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ただの村人に世界の運命を背負わすな!―俺は死神に連れ去られた妹を助けたいだけ―  作者: 無限大
魔界

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魔界で食事トレーニング6

 とはいえ、魔力エネルギーとかいうわけのわからんモノと意思の疎通ができるのは助かる。

 きっとドラゴンから得た力のおかげだ。


『なに? お前、ドラゴンの仲間なのか』


 おい。

 人の心を読んでんじゃねえよ。


『仕方ないだろう。これが我々の会話なのだ』

『話したくないのなら、お前が何も考えなければ良いだけだ』


 簡単に言ってくれるが、なにも考えないなんてかなり難しい。

 うざってぇな。

 だいたい、俺は飯を探しているのだ。肉体がないのなら、俺はコイツらに興味ない。

 さっさと帰りたいが、俺の身体は相変わらず完全に麻痺していて動けない。


 ――なあ、助けてくれよ。

 ――俺はテメエらに危害を加えるつもりなんかねえんだよ。

 ――帰りたいだけだ。


 心の中で唱えてみる。

 が、返事はない。

 おい! 今まで散々勝手に返事しといて、こういうときだけ急に黙ってんじゃねえよ!

 それでもモヤは喋らない。

 おい!

 クソが!


『あの、あのね』


 しばらくして、モヤが急にしおらしく話しかけてきた。

 今までのモヤとは別人格のような穏やかさだ。

 話す気になってくれたなら、ありがたい。


『あの、私も、肉体を持ってみたいの。あなたの身体、貸してくださらない?』


 は?

 貸す?

 意味がわからない。


『ちょっとで良いのよ。なにも、合成させろって言ってるわけじゃないわ』


 ――合成。

 ドキッとした。

 合成って、あの合成か?

 魔物と人間を混ぜ合わせる、あの?


『そう。それよ。だいぶ昔にね、私の彼氏がヒトの死体と合成させられたの。それから彼、帰ってきてくれないの』


 死体と、合成?

 ドクンと心臓が強く波打つ。

 それって……。


『そうなの。黒髪の人間だったかしら。酷い臭いがしていたわ。死体と、彼氏と、あともう一体。別の魔物もあわせて合成していたわ』


 黒髪の人間。

 酷い臭い。

 それは、まさか。


『私も人間になって、彼を探しに行きたいのよ。最愛の彼、ハルナフトプを。お願い』


 ――ハルナフトプ。


 胃液が口からあふれそうになった。

 なんでその名前がここで出てくるんだ?

 毛穴という毛穴が一気に開く。

 背筋を伝う悪寒が、徐々に怒りに変わっていった。

 ハルナフトプ。

 アイツが、モヤの一族?

 アイツが、合成された生物?


『なに、あなた。ハルナフトプを知っているの?』


 ――知ってるも何も、カレンを殺し、合成して、心臓を貫いた張本人だ。


 忘れられるかよ。

 今も鮮明に、カレンの心臓を搾り取ったあの光景を思い出せる。

 麻痺した口からよだれが溢れる。

 アイツを想像しただけで身体が震える。


 ――おいテメエ。この麻痺を解け。

 ――俺の知ってる情報をくれてやるから、オマエの知ってる情報を寄こせ。


 このままじゃ怒りが収まらねえ。

 緑のモヤたちはうろたえながら、俺の指示に従った。

 肉体が自由になり、俺はその場へあぐらをかいて座る。

 それを見届けたモヤが、話しかけてくる。


『教えて頂戴、彼のこと』

「ああ――」


 俺は故郷の村の出来事から、魔界へ来た理由までを緑のモヤたちに話して聞かせた。

 モヤは実体こそないが、その分感情がストレートに俺へ流れ込んでくる。

 身の毛もよだつような恐怖。どうしようもない焦り。仲間が狂っていくことへの怯え。どうにもならない不安。

 心臓がわしづかみされるような、強い感情が流れてくる。


『あり得ない』

『あのハルナフトプが大量虐殺なんて』

『奴は向上心のある奴だった』

『力が欲しいとは言っていたが虐殺なんて』


 緑のモヤたちが口々に言う。


「俺の知るハルナフトプは、腐った身体で人間の街や村を襲った外道だ。一部の人間を連れ去り、魔王のところへ連れて行こうともしていた。悪魔みたいな奴だったぞ」


 俺の指摘に、モヤたちは黙りこんでしまう。

 ハルナフトプ。奴のことが一層わからなくなる。

 アイツ、ここではあんなクソ野郎ではなかったのか?

 本質がわからない。

 人間や他の魔物と合成された、ハルナフトプ。

 ……ん? ちょっと待てよ?

 ハルナフトプは、合成されてあの姿になった?

 だとしたら、じゃあ、ハルナフトプは一体誰に合成されたんだ?


『魔王様よ』


 ――は?


