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ただの村人に世界の運命を背負わすな!―俺は死神に連れ去られた妹を助けたいだけ―  作者: 無限大
旅立ち

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国王のところへ2

「やっぱ足じゃかなわねえか」


 やるか。

 1対大群で。

 俺は急ブレーキをかけ、ウルフに向き直る。


「かかって来いよ!」


 声を張り上げる。

 ウルフはそんな俺の声を聞く間もなく、一斉に飛びかかってきた。


「なめんなよ、クソ犬!」


 俺は弾みをつけて、ブウンッと薙ぎ払うように剣を振った。

 飛んできたウルフが自ら剣の腹に飛び込み、次々吹っ飛ばされていく。

 が、飛ばされたウルフを踏み台にして、別のウルフが頭上高くから牙をむいた。


「クッソ」


 よけきれねえ!

 左腕をかかげ防御の姿勢をとる。


「伏せろ、レノォ!」


 そんなとき、地鳴りのようなデカい声が響いた。

 反射的に、俺は身をかがめる。

 俺の真後ろから馬の走る音がして、そのまま俺を飛び越えた。


「オッサン!」


 顔を上げると、ロケッティア団長が馬の上で大剣を振り回し、ウルフをバッタバッタとなぎ倒していた。


「無事か、レノ」

「オッサンこそ!」


 周りのウルフは吹っ飛んだものの、まだいろいろな方向からウルフの唸り声が聞こえている。


「オッサン、止まってる暇はねえ! また囲まれるぞ」

「囲まれたら切るまでよ」


 団長は目をギラつかせ、鼻息を荒くした。

 コイツ、案外戦闘狂だな。


「いや、んなこと言ってる場合じゃねえんだよ。国王が――って、あれ? ピィは?」

「ピィは聖枢機院だ。私は住民を救うため、ここに残っておる。おぬしこそ、カレンはどうした」

「とりあえず馬に乗せろ。説明はあとだ。で、王宮へ向かってくれ」

「王宮? う、うむ」


 俺はロケッティア団長の後ろに飛び乗り、馬のケツを叩く。


「オラァッ、さっさと走れクソ馬ァ!」


 ヒヒィィン、と馬が鳴く。

 ウルフの死骸や道行く人をよけながら、馬はポックリポックリ小走りした。


「で、レノよ。何があったのだ」

「カレンと人型の魔物が国王のところへ行った。この火事もウルフも、全部人型の魔物がやったことだ」

「なっ……、魔王軍が城まで攻め入ったということか!」

「まあ、そうなるな」


 ロケッティア団長が閉口している。

 衝撃がデカすぎて、事態を飲み込めないのかもしれない。

 そりゃそうだ。王宮が魔物に攻め入られたなんて、これまで聞いたことがない。歴史に残る大惨事だ。

 遠くから聞こえてくる複数の悲鳴が、余計に焦燥感をあおる。


 ――ガウアウガウッ!


 ウルフの声が馬の足元から聞こえる。

 見ると、ウルフが馬にむかって牙をむいていた。


「邪魔すんじゃねえぞ、クソ犬ッ!」


 俺はウルフの脳天へ剣を突き刺した。

 そのまま持ち上げ、それを後ろのウルフにぶつけて吹っ飛ばす。

 倒した2匹のその向こうには、まだまだウルフがわんさか居た。


「おい馬ァ! もっとスピード出ねえのか!」


 俺は再び馬のケツを叩いた。

 このままじゃすぐに追いつかれてしまう。

 チンタラ走りやがって、このクソ馬! イライラする。


「レノよ」


 団長が重々しく声を出す。


「あ?」

「おぬしに国王陛下を託してよいか」

「はあ? なんだよ急に」

「街には兵が足りておらぬ。このままでは被害が拡大する。私はここに残り、街の者を守りたい」


 団長はそう言って馬を止める。


「おい」

「案ずるな。王宮には近衛兵がいる。協力して戦えるはずだ。だから王宮へは、レノ、おぬし独りで行け」


 手綱を俺に握らせ、団長はサッと馬から降りる。


「任せたぞ」


 団長は俺に背を向けたままそう言って、ウオォォォ! と叫びながらウルフの大群に突っ込んでいった。

 ――は? 意味わかんねえ。見ず知らずの街の人間がそんなに大事か?

