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J-リセット:日本人だけの地球再設計   作者: 月城 リョウ
第10章:最終決戦

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第10章2

2026年6月1日 午前10時00分

**東京・首相官邸 記者会見場**


佐藤優希は、記者会見を開いていた。


「本日、私は『生活保護制度改革案』を発表します」


記者たちが、一斉にペンを走らせた。


「現在の生活保護制度には、問題があります」優希は資料を配った。「健康で働ける人が、長期間受給し続けるケースがある。これは、日本人でも外国人でも同じです」


優希は、グラフを示した。


「そこで、新制度を導入します。『就労支援付き生活保護制度』です」


「具体的には——」


優希は、説明を始めた。


**新制度の内容:**

1. 健康で18歳~60歳の受給者は、国立職業訓練大学での訓練を義務化

2. 訓練期間は最長1年。その間は生活保護を継続

3. 訓練修了後、就職支援を実施。3ヶ月以内に就職できない場合は、公共事業での雇用を保証

4. 正当な理由なく訓練・就職を拒否した場合、受給を停止


「これは、厳しい制度です」優希は認めた。「しかし、公平な制度です」


「日本人も外国人も、区別なく適用します」


記者が質問した。


「大臣、これは事実上の『強制労働』では?」


「違います」優希は即座に否定した。「これは『自立支援』です。生活保護は、一時的な支援であるべきです。永遠に受給し続けることは、本人のためにもなりません」


別の記者が質問した。


「しかし、病気や障害のある方は?」


「もちろん、除外します」優希は答えた。「この制度は、『健康で働ける人』だけが対象です」


「高齢者や、育児中の方、障害者の方は、従来通りの制度を利用できます」


記者会見場が、ざわめいた。


「これは……厳しいですね」ある記者が呟いた。


「厳しいです」優希は頷いた。「でも、それが現実です」


---


**2026年6月1日 午後2時00分**

**東京・新宿区 在日外国人コミュニティセンター**


リー・ジュンホが、緊急会議を開いていた。


会議室には、コミュニティメンバー約100人が集まっていた。


「みんな、佐藤大臣の記者会見を見たか?」


「見た……」ある男性が暗い声で答えた。


「生活保護を受けてる俺の友人、どうなるんだ?」別の男性が不安そうに聞いた。


「訓練を受けるか、仕事を見つけるか、だ」ジュンホは答えた。


「でも、日本語が不自由な人はどうするんだ!訓練なんて受けられないだろ!」


ワン・シュウが立ち上がった。


「やっぱり、佐藤優希は信用できない!」


会議室がざわめいた。


「最初は『共生』って言ってたのに、今度は『働け』だと!結局、俺たちを奴隷にしたいんだろ!」


「ワン、落ち着け」ジュンホが言った。


「落ち着けない!」ワン・シュウは叫んだ。「佐藤優希は、桜井と変わらない!」


グエン・ティ・ランが立ち上がった。


「ワンさん、それは違います」


「何が違う!」


「佐藤大臣は、『日本人も外国人も平等』って言いました」グエンは冷静に言った。「この制度は、外国人だけじゃない。日本人にも適用されます」


「それが何だ!」


「それは——」グエンは言葉を選んだ。「公平だということです」


カルロス・サントスも立ち上がった。


「俺も、グエンに賛成だ」


カルロスは、自分の経験を話し始めた。


「俺、ブラジルから来た時、ポルトガル語しか話せなかった。でも、日本語学校に通って、必死で勉強した」


「今は、日本語で仕事ができる。それは、努力したからだ」


カルロスは、ワン・シュウを見た。


「生活保護をもらい続けるより、自分で働いた方が誇りを持てる」


ワン・シュウは、黙り込んだ。


ジュンホが口を開いた。


「みんな、佐藤大臣の制度は確かに厳しい。でも、俺たちのためでもある」


ジュンホは、会議室を見回した。


「『外国人は働かない』——そういう偏見がある。この制度で、俺たちが自立すれば、その偏見を壊せる」


会議室が、少しずつ落ち着いた。


「ただし」ジュンホは付け加えた。「日本語が不自由な人への配慮は必要だ。佐藤大臣に、それを伝えよう」


---