『魔王様に合成されたの。何年も前、魔王様がここへやってきて、ハルナフトプを合成したのよ』

「魔王が? なんでそんなこと」

『魔王様は、協力者が欲しかったの。力を与える代わりに、手下として動いてほしいって。それに名乗りをあげたのがハルナフトプ』


 なるほど。

 だからハルナフトプは魔王の手下として、国王を魔王のところへ連れ去った。

 あれはハルナフトプの意思というより、魔王の意思か。


「でも、なんで、魔王の手下なんかになろうとしたんだ?」

『ハルナフトプは力を求めていたのよ。我々の未来のために』

「未来?」

『ええ』

『我々は自然のエネルギーを元に生きている。森が破壊されれば生きていけない』

『だが、火炎竜がこのあたりの森を焼き払っていてな。対抗する力がほしかった』

『しかし、実態がなければ、火炎竜を撃退することもできない』

『火炎竜を撃退するため、ハルナフトプは合成に名乗りをあげたのだ。少なくとも、我々はそう思った』


 火炎竜ときいて、さっきまで一緒にいたドラゴンを思い浮かべる。

 まさか、アイツがコイツらの天敵か?

 だとしたら、上手く言いくるめれば、モヤたちを救ってやることもできるような……。


『本当か!』


 いや、心読むなって、まじで。


『もしも我々を救ってくださるのなら、ぜひともご協力をお願いしたい!』


 ええぇ……。

 協力したって、俺にはなんのメリットもないだろ。

 やるだけ無駄だし、面倒くせえ。


『無駄には致しません! こちらも、それ相応のお礼はいたします!』


 礼、ねえ。

 とはいえ、実体のないコイツらは食えない。俺の力にすることは不可能だ。

 魅力がない。


『そこをなんとか!』

『ぜひご協力を!』


 そんなこと言われてもな。

 気乗りしない。


『では、私が、あなた様の力になります! あなたの妹さんを助ける旅、私がお供します!』


 おとも。


「いやいや。アンタが俺にお供するメリット、ある?」


 なんもねえだろ。モヤが。


『いえ、ございますとも! 実体がない分、隠密行動は得意です! 情報収集、お任せください! それに、私はハルナフトプの交際相手です。交渉のカードに使えるでしょう!』


 ふん。

 なるほど。

 まあ、何も知らない魔界で行動するにあたって、隠密行動、情報収集能力は魅力的だ。

 なにより、ハルナフトプに関するカードは、他では手に入らない。

 それにまあ、ドラゴンと話をつけるくらいなら、たいした労力にもならないだろう。

 悪くない。


「よし、わかった。交渉成立だ」

『ありがとうございます! 私はアレキサンドリアと申します。よろしくお願いいたします』

「俺はレノだ」

『レノ様。私はレノ様の肉体の周りで浮遊しておりますわね。御用があったら、なんなりとお申し付けください』


 俺はアレキサンドリアを仲間につけ、マウントボアを背負い、草原へと戻った。

 草原のど真ん中で、でかい焚火がモクモクと白い煙を上げている。


「レノ! 遅かたネ!」

『早く飯にするのだ! 火は我が起こしたのだぞ! 偉いであろう!』


 焚火にあたりながら、ピィとドラゴンがデカい態度で俺を出迎えた。

 なんだ、テメエ。ドヤってんじゃねえよ。


「おい、ドラゴン!」


 俺はマウントボアを土の上にドカッと投げ捨てた。

 ドラゴンがビクッと肩を震わせる。


「待つネ! ドラゴン、ちがうネ! メロちゃんネ!」

「メロちゃん?」

『我の名はメロディウス』

「そうネ! メロちゃんネ!」

「そうかよ。おい、メロ!」


 俺はメロに睨みを利かせた。


「テメエ、森を焼こうとしてたみてえだな。なんでだ? あ? 言ってみろや」

『え? 森? いや、邪魔だから』

「邪魔だあ?」


 俺の肩辺りで浮遊していた緑のモヤ、アレキサンドリアが、怒りの感情を俺に流し込んでくる。

 存在や住む場所を邪魔者扱いされたら、許せるわけがない。

 アレキサンドリアの怒りが俺の感情を増幅させ、俺はメロの首の穴に拳を突き付けていた。


「おいテメエ。邪魔だったら森を破壊して良いと思ってんのか、このクソドラゴン」

『え、だって、足の裏に木が刺さるし、歩きにくいし』

「そのくらい我慢できねえのか、このクズ! 森にはなあ、いろんな生き物が住んでんだよ! テメエが邪魔っつった木の力で生きてるヤツが、大勢いるんだよ! ああ?」

「レノ、どうしちゃたネ? 善人みたいネ」


 ピィが心底心配そうに俺を覗き込む。

 テメエ。俺をなんだと思ってやがるんだ。

 俺はメロの首の穴に指を突っ込み、メロの気道をふさいだ。


「これ以上、森林破壊を繰り返したらテメエを殺す。もうやらないと誓え」


 震えたメロが、コクコクコクと慌てて頭を縦に振った。


「絶対だぞ。忘れんなよ」


 メロを開放するのと同時に、アレキサンドリアの心がルンルンと跳ねたのがわかった。

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