電気自動車であり、残念ながら空を飛んだりはしないが、自動運転も完備されている。しかし、レンはどうやらマニュアルで運転しているみたいだ。


暫く走行しているうちに車の窓から雲を軽々と突き抜けて先がほとんど見えない程の巨大なタワーが見えた。


「あのデカイ建物が"バベル"ですか?」

「その通り。あの塔が、ここカピタル国の象徴でもある宇宙エレベーター、通称バベル。あの塔のてっぺんに巨大な宇宙ステーションが付いているらしくて、月から無線で送られてくる電力を受信するための施設があるんだ。」


アルバステラでは3つの国に分かれている。

空気よりも軽い魔素を留めたり、戦争で破壊されたオゾン層を人工的に形成している"イージスの塔"を有するミズガル王国。

世界に充満する魔素の5割を排出する世界樹があり、世界樹を崇拝する宗教国家ユグドリス。

アルバステラの電力の8割を発電している月面太陽光発電所と、その電力を受信する宇宙エレベーターを有する資本主義国家カピタル。

この3つの国がそれぞれの大陸ごとに立国されている。


現在ハクたちがいるのはカピタル国であり、地上行きのエレベーターの建造が許可されている唯一の国である。そのため、地上に行くためには一度海底レールを通じてカピタル国の地下避難区域に行かなければならないのだが、たまたまウラシマがカピタル国の下にあったためその手間を省くことができた。


ハクは車内から見たこともない建物や、見慣れないデザインの乗り物など、始めて目にするものを脳に焼き付けることで必死だった。


『こんなに感情を表に出すハクも珍しいね!イチゴパフェを見る目より輝いてるよ!』

(何を当たり前のことを言ってるんだいベル。ベルは楽しくないのか?)

『楽しいに決まってるよ!ただハクから流れてくる感情に比べたらどうってことないね!』


「守護霊と話しているのかい?」

「何でわかったんですか?」

「自分の守護霊と相談しているときのヘクトルさんと同じ顔をしていたんだよ。始めてきた地上で感動したことでも共有しているのかな?」

「まぁそんなところです」

「会話を邪魔して悪いけどそろそろ到着だ」


それを聞いて前に顔を向けなおす。すると前方に大きな駅が見えてきた。規模でいえばウラシマで利用したエレベートターミナルと同じくらいだが、LED証明などを巧みに使いエレベートターミナルよりも景観に力をいれているのが一目でわかった。


「私が送れるのはここまでだけどこの先は大丈夫かな?」

「心配ないですよ。ここに来るまで何回も心配されましたから」

「そう言わないでくれ。こちらは、はじめてのおつかいに行く子を見送る気分なんだ」


『アッハッハッハ!おつかいだってさ!ハク君、おちゅかいできまちゅか~?』

「うっせ!!」


「え、そんなに怒らなくても・・・」

「い、いえ違うんです。レンさんに言ったんじゃなくて」

「あ、あぁそういうことか、君の守護霊は気さくなんだな・・」

「えぇ、もう気さくどころかやんちゃなやつです」


会話の最中もハクの頭の中で笑い声が響き続けるが、ハクたちが乗る自動車が停止して到着を知らせる。


「では、良い学園生活になることを祈っているよ。君の端末に私の連絡先を送っといたから何か困ったことがあれば遠慮なく相談してくれ。なんてたって史上二人目の避難地区からの留学生だからね、地上に暮らす地下避難民のサポート役としては鼻が高いのだよ」

「え、俺が一人目じゃないんですか?」

「実はそうなんだよ。4年前に地下から上がってきて子は既に学校生活を送っていてね。これは機密事項なんだが、どうせもうすぐわかるだろうとヘクトルさんに許可をもらっている」

「そうなんですか・・まぁレンさんに迷惑かけないように頑張りますよ、ここまでありがとうございました」


別れの挨拶を済ませると車から降りて、レンに向かって一礼した後、車が去っていくのを見送る。


「さてと、こっからは一人か、えーと確か」

『ちょっとぉ!一人じゃないでしょう!』

「冗談だよ冗談。心読めるならそんくらいわかるだろ?」

『常に心読んでるわけじゃないもーん』

「はいはい、じゃあ二人で出発するぞ」

『うん!それじゃあ、しゅっぱーつ!しんこーう!』


その言葉を皮切りに、駅の入口へと足を進める。

入口に入ってすぐにある天井につるされた液晶パネルに目を向けて、何番線に乗ればよいかを確認する。


「俺が乗るのはリニアの方だからっと……あ、あったあった。5番線か、次に来るのは15分後か~微妙な時間だけどもうホームに向かうか」


時刻表を確認した後、時間に余裕をもってホームに行きリニア新幹線が来るのを待つことにした。


早速、携帯端末を改札にかざしホームに向かおうとしたところに、子供の泣き声が人ごみの中に聞こえた。何事かと思い声のする方へ視線を送ると、泣き声をあげて立ち尽くしている少女と、その子に触れようとしている青年がいた。


ハクは思わずその青年に向かって一瞬殺気を送ってしまい、青年は殺気にあてられて冷や汗をかきながらその手を止めた。


ハクは胸中でやってしまったと思いつつ二人に近づく。


「なんや兄ちゃん、ワイはこの子が困っとる様子やったから助けようとしただけや。そんな殺気出さんといてーや」

「あ、あぁ悪い。ついな。(こいつ人混みの中で俺が殺気を送ったことに気付いてるだと?何者だ?)」

「それにこの人ごみの中でワイだけに正確に殺気を送るなんて、兄ちゃん何者なんや?」


(まずいな、早速問題ごとを起こすわけにはいかないし、なんて答えよう…)

