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ただの村人に世界の運命を背負わすな!―俺は死神に連れ去られた妹を助けたいだけ―  作者: 無限大
旅立ち

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十字軍2

 何が起こっているのかわからない。

 ただ俺は、どこかの建物の地下牢へ閉じ込められていた。

 暗くじめじめした空間にひとりきり。

 ロウソクひとつの薄明りの中、俺は石造りの地べたに座って耳を澄ました。

 時折、遠くからドォォンと大きな音が聞こえる。

 戦争が始まっているのかもしれない。


 ふっざけんなよ、ガチで。

 牢の鉄格子をゆすってみたが、当然、出られそうにない。

 このままどうなる?

 俺は、カレンは、どうなる?

 ……ピィは?


 ガッシャン、ガッシャンと金属音が階段を降りてくる。

 俺は身構えた。といっても、牢の中ではどうしようもない。

 睨みを利かせていると、目の前に現れたのは、門で会ったロケッティア団長とかいう男だった。


「お前がこの村に十字軍を引きこんだのか」


 ロケッティア団長は険しい顔で剣を抜き、鉄格子のすき間から俺の顔面スレスレの位置までそれを差し込んだ。

 俺はのけ反りながら、ロケッティア団長めがけてツバを吐く。


「知らねえよ」

「嘘をつくな!」


 ガシャン! と、大きな音がして、剣が地面にめり込んだ。数センチずれていたら俺の足の指は無くなっていただろう。


「この村に聖女様は来ていないと、何度言ったらわかるのだ!」

「あぁ? 聖女ってなんだよ!」

「知らぬフリをするな! 貴様らの『村を焼いてでも聖女様を捕まえる』という愚行こそが、すべての原因ではないのか!」


 なにを言っているのかわからなすぎる。

 異世界のおとぎ話かよ。バカバカしい。

 意味不明な熱弁に対しヘラッと笑う。それを見たロケッティア団長は顔をひきつらせた。


「馬鹿にするなよ、小僧」

「そんなこと言われてもな」


 俺は両手の平を上に向けて、意味が分からない、とジェスチャーしてみせた。

 団長の口がひくひく動いて笑える。


「フン。なぜ聖女様が貴様らの元を去ったのか、よくわかる。力で制圧しようとする奴の指示など、誰が従うものか」


 ロケッティア団長は剣を鞘に戻した。

 同時に、ドタドタ走り降りる音が階段から聞こえた。

 階段から飛び出してきたのは、見張りをしていた門番だ。


「ロケッティア団長! 大変です! 聖女様のお仲間と思われる巫女が村のはずれで発見されたそうです!」

「なに?」

「十字軍がその巫女を連れてきました。そして――」


 門番の男が俺に視線を向ける。


「巫女はこの男を呼べと言っているようです」

「は?」


 素っ頓狂な声を上げたのはロケッティア団長ではない。俺だ。

 ロケッティア団長がワナワナ震えながら俺を睨みつける。


「貴様! やはり聖枢機院の者ではないか!」

「知らねえよ! なんだよ、巫女って! 俺は知らないぞ!」


 と、思った。

 だが、縄で縛られたまま村の中央まで連れていかれた俺は、十字軍が連れてきた「巫女」を見て絶句した。


「レノ! ウチ、捕まっちゃたネ!」


 巫女って、ピィかよ。

 とんだ誤解じゃねえか。

 ピィは十字軍のマントを羽織り、ピィピィ鳴いている。

 一人で草原に置いていったのが仇になったか。

 俺はうんざりと空を見上げた。きつく縛り上げられたロープが苦しい。


 村の広場では、自営軍と十字軍がお互いにらみ合っている。

 それぞれの軍の先頭には、縛り上げられた俺と、ピィ。

 俺らはいつの間にか、戦争の渦中にいる。


「ロケッティアよ、説明してもらおうか」


 十字軍の中でひときわ偉そうな奴が、ピィを縛るロープをグイッと引っ張りながら言った。


「なあロケッティア、巫女がコソコソと村を覗こうとしておったのだぞ。聖女様がここに居るからであろう」


 ――ピィの奴、待ってろっつったのに覗きに来てやがったのか。

 俺の口から思わずため息がもれた。

 その向かいで、恐怖に震えるピィが弱々しく「ピィィ」と鳴く。

 ロケッティア団長が声を張る。


「説明することなど何もない。聖女様など知らぬ。巫女とやらも、初めて見た」

「馬鹿を言え。この方は……あー……少々おかしな格好をしているが、正真正銘、聖枢機院の巫女だ。その巫女がそこの男に助けられたと言っておる。すなわち、この村で聖女様一行がかくまわれていたことに違いない」


 うるせえ軍人どもだ。

 俺は後ろ手でズボンの後ろから小刀を抜いた。

 背に隠しておいて助かったぜ。捕らえられたとき、刀を奪われずに済んだ。

 軍人どもが話に夢中になっている隙に、俺は少しずつロープに切れ目を入れていく。


「馬鹿を言っているのはそちらではないのか、十字軍よ。この男、十字軍のスパイであろう」

「何を寝ぼけたことを言っておる。我々はそんなみすぼらしい男など知らぬ。この村のガキではないのか」


 チッ。

 何がみすぼらしいガキだ、クソが。

 悪態をついてみたが、銃を構えた両軍を前に、小刀一本しか持たない俺の戦力では足元にも及ばない。

 腹立たしいが、我慢だ。


「嘘をつきとおすつもりか、十字軍め。聖職者ともあろう者が嘆かわしい! やはり貴様らの目的はこの村を焼き払うことか! 断じて許せぬ!」

「何を言う。村を焼き払うのは聖女様を見つけるため! 正当な理由があってのことだ! 焼かれたくなければ、早急に聖女様を連れてまいれ!」

「聖女様など知らぬと言っているだろう! この村にはいない! 帰れ!」

「巫女がここにいるのだぞ! 聖女様がおらぬはずがない! さっさと聖女様を連れてこぬか!」

「おらぬと言っている!」

「そんなはずはない! 従わぬならそこの家に火をつけるぞ!」

「ふざけるな! それが聖職者のすることか!」

「嫌ならば聖女様を連れてまいれ!」

「だから、おらぬと言っているだろう!」

「ええい、嘘をつくな!」


 堂々巡りすぎるだろ。馬鹿かコイツら。

 ああ、ウゼエ。

 こんなウゼエ奴ら、ぶん殴れば大人しくなるんじゃねえの?

 みんな馬鹿みたいに堂々巡りを聞いちゃってよお。

 こんな馬鹿なんかよお。

 俺がさっさと止めてやるよ。


 俺は小刀で一気にロープを切った。

 自由になった一瞬で、真横にいた軍人のアゴをぶん殴り、脳を揺らす。

 近くの視線が俺に集まる。

 構うかよ。

 俺は気絶した軍人の持っていた銃を奪い、ドォン、ドォンと十字軍をめがけて撃った。武士の情けだ。急所は外す。


「き、貴様!」


 ロケッティア団長が俺に剣を向ける。


「俺はアンタらの敵じゃないぜ? どうする、俺を切るのか? 俺はもう十字軍を2人も殺ったぜ?」


 ロケッティア団長は歯を食いしばり、一瞬で目標を切り替えた。


「十字軍を総攻撃せよ!」


 ロケッティア団長の声が村に響く。

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