TSがメインに書きたいのになんじゃこりゃぁ
驚きの黒さ、洗濯でも落ちない心の歪みだね、全くしょうがない作者だ。
やあやあみなさんこんばんわ?こんにちは?とにかく俺は死にそうです、まだ4話じゃねえか何言ってやがるバカ野郎?あ、ちょマウス右上に動かさないで死ぬる!やめてください!最後まで見てって!
窓から入る月の光が勇者を照らしちょうど逆光の俺には勇者がどんな表情をしているのか分からない、ベットの軋む音と共に勇者の手が俺の胸元に伸びる。
「っ・・・」
荒い作りのシャツの表面を綺麗なピンク色の爪で腹から胸になぞっていく。
「ゆ、ユーリ冗談は・・・」
頭の奥がズキズキと痛む、あの人と勇者が重なる、いつかなくなる愛なら俺はもういらない、日常の中に一人だけで居る孤独を癒そうと頑張った、でもダメだった、だから俺はもう愛なんていらない、嘘だと・・・冗談だと言ってくれないか?
「冗談じゃないよ」
死刑宣告、心にポッカリと穴が開きそうになる、勇者の両手が俺の首にかかり万力のような力でもって締め付けてくる。
「君が私の物にならないなら・・・」
死にそうになる、段々と視界が暗くなっていく、そういえばこいつのせいで俺死んだんだっけ?
馬鹿なことが頭の中で思い出される、死のうか、死んでしまおうか?
「・・・・・・」
あと少しで死ねる、その時だった。
「ぎゃあああああああ!」
外から悲鳴が聞こえた、正しくは断末魔だろうか?それは定かではないが頭の中で予測はついていた、テンプレ。
ナイス魔王と言おうか、それとも余計なことをしやがってだろうか?
「待ってて、直ぐに終わらせてくるから」
勇者は俺の首から手を話すとベットから降りた、下の階からほかの村人が勇者を呼んでいる声が聞こえる。
「逃げちゃダメだよ?」
はいはい、勇者様の仰るとおりに。
頭がいまだにぼんやりしている俺には返答はできなかった。
体を圧迫する痛みで目が覚めた、やけに体が冷たいと思ったら全身びしょ濡れだった、そんなことより体が動かない。
周りを見回そうとすると小さな瓦礫が目の前に転がってきた、薄明かりでようやく状況を把握した、どうやら家屋の下敷きになっているらしい。
どうやら運良く潰されずにすんだらしい、外を見ようと思い首だけ動かし瓦礫の隙間から外を見る。
前世で見た爆撃地の写真、そう言えばいいのだろうか、俺が十四年間過ごしてきた村は全て瓦礫となっていた。
生物や木の鎮火した時のなんとも言えない苦味のある匂いが俺の鼻につく、全身が冷たいと思えば雨が降っていることに気づく、霧雨のような雨が元村に降り注いでいる。
暫く目を閉じ雨の音を聞いていると雨に混じって別の音が聞こえた、誰かの鳴き声のようだ。
ちょうど村の広場だった場所から聞こえたその声は勇者の鳴き声だった。
遠くから見えるだけだが勇者の周りには巨大な魔物が数匹転がっていた、血に塗れて勇者は泣き叫んでいた。
「ぐっ・・・」
身じろぎすると釘が俺の腕の表面を切り血を出させる、体力が未だに回復せず、ここから出ることは出来ない。
暫く勇者を見ていると遠くから馬に乗った騎士が十数人近づいてくるのが分かった。
その中でもとりわけイケメンが馬を降りて勇者に近づく、数合勇者に話しかけたと思ったらそいつは勇者を抱きしめた、勇者はそいつの腕に寄りかかり気絶したようだ。
あーファック、気分が悪いねぇ全くもって、なんでだろうねぇ、男の悲しい性とやらかね。
男は勇者を抱き上げて共に馬に乗った、周りの騎士に数度話しかけると半分を残して来た道を戻っていった。
残った騎士たちは馬をゆっくりと動かして周りを散策していった。
「あーあー、最悪だ、こんな朝っぱらから・・・」
「全くだ・・・」
騎士たちの殆どが苦々しそうな顔をしている、どうしたのだろうか?
「生きているものはいないか!?」
「返事をしてくれ!」
やがて騎士たちが生き残った人間の救助にあたる、数人が声を上げ騎士たちの下に住人が二三人集まっていく。
俺は声をあげようとしたが掠れた声しか出なかった。
「これで全部か?」
「多分そうだと思われます」
「そうか・・・」
「騎士様、これから私たちはどうやっt・・・?」
ガレキの隙間から見えた光景に俺は目を見開いた、馬に乗っていた騎士は持っていた槍を先頭にいた村人に突き刺した。
「な、何を・・・っ!?」
「すまないな、これも王命なのだ」
次々と村人は騎士に殺されやがて全員が殺された、呆然と見ていると騎士の中でもとりわけ若い騎士が抗議を立てる。
「王子の命令に違反してもよろしかったので?」
「王からの命令だ、例え王太子の言だといえども覆すことは出来ない」
どうやら勇者を連れて行った奴の命令じゃないようだ、つーかこういうテンプレアリかよ、ありっつったらありだけどよぅ。
「しかし罪もない村人を殺すのはあまりにも・・・」
「王が何を考えているかは知らないが私たちがしなければならないことはこの国を守るためにあの兵器を如何に効率良く使い魔なる者を早急に駆逐できるかどうかだ・・・例え胸くそが悪くともそれは必要な犠牲であったのだ」
「しかしこのことが民に知られては・・・それに守るべき民を兵器として使うなどは騎士道に反します・・・」
「見ているものなどおらんよ、誰も、それとアレは人ではない勇者だ、勇者には勇者の責務がある、お前も年を取ればわかるさ」
そう言ってその騎士は他の騎士と共に馬に乗り走り去っていった、若い騎士は暫くそこに佇み今さっきまで生きていた村人を眺めるとぽつりと。
「例え勇者だとしてもこの国はもう・・・」
言いかけ騎士は首を振り直ぐに馬を走らせ他の騎士たちを追っていった。
騎士が去っていった後も霧雨が降る無人の村の廃墟の潰れた家屋の一つの一部が盛り上がったと思えばそこから男が這い出てきた。
よろよろと瓦礫の道を抜けて何も落ちていない地面に転がり天を向く。
「あーくそったれ、全くくそったれだ・・・くそったれ・・・」
少しずつ強くなってきた雨に全身を洗われながら俺は神様に文句を言う。
「雲行きがすげー怪しいなぁくそったれ」
誰もいない村の廃墟はやがてならず者たちが来て金目のものを全て奪っていき、死体は野良犬や狼が漁り、瓦礫で使えそうなものは持っていかれ数年も経てばそこには何もなかった、雑草が生えている土地が広がるのみであった。
そこに彼の姿はなかった。