**2026年6月3日 午前10時00分**

**東京・多文化共生省 大臣室**


リー・ジュンホ、グエン・ティ・ラン、カルロス・サントスの三人が、優希と会っていた。


「佐藤大臣、私たちは新制度を支持します」ジュンホが言った。


「本当ですか?」優希は驚いた。「正直、反発が来ると思っていました」


「反発もあります」ジュンホは認めた。「でも、多くのメンバーは理解しています」


グエンが口を開いた。


「ただし、お願いがあります」


「何でしょう?」


「職業訓練で、多言語対応の教材を用意してください」グエンは資料を渡した。「日本語が不自由な人でも、技術は学べます」


優希は資料を見た。


「分かりました。すぐに手配します」


カルロスが笑った。


「大臣、あなたは変わりましたね」


「え?」


「前は、理想ばかり語ってた。でも今は、現実的になった」


カルロスは、優希の肩を叩いた。


「それが、良いリーダーです」


優希は微笑んだ。


「ありがとうございます」


---


**2026年6月5日 午後3時00分**

**国会議事堂 予算委員会**


桜井晋三が、再び質問に立った。


「佐藤大臣、生活保護制度改革案について質問します」


優希は立ち上がった。


「どうぞ」


「この制度で、どれくらいの予算削減が見込めますか?」


「初年度で、約50億円です」優希は答えた。


「50億円……」桜井は繰り返した。「少ないですね」


「確かに、大きな額ではありません」優希は認めた。「しかし、重要なのは金額ではありません」


「では、何ですか?」


「人々の自立です」優希は力強く言った。「生活保護から脱出し、自分で働く——それが、本人にとっても社会にとっても良いことです」


桜井は、資料を見た。


「しかし、佐藤大臣。あなたの制度には、矛盾があります」


「矛盾?」


「そうです」桜井は説明し始めた。「あなたは、『健康で働ける人は訓練を受けろ』と言う。でも、訓練を受けても、仕事があるとは限りません」


桜井は、グラフを示した。


「現在、日本の失業率は6.5%です。求人倍率は0.8倍。つまり、仕事を探している人の方が多い」


「そんな状況で、訓練を受けても意味がないのでは?」


優希は、一瞬考えた。


「……確かに、現在の雇用状況は厳しいです」


「では、どうするのですか?」


「公共事業での雇用を保証します」優希は答えた。「訓練を修了しても就職できない場合、政府が雇用します」


「政府が?」桜井は首を傾げた。「それには、予算が必要です。いくらですか?」


「約200億円です」


委員会室がざわめいた。


「200億円!?」桜井は声を上げた。「佐藤大臣、あなたは生活保護費を50億円削減すると言いましたが、公共事業で200億円使う。差し引き、150億円の赤字です」


桜井は、カメラを見た。


「国民の皆様。佐藤大臣の改革は、実は増税です」


優希は、反論しようとしたが——


「時間です」委員長が宣言した。「本日の質疑は、これで終了します」


---


**2026年6月5日 午後7時00分**

**東京・多文化共生省 大臣室**


優希は、再び机に突っ伏していた。


「また……やられた」


早川美咲が、ため息をついた。


「優希、桜井は完全に計算してるわ。あなたの弱点を、全部見抜いてる」


田中健吾が口を開いた。


「でも、さっきの質疑、おかしくないか?」


「何が?」


「桜井は、『雇用がない』って言った。でも、それって政府の責任じゃん」


健吾は立ち上がった。


「雇用を作るのは、政府の仕事だろ。佐藤大臣が公共事業で雇用を作るって言ってるのに、『金がかかる』って批判するのは矛盾してる」


優希は、顔を上げた。


「……そうだな」


優希は立ち上がった。


「次の委員会で、反論する」


早川美咲が資料を広げた。


「じゃあ、作戦を練りましょう。桜井の論理の穴を、徹底的に突く」


三人は、深夜まで作戦会議を続けた。


---


**2026年6月10日 午前10時00分**

**国会議事堂 予算委員会**


優希は、自ら質問時間を要求していた。


「委員長、発言の機会をいただけますか?」


「どうぞ」


優希は立ち上がった。


「前回の質疑で、桜井議員から批判を受けました。『公共事業で200億円使うのは無駄だ』と」


優希は、資料を配った。