『そんなの適当にはぐらかしなよ!』


ベルの能天気なアドバイスに呆れつつも、その案に乗ることにした。


「ちょっとね。日々鍛錬しているうちに身に着けたんだ。そんなことよりこの子をどうにかしないと」

「……せやな。腑に落ちんがその通りや」


二人が納得(?)したところで少女に目をやると、声は出さなくなっているものの嗚咽を漏らしている。その姿を見た瞬間ハクは何かを思い出したかのよう頭痛に見舞われて頭を押さえ始める。



_______________________




周りが炎に包まれる中、嗚咽を漏らしながらあたりをキョロキョロして親を探す少女がいた。


「待ってて!すぐにそっちに行くから!」


背中に背負った片手剣を鞘から抜き出すと同時に、横一線に振りかざして瓦礫を一気に取り払う。

シャキンという音を鳴らして剣を鞘に戻すと、少女に近づいて手を握る。


「必ずお母さんとお父さんに会わせてあげるからね!しっかりついてくるんだ!」

「う、うん!」


そして手を引いて、ひとまず安全なところへ移動しようとしたところ、急に少女の体重が軽くなったかのような感覚が繋がれた手から伝わってきた。嫌な予感がして後ろを振り向くと…



「…………え?………」



________________________


『気持ちを強く持ちなさい、ハク』


普段は出さない真面目なベルの声色で我を取り戻したハクは、二人に向かって「大丈夫」と短く伝えると、膝をついて少女の視線に高さを合わせる。


「君、お名前はなんていうの?」


ハクができるだけ優しい声色でそう問いかけると、

「………………」少女は無言を貫いた。


「知らない人と話しちゃダメってお母さんに言われてるのかな?ちゃんと約束守って偉いねぇ。でも君の力になりたいんだ。そのお母さんはどこにいるかわかるかな?」


優しく笑顔で少女に問いかけると。その少女は勇気を振り絞るかのようにして返答する。


「…………わかんない」

「どこではぐれちゃったのかな?」

「………ここ」

「そっか、じゃあまだ近くにいるかもしれないね。大丈夫、ぜっ……きっと見つかるさ!」


そう言うとハクは立ち上がりおもむろに端末をポケットから取り出し、無音カメラで少女をサッと撮影する。


そして、今まで傍観をしていた青年に声をかける。


「連絡先を交換しよう。俺はこのままこの子のお母さんを探すから君はこの子を駅の案内所まで送り届けるんだ。アナウンスはまだのようだけどもしかしたらもう案内所に向かってるかもしれないからね。何かあったらこの端末に連絡して」

「わかった。まかせとき!」


そして二人は別れて行動を起こす。


(あの兄ちゃんはどうやってこの子の親を探すつもりなんや…)


_________


(ベル、あの子と似たような魔力を持つ大人の女性を探して欲しい)

『あいあいさー!』


頭の中でベルの返事を聞くと、魔力を練って探知範囲を広げる。


『見つけた!!あっちあっち!!』


ベルがハクに何ともアバウトな報告をするが、ベルの心を読み取ったハクは何の迷いもなく走り始める。人ごみをかき分けながら急いで目的の人のもとへと急行すると、周りをキョロキョロしながら声を上げている女性を一人発見した。


「すいません。この子をお探しですか?」


そう言いながら携帯端末を見せると、その女性はぱっと表情を明るくさせた。


「は、はい!そうです!うちの子です!どこにいるんですか?」

「安心して下さい、今俺の…知り合いがこの子を案内所に連れて行ってます」

「そうですか、ありがとうございます!」


安心した母親の顔を見たハクは「こっちです」と案内しながら彼の端末に連絡をする。


「もしもし?今あの子の母親を発見した。今からそっちに向かいたいんだけど今どこにいる?」

『もう少しで案内所っていうところやな。どうする?ここで待っとった方がええか?』

「んや、だったら案内所で待っててくれ。すぐにそっちに行く」

『了解や。ほなまた後で』





そして、電話を切ってから3分程したら案内所に到着した。


「ミレイ!!」「お母さん!!」

「もう!どこ行ってたのよ!心配したんだから!」

「ごべんなざぁ〜い、ぉがぁさぁん」


「良かったな」「あぁ」

親子の感動の再開を見届けた二人は互いに短い感想を呟いてから、立ち上がったお母さんと目を合わせる。


「この度は本当にありがとうございました!」


そう言ってお辞儀をする母親と、小さな手を無言で振る少女を見て、二人共手を振り返してその場を後にする。


「良かったなぁ母ちゃんに出会えて。ホンマに助かったわ、一人では見つけられへんかったかもしれん」

「いやいや、こちらこそ、初対面の相手に殺気をあててしまって申し訳……………………………あぁーーーーー!!」


とハクが絶叫すると、素早くポケットから携帯端末を取り出し、現在の時刻を確認する。


『ハク!時間!ヤバイんじゃない?!』

「くっそ、あと1分しかない!じゃあ俺はこれで!」


そう言いながらハクはその青年のもとをあとにする。


「結局あいつは何者やったんや?……あ、そうだ………ハク?」


青年は連絡先を交換したことを思い出し、携帯端末をとりだすと、登録された情報からハクの名前を見つける。


「…ハクか…なんとなくあいつとはまた会いそうやな…」


その呟きは的中するわけだが、それを知るのはもう少し先の話である。

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