番外編1
8話後編で書ききれなかった部分です。
ここはブリューナク本部。
ハクとユミールと分かれたあと、マルスとミクは団長室にいた。
「休日に呼び出してすまないのう」
「いえ、むしろ都合が良かったです」
「ほぅ、珍しくミクが楽しそうな顔をしておるのう。じゃが、これから言うのは悪い知らせじゃ」
「生徒会長の件ですか?」
「うむ、ディアロス・アステルトの父であるバキロス・アステルトが、当主の座を息子に明け渡した」
「「!?」」
「そんな馬鹿げた話があっていいんですか…」
「わしも耳を疑ったがの…バキロスがそんなことするはずがないのじゃ…間違いなく息子のディアロスに大きなバックがおる」
「それを調べろということですか?」
「その通りじゃ」
「あの件と、どちらを優先すれば?」
「こっちを優先してくれ」
「了解しました」
マルスは自分の命令だけ聞くと、団長室を去っていった。
「ミクにはまず例の件の報告を頼む。報告書は残さなくてよい」
「はい。アルファギアスとシグマリウスの魔物石の解析ですが、不思議なことに魔力の異常はまったく見られませんでした」
「うーむ…そうか…やはり薬物が濃厚かの」
「はい。ただ、ここまで強力かつ痕跡を残さない薬を作れる人物となると…」
「それ以上はたとえこの部屋でも口にするでない」
「も、申し訳ありません」
「わかればよい。それと解析が終わった二つの魔物石はワシのところに持ってきてくれ」
「了解しました」
「ふぅ…」
命令を終えたアカリは短いため息とともに、緊張の糸を解く。
そして、強張った顔からニヤケ顔に変わり、それを見たミクは嫌な予感がして顔が引きつる。
「してミクよ」
「は、はい…何でしょう」
「マルスとは最近どうじゃ」
「…何も変わりないですよ。そう簡単に変わったら3年間も苦労してませんよ」
「それもそうじゃな。すまぬ、年寄りの戯れじゃ」
「いえ、こんなこと言えるのはアカリさんだけですから」
「そうか、これからもあいつのことを頼む」
「はい、わかってます。それでは失礼します」
「うむ」
――――――――――一方その頃―――――――――――
「バロンよ、あれから何かわかったことはあるか?」
「は!奴は現在、魔界の幹部の一人、ベルゼ・ブブに名前を変えていることがわかりました」
「なんだと?………引っかかることが多いな、他には?」
「ま、まだ他には何も……」
「…あいつの側にいるのはお前しかいない、わかってるな?」
「はい、承知しております」
「では行け」
「はっ!」
バロンは百獣の王の威厳を無くし、頭を下げると後ろを振り向いて歩きはじめた。
「ヘクトルの担当をしているガルガはまだ見つからんのか」
独り言にも聞こえるアダムの言葉に対して、側に立っていた側近と見られる天使は答える。
「いえ、未だに行方不明です」
「必ず探し出せ。今までこのことを黙っていたアイツは、何か知っているはずだ」
「心得ております」
「天界といえど、やはり地球の情報収集は難しいな。ヤツの身近に、もう一人契約させる必要がありそうだ」
自分の思うままに物事が進まなく、少しイラつきを見せるアダムによって、天界は殺気に包まれていた。
次回から話が動きだすのでよろしくお願いします。