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ちょ、おま、それなんてフラグ

BLは大好物なんだ、どうしてこうなっちゃったのか自分でもわからないんだ。

やあミルドだよ、最近恐怖と絶望で頭がとってもハッピーなんだ、特に勇者から受ける心労で胃が痛いんだ。

あの日以来勇者は何かと俺と行動を共にするようになった、もうあれですよ、やばいっすよ、主に村人たちの視線が。


こんだけ見られてたら子供も近づかないのか俺には勇者以外の友達が少ない、寧ろ皆無だ、勇者には結構いるのにね?たまに一緒に居ても誰こいつ?みたいになるのが耐えれないよ、そんなに影薄いかな俺?泣きそうだよ。


「おはようミルド」


「おはようユーリ」


最初の邂逅から十年以上もたちもはやビビらずに俺は勇者と話すことができる、未だに勇者の容姿には慣れないが。


「毎朝水汲みお疲れ様」


「俺の誇れる唯一の仕事だからな」


いつ正体がバレるか分からない俺はストレスがマッハで、誰も見ていないところで体を鍛えた、特に回避方面で。


でもな、この間勇者が魔法の練習をしていたんだ、見てろとの言葉を下さった勇者様はテンプレ光魔法で眩い光と共に俺が見ていた地面を吹き飛ばした、正直に言おう、絶望した。

なにあれ?なにあれこわい、イチローのレーザービームが星々を砕きつつブラックホールを別次元に移動させてさりげなくダースベイダー卿を命の危機から救ってあげるぐらい怖い。


ストレスが良かったのか鍛えたのがよかったのかもうすぐ14になる俺は180cm間近と言ったところだ、やべえ、勇者の頭なんて俺の胸より大分下だ、成長度やべえ。


私より背が高くなるなんてミルドの癖に生意気だ、との勇者様の言葉がシャレになってないぐらい怖い、いつでも俺を殺せるんだよってか?怖すぎる。


出来るだけ背を丸めて目立たないように水を井戸から汲む、この世界は生活様式が中世代なので現代の日本から来た俺からすると少しばかり・・・というかかなり不便だ。


「背が曲がってるよミルド!」


「―――っ!?」


掌で背中を叩いてくる勇者に一言言いたい、お前いちいち力強いんだよクソが!すみません嘘です、勇者様にそんなこと言ってません、だからその拳を振り上げるのやめて!?


「・・・ほらユーリの分」


背中の痛みを笑顔で取り繕いながらいつもの機嫌取りのために勇者の分の水も汲む、これをすると勇者は機嫌が良くなる、そして俺の死亡率も大幅ダウン!多分、きっと、メイビー。


「ありがと」


水を勇者の分も汲み上げて一息つく、目を閉じて勇者を出来るだけ視界に入らないようにする、たとえ美少女だとしてもこいつだけはちょっとやだ、何見てんだよキモいシネとか言われそうで怖い。


「な、なあミルド」


「ん・・・なんだ?」


早朝だったこともあって目を少し閉じただけなのに寝そうになったところを勇者に起こされる、半目になって勇者を見ていると早朝の寒さということもあり少しだけ頬を赤くしながらこちらを覗いてくる、つーか近い。


「もうすぐ私の誕生日だよな?」


「そうだな」


俺の誕生日でもあるけどな、まあ勇者と違い俺は何の特筆することもない普通の凡人だしモブキャラだから祝われることなんてない、去年の誕生日プレゼントは引退した木こりさんが持ってた斧を貰った、2ヶ月使ったら折れて湖に落っこちた、もちろん女神なんて居なかった。


「私たちの成人の儀ももうすぐだろ?」


「そうだな」


この村では13~14歳が成人とみなされよっぽどのことがない限りすぐに嫁入り婿入りだ、どういうことだおい、ロリコンかおい?この変態共が、年下に鼻伸ばすとかマジありえねえよ、顔洗って出直せよ、イケメン以外じゃ無理だって。


というか勇者の成人の儀なんてフラグがビンビンじゃねえか、やばいだろこれ、もうやばいだろこれ、魔物の群れが襲ってくるフラグだろこれ?