 だけど、団長の背中からは、闘志にあふれた鬼気迫るものを感じる。

 もしかしたらこれが、「正義」ってやつなのかもしれない。

 俺は手綱を血が出るほど強く握った。

 俺なんかに託すなよ、という言葉が喉まで出かかって、飲み込む。


「死ぬなよ、オッサン!」


 俺は大声で叫んで、馬を加速させた。

 バカラッ、バカラッ、と軽快な足音が鳴る。

 オッサンが降りたあとの馬は、見違えるほど軽やかに走った。団長の装備はガチャガチャしすぎて重かったのだろう。

 馬は数匹のウルフを軽々と飛び越え、速度を上げながら王宮へと突っ走る。

 焦げ臭いにおいが漂う。

 だが見たところ燃えているのは市街地ばかりで、王宮から火が出ている様子はない。


 ――無事でいてくれよ、カレン。


 もう、カレンと離れてからだいぶ時間が経ってしまった。

 それにしては、城が静かすぎる。

 何事も起きていないなら良いが、でも、そんなこと、あるか?

 もしも、カレンが国王の近衛兵たちに八つ裂きにでもされていたら――。

 恐ろしい想像をかきけすように、俺は強く頭を振る。


 バカラッ、バカラッ、バカラッ!


 馬は市街地を抜け、聖枢機院の敷地を駆けあがる。

 道中、「わあああ」という野太い悲鳴が幾度となく聞こえた。


「た、たすけてくれぇ」


 ローブ姿の司祭が近くの教会から飛び出してくる。

 司祭が一歩外に出た瞬間、芝生を駆けてきたウルフがガブリと頭部に噛みついた。バシャッと飛んだ血液で、芝生が真っ赤に染まっていく。

 無防備な聖職者たちは簡単に致命傷を負い、いたるところで倒れている。

 それでも、ウルフたちは攻撃をやめなかった。

 むごい。

 だけど俺は、団長とは違う。

 俺はとにかく、カレンを助けなきゃいけないんだ!

 心の中にモヤモヤを抱えながら、俺は凄惨な現場から顔をそらし、前だけを見た。


「――こっちネ!」


 聞きなれた声が、少し先の建物から聞こえる。

 ピィが聖職者たちを建物に押し込み、迫りくるウルフを次々に仕留めていた。

 建物の周りには、ウルフの死骸が山積みだ。

 そういやピィのやつ、戦闘能力高いんだっけ。


「ピィ!」


 俺は馬の上からピィに声をかける。


「あ、レノネ!」


 ピィは無邪気に大きく手を振っている。まだまだ余裕がありそうだ。


「俺は城へ行く。お前はここを守ってやれ!」

「了解ネ!」


 ピィは元気に返事して、ウルフを一匹蹴り飛ばす。

 それを見届けて、俺は馬をさらに加速させた。


 バカラッ、バカラッ、バカラッ、バカラッ!


 しばらく走って、俺はようやく城の入り口にたどりついた。

 見張りの姿はなく、門は開いている。

 異様に静かで、なんの気配もしない。

 死の臭いも、火薬の臭いも、血の臭いもしない。

 無機質な城。

 背中にツウゥと冷たい汗が流れた。


 馬を降り、城内へ。

 ドス、ドスと俺の足音だけが響く。


 ――カレンはどこだ?


 城なんて今までの人生で一度も入ったことがないから、どこに何があるのかわからない。

 だいたい、王ってどこに居るんだよ。

 誰かに聞きたいのに、人影はまったくない。


 ――クソッ!


 仕方なく俺は片っ端からドアを開け、適当に複数の部屋を通り抜け、奥へ奥へと進んだ。

 せめてなにか、手がかりをくれ!

 そう思いながら開けたドアの先を見て、息を飲む。


 ――チッ。


 そこには、いくつもの死体が重なっていた。

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