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圧倒的裏話アンド救済措置的謎回

早く、勇者様とイチャイチャさせたいなー、死ぬけど。


この孤児院の子供になってから4年も経ってしまった、時間がすぎるのはいつも早いと思う。

最初はご飯を失敗したりしたけれど、今ではみんなが満足できるぐらい料理が上手になった。


ただ・・・身長が全然伸びないことが悩みどころだ、木の柱に刻んである、三年前の背丈と今の自分の背丈が米粒一つ分いや、もしかしたらないのかもしれない・・・。


「はぁ・・・」


この孤児院はマリアさん、院長・・・お義母さんの好意で続けられている、お金も出費も全てお義母さんが出している。


お義母さんの本当の息子さんはだいぶ前に他所に婿に行って滅多にここに来ないし、お義母さんの生きる最低限のお金を送ってくるだけだ。


お義母さんの亡くなった夫の財産を少しづつ使っているらしい、だから孤児院の皆はお義母さんが大好きである。


「どうしたのユリア」


「あ、院長・・・」


ゴワゴワの紙を重ねて出来た帳簿にインクで今月の出費を書いていると、お義母さんが後ろから伸し掛って来た・・・重い。


お義母さんは文字も知ってるし、数学も出来るけど平民らしい、最初は嘘だと思ったけど本当だった。

お義母さんに文字と数字を教えてもらい家計簿をつけている、子供達もバイトをしているが、自分達だけで赤を黒に変えるにはもう少し必要だ。


「頑張るねー、えらいえらい」


カサカサの掌で撫でられ、梳かされる髪の毛がこそばゆい。


「・・・うん」


「けほっけほっ」


「院長?」


「いや、なんでもけほっ、あれ?けほっ」


「大丈夫!?」


後ろを振り向く、口を抑えて背を丸め咳を繰り返すお義母さん。


「けほっ・・・うぇ・・・」


「お義母さん!!」


不思議な顔で手を見ているお義母さん、真っ赤な真っ赤なあの色が唾液と混じって赤い糸を引く。


あの匂いが、あの匂いが・・・頭が真っ白になる。


「だ、大丈夫・・・」


「駄目!駄目っ!居なくなっちゃ嫌!嫌だ嫌だ嫌だ!」


お義母さんにしがみつく、頭上でお義母さんが咳を繰り返している。


「ちょっ・・・けほっ、おま、げほっ」


ガクリとお義母さんが膝をついて倒れる、ああ、どうしてこんなことに、神様、もしあなたがいたというのなら。













わたしはあなたをゆるさない


















神様、どうしてこんなひどいことするんですか?私は悪い子ですか?私はどうしてこんなに・・・。


赤い、紅い色が広がっている、お兄さんとアリシアちゃんが帰った後の記憶が曖昧なの、私はあの後ベットに入って寝たはずなのに。


そっか、きっと夢なんだ、これは夢、そうですよね神様?神様、きっと夢なんですよね?でもどこからどこまでが夢なんだろう?膝の上に乗った小さいお義母さんを赤ちゃんをあやすように撫でる。


「あはっ」


動かない、紅い、柔らかい。


「あははは」


ガタンと音がしてドアが開いた、月明かりが外から私たちを照らす。


「あ、うぁっ、あっ・・・」


「おにー・・・さん」


お兄さんの今まで見たことのない顔、そっか、夢だからだよね、嬉しいなぁ、お兄さんの新しい表情見られて。


「ユ、リア・・・」


ああ、そうだ、お兄さんに殺されてしまおう、夢ならきっと目覚めるよ、きっと目覚める。


「ころして、早く、ころしてください」


お腹が空いてお兄さんが食べたくなってきちゃった、早く起きて朝食を作らないと、それでお義母さんと院の皆とお掃除しよう。


「う、あ・・・」


「どうして、こうなっちゃったんだろう・・・おかしいですよね、こんなの夢です、だから・・・」


「そしてらきっと目が覚めて、またおにーさんと・・・」


お兄さんは少し黙って無表情になったあと、半分に折れた剣を振り上げて・・・。


「ああ、お休み・・・」


―――ユリア


おやすみなさいおにーさん―――



















「おはようございます院長」


「おはようユリア、今日も早起きね」


「はい、でも院長は早起きしすぎですよ!病気なんだからまだ寝ててください!」


「歳をとると早起きになっちまうもんなんだよ、それより今日は勇者様が来られるって話じゃぁないか」


「そうですね、領主様が魔族に襲われたらしいですけど・・・」


「全く・・・怖いねぇ」


「あ、そうだ院長院長!」


「何だい?」


「私今日変な夢見ました、すっごく変な夢でした!」


「どんな夢だったんだい?」


「すごく切なくて、すごく悲しくて、でもすごく優しかったような、そうでもなかったような・・・でも懐かしかったです!」


「・・・・・・そうかい」


「はい!所でお兄さんは今日も来ますかね?」


「・・・お兄さん?」


「あれ?お兄さんって誰でしたっけ?」


「私が知るわけないでしょ」


「そうですよねぇ・・・あれ?おかしいなぁ、あれ?」


「・・・・・・ユリア」


「なんですか、院長?」


「なんで泣いてるんだい?」


「え、あれ?な、んで、わたし、泣いてるんでしょうね?」


「・・・・・・よしよし」


「い、んちょう?わ、たし悲しくないのに、こんなに嬉しいのに、なんで泣いてるんでしょう・・・なんで・・・」


「いいよ、泣きたいのなら泣けば、泣いて全て忘れてしまえばいい、それで涙を全部出し切って、また前を向けばいい」


「そ、うですかね?私、泣いてもいいんですかね?」


「ああ、泣きなよ、悲しかったらお泣き」


私は泣いた、なんでか分かんなかったけど泣いた、なんで泣いたかわからないし、どうして涙が出てきたかわかんないけれど。


神様に祈ったり、憎んだり、信じなかったり、いろいろありますよね、一生の間に何回神様に祈って、何回神様に唾を吐くんだろう?気になる。

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