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リセットボタンをリセットする方法

掲載日:2026/08/25




「おい坊主、ええ加減にせんかい」

「なんやおっちゃん? 急に?」

「リセットボタンや、リセットボタン。なんで、押すんや」

「なんのことや?」

「これやこれ。おおっと、あかんあかん。頼むわもう。ほんまに。ええか。これは、坊主に渡したいんやが。押したらあかん」

「玉手箱みたいなこと言うやん」

「ええか。このリセットボタンな。時間を巻き戻せるねん。これさえあれば、失敗し放題。しかもこのボタン押し放題や」

「ええな」

「せやろ。だから。これを今から坊主に渡す。けどな。今は押さんで欲しいねん」

「何言うとんねん」

「ええか。わかったか? ほな渡すで」




「おい。坊主。ほんまにもう。ええ加減にせんかい」

「なんや、急に?」

「リセットボタンや。や。その。な。なんで、押すんや」

「なんのことや?」

「かくかくしかじか」

「ああ、なるほど。僕が時間を巻き戻すボタンを受け取ったら、受け取った瞬間。時間を巻き戻すボタンを受け取る前に、時間を巻き戻しとると。何遍も何遍も」

「そうや。おっちゃん。もう、坊主に何遍何遍もこのボタン勧めとるんや。せやに、ぼん。何遍もリセットしくさって。こちとら、商売あがったりやで」

「そらそうや。諦めてください。僕は、何度でも。リセットボタンを受け取った瞬間リセットボタンを押して、リセットするわ」

「なんでなん」

「だって、それ。使てたら。最後死ぬ瞬間。死いから逃れるため、何遍も何遍も繰り返し押して、恐怖をずうっと味わういうループオチのやつやん」

「ぎくう。いやいやいや、違うて。ほんまに。そんなことあらへん。頼むは、ぼん。貰ってくれやあ」

「知らん人からものもろたらアカンて、オカンから」

「はあ、そうか。わかたもう。諦めるわ。悪いことしたな。ぼん。何度も何度も押し売りみたいなことして」

「ボタンだけに? おもんな。 けどなおっちゃん。諦めるんは早いで。僕は、知らん人からはアカンけど。事情話してもろたら、受け取るかも分からんで」

「いや、話せば長なるし」

「長いな思たら、そのボタン押すわ」

「あかんて。押したら。せやなあ。どこから、話したら。あんな、おじさん。天使やったんや」

「天使?」

「天使や。いやこん見た目から、ちゃうやんとか言わんといてな。おじさんの天使って、結構おるんやで。ミカエルはんとか、ルシフェルはんとか。会社で言うたら部長クラスや、おじさんばっかやがな。

 そんでな。うーん。ぼんには難しいかもしれへんけど。派閥争いがあってん。でな、わしは、ルシフェルさんとこの派閥やった。そしたら、ルシフェルさん。堕天してもうて」

「失脚ってやつやな」

「失ったのは、白い羽。そんで、わしんとこにも白羽の矢。退職か出向か。わしにはまだ小さい娘息子もおったし。母ちゃんも身重や。どんなところに飛ばされるか分からへんけど。再就職はもう、難しい年。そんで単身赴任。天国の下の下の下の下請け。極東支部。日本の地獄に出向や。そんで、これや」

「リセットボタン」

「閻魔はんに言われてなあ」

「閻魔様?」

「せや地獄での上司。ごっつい顔の怖い上司や。こんボタン人に渡して、その人に無間地獄の苦しみを味わせる。その苦しみが、わしらのサラリーや。ん、ああ。分ことる。だあれも幸せになってない。わしの商売は、なんや。意味あるんやろか。人を騙して、苦しみを巻き上げて。はあ。どこでなあ。間違えたんやろうか。もういっぺん。人生、やり直したい」

「あんなあ、おっちゃん」

「なんや、ぼん」

「やり直したらええやん」

「何言うてんねん。そんな簡単に人生やり直せるわけがないやん」

「いやいや、やり直せるて。簡単なことやん。おっちゃんの持ってる、それ。なんなん」

「いやいや、やり直せんって。そんな。ああっ。ほんまやっ」

「おっちゃん、そのリセットボタン押したら、やり直せるんちゃう?」

「いやいやいや。やっぱあかん。さっきは、ほんまや言うたけど。どないすんねん。無理やで。結局未来は同じ道。同じ轍を二の舞やがな」

「あんなあ、おっちゃん。僕が、やったこと。いや、正味、この世界では、僕はやった記憶ないんやけど。それやったら、ええんちゃうん?」

「リセットボタンを受け取った瞬間。リセットボタンを押して、リセットする?」

「せや。閻魔様がおっちゃんに、リセットボタンを売ってこいと言った瞬間。リセットボタンを渡されるう。その瞬間にリセットボタンを押すんや」

「でも、それがどういう? 結局ただ最悪の状況をループしとるだけやないか」

「閻魔様やったら大丈夫。閻魔様はループに気いつくわ」

「なんでや」

「閻魔帳。浄玻璃の鏡。どっちか。閻魔様に見るように言うんや。閻魔様は、そん人の過去が見えるさかい」

「うわあ、ぼん。えげつなこと考えよるで。閻魔様をリセットボタンで無間地獄に落とすっちゅうんかい」

「せや。そしたら閻魔様もボタン売らそなんて考えへんのちゃうんか?」

「善は急げ。いや。悪は急げや。ほなな。ぼん」





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