きっと俺は勇者を守るための盾として塵芥になって消えてくんだ・・・さよならマイライフ、短い人生だったぜ。


「そ、その時にわ、私を貰ってくれないか?」


「・・・・・・・・・・・・あー、えー、はい?」


「ち、違う勘違いするな!?飽くまで仮初だ!変な雑種が近づいてきても鬱陶しかったからだ!」


俺の勘違いに相当怒ったのか顔が真っ赤な勇者に戦々恐々とする俺、周りの奥さん方があらあらとか言っているが勘違いも甚だしい、俺のようなノットイケメンが恋をしていいはずがない、思い出すのは前世の百合子ちゃん、告白して2ヶ月で別れた、思い出したくない黒歴史だ。


「そ、そうか」


ていうかお前早く冒険の旅にでもなんでも出てけよ、いや出てください、胃が痛いんだよお前が近くにいると、死の恐怖が胃をいじめてくるんだよ。

旅に出てイケメン魔王でも王子様でもいいからさっさとそいつとBLでもGLでもなんなりとしてろよ、いやしててください、俺は本当に普通がいいから、怖すぎるだろJK。

勇者は言いたいことを言って満足したのか足早に家に帰っていった、一体なんだったのか・・・。

















sideユーリ


私が生まれてからもうすぐ14年になる、前世では男であった自分が女として生まれた時正直神というのを恨んだ、だが13年以上も経つと段々と男であった時の尊厳とかそういうのがどうでもよくなってきた、だってないんだよ?ナニがとは言わないが。座ってするんだよ?何をとは言わないが。血が出てきちゃうんだよ?どこからとは言わないが。


私が生まれてから段々と女である自分を意識してくるにあたって厄介な感情があった、お隣の家にいる私と同じ日に生まれた幼馴染であるミルド、あいつを見ていると最近モヤモヤするんだ。


前世の日本人の特徴であった黒髪を持つ私の幼馴染、出会った頃は正直弱々しいやつだと思っていたのだが十をすぎる少し前から誰も見ていない場所――私は偶然見てしまったから知っているが――で体を鍛え始め今では村の子供の中で一番大きくなってしまった、私にはない広い背中を見ると心臓がドクドクするんだ。


精悍な顔つきで気配りも良くこの間転びかけた時に助けてもらい心配してくれる声をかけられたときは正直背中がゾクゾクした、私の頭はおかしくなったのだろうか?私は以前こんな性倒錯者だったろうか?


もうすぐ村の成人の儀が始まり村の女はこぞってミルドに求婚するだろう、あいつは自分がモテないと言っているが村でのあいつの人気は高い、少しだけ前世の男であった自分が不愉快な感情になったがそれ以上に女である意識が不愉快になった。


ミルドは私に笑いかけてくれない、優しいし気配りもできる、誰にでも優しいミルドだが私には笑いかけてくれない、ハリボテの笑顔だ、その理由は簡単だ、私が勇者ばけものだから。


ミルドに体を鍛えている理由を聞いてみたことがある、あいつはこう言った『ユーリだってがんばってるじゃないか(本音:鍛えないと死にそう、てか勇者のくせに鍛えるの?ちょ、おま洒落にならん)』あいつはきっと幼馴染として私と同じ場所に立ちたかったんだ、あの時のミルドの言葉が女である私を成り立たせた。


ミルドは私には遠く及ばない、けど私の唯一無二の存在だから、そう、だから―――


「だから・・・」


窓からミルドが井戸の前で呆然と立っているのが見えた、前世の文化水準より低い技術で作られた窓ガラスはミルドの姿を少しだけ歪ませるがその上をなぞるように触っていく。


「もうすぐだよ」


さっきは恥ずかしくて言えなかったけど絶対に言ってみせるから・・・。


「あなたが好き」


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