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文化祭の君  作者: 獅童最
side 佐藤菫 『文化祭の君』
6/14

第5話 中二 十月 『試す』

 *****


「……てな感じだが、何か質問はあるか?」

「ない……と思います」


 工芸部顧問の岩本先生に工具の使い方と注意点をひと通り聞いて、菫は真剣な面持ちで頷いた。


「くれぐれも火傷には気を付けてな」

「はい。ありがとうございます」

「――さて、じゃあ、高野!」

「へーい」

「他の奴らがいろんな意味で悪さしないようによく見とけな。俺はこれから会議に行ってくるから」

「了解でーす」


 男子工芸部長に指示を投げながら、岩本先生は先ほどからずっと物珍しげにこちらを見ていた男子部員たちに鋭く視線を投げた。


「で、蜂須賀!」

「はい」

「お前は佐藤さん見てやってな」

「はい」

「親戚なんだろ」

「……はい。遠縁とおえんですけど」


(親戚?誰と誰が?)


 思いがけない言葉に菫の思考と身体がピタリと止まる。


「じゃあ、頼むな。お前ら、いつも言ってっけど、保護具ほごぐちゃんと着けろよ。工具の扱いミスると指ぐらい簡単に飛ぶからな。あと、全員下校時刻は守れよ」

「「「うーっす」」」


 足早に部屋を出ていく岩本先生を見送りながら、菫の頭は疑問符で埋め尽くされる。ちらりと視線を向けると、何とも言えない微妙な表情の蜂須賀先輩と目が合う。


「親戚……だったんですか?」


 小声で尋ねる菫に、先輩はすっと視線をそらす。


「説明が面倒くさくて、そういうことにした。悪かったな」

「いえ、あの、なんかすみません」


(まぁ、確かに。ホームセンターで偶然会ったって言うほうが、なんか不自然かも)


「まぁ、実害はないから。あんま気にすんな」

「はい。ええと、じゃあ、よろしくお願いします?」


 なんと言っていいかわからず、疑問形で返した菫に、先輩はふっと小さく笑う。


「おう。よろしく。じゃあ、俺ら向こうで作業してるから、何かあったら呼んで」

「はい。ありがとうございます」


(親戚……親戚かぁ……。確かに、親戚のお兄さんって感じ)


 小さな嘘に、なんだか楽しい気分になりながら、菫は作業机に向き直る。


(エプロン、手袋、マスク、保護メガネ……うん、大丈夫)


 身に着けた保護具類をひとつひとつ確認してから、持参したトートバッグから、ハガキサイズにカットしておいた白いプラダン(プラスチック製のダンボール板)とアクリル絵の具のセットを取り出す。


(まずは、練習)


 手元にあるのは初めて使う工具だ。いきなり本番は怖いし、材料のレジン液も決して安くはない。レジン液の代わりに、青色のアクリル絵の具を水で溶いて、少量ずつプラダンに載せていく。


(ちょっとずつ、試してみよう)


 ヒートガンのスイッチを最弱にセットし、慎重にプラダンの上の絵の具に当てる。風はドライヤーより細く熱を帯び、絵の具をじわじわと動かす。


(わ……風の当たり方がドライヤーと全然違う……!)


 細く筋を残して動いた絵の具に、菫は目を輝かせた。


(これ、思ったより難しい。動画では簡単そうにやってたんだけど。でも……楽しい)


 新しいおもちゃを手に入れた子どものような菫の視界の端っこで、相変わらずちらちらとこちらを見てくる男子部員たちも、次第に気にならなくなっていった。


 *****

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