「しかし、考えてみてください。失業者を放置する方が、よほど無駄です」


優希は、グラフを示した。


「失業者一人当たり、年間約200万円の社会的コストがかかります。生活保護、医療費、そして——犯罪リスクの増加」


「もし、1万人の失業者を放置すれば、年間200億円のコストです」


優希は、桜井を見た。


「私の公共事業は、200億円で1万人を雇用します。つまり、コストは同じです」


「しかし、公共事業で雇用すれば、道路や施設が整備される。社会資本が増える」


優希は、委員会室を見回した。


「どちらが無駄ですか?何も生まない失業者対策か、社会資本を増やす公共事業か」


委員会室が、静まった。


桜井は、資料を見ていた。


優希は続けた。


「桜井議員は、『現実を見ろ』と言います。その通りです」


「現実は——雇用が足りない。だから、政府が作る。それが、政治の役割です」


優希は、深く一礼した。


「以上です」


委員会室に、小さな拍手が起こった。


桜井は、黙って座っていた。


---


**2026年6月10日 午後3時00分**

**永田町 桜井晋三の執務室**


桜井は、部下からの報告を聞いていた。


「桜井先生、今日の佐藤大臣の反論、効果的でした。世論が、また佐藤支持に傾いています」


桜井は、窓の外を見た。


「……佐藤優希、成長したな」


「どうしますか?」


桜井は、椅子に深く座った。


「経済攻撃では、決定打にならなかった」


桜井は、新しい資料を取り出した。


「次は——」


桜井は、資料を開いた。


そこには、『外交問題』と書かれていた。


「佐藤優希、お前の理想を、国際社会で試してやろう」


---


**2026年6月15日 午前9時00分**

**東京・外務省**


優希は、外務大臣——山本直樹(58歳)——に呼ばれていた。


「佐藤大臣、緊急の案件です」


「何でしょうか?」


山本外務大臣は、資料を渡した。


「韓国政府から、正式な要請がありました」


優希は、資料を読んだ。


『在日韓国人の参政権問題について、日韓外相会談を開催したい』


「参政権……」優希は呟いた。


「そうです」山本外務大臣は言った。「韓国政府は、在日韓国人に国政参政権を与えるよう、要求しています」


「しかし、これは内政干渉では?」


「その通りです」山本外務大臣は頷いた。「しかし、韓国側は『人権問題』として提起しています」


山本外務大臣は、優希を見た。


「佐藤大臣、あなたは多文化共生を推進しています。この問題、どう対応しますか?」


優希は、しばらく考えた。


「……まず、在日外国人コミュニティの意見を聞きます」


「分かりました。ただし、時間がありません。来週、日韓外相会談が予定されています」


優希は頷いた。


「分かりました」


---


**2026年6月15日 午後2時00分**

**東京・新宿区 在日外国人コミュニティセンター**


優希は、リー・ジュンホと二人きりで話していた。


「ジュンホさん、韓国政府の要請について、どう思いますか?」


ジュンホは、しばらく黙っていた。


「……複雑です」


「複雑?」


「私は、在日韓国人三世です」ジュンホは言った。「日本で生まれ、日本で育ちました。韓国語は話せません」


ジュンホは、窓の外を見た。


「でも、日本国籍はありません。韓国籍です」


「参政権が欲しいか、と聞かれれば——欲しいです」


ジュンホは、優希を見た。


「でも、それを韓国政府に要求してもらいたくはない」


「なぜですか?」


「それは、『韓国人』としての権利だからです」ジュンホは説明した。「私が欲しいのは、『日本に住む人間』としての権利です」


ジュンホは、深く息を吐いた。


「佐藤大臣、私たちは——在日外国人は、どこにも属していません」


「日本人でもない。母国の国民でもない」


「私たちは、何者なんでしょうか?」


優希は、ジュンホの目を見た。


そこには、深い苦悩があった。


「……ジュンホさん、答えを一緒に探しましょう」


「答え?」


「そうです」優希は頷いた。「『在日外国人とは何か』——その答えを」


---


**2026年6月20日 午前10時00分**

**東京・外務省 日韓外相会談**


日本側:山本直樹外務大臣、佐藤優希多文化共生大臣

韓国側:朴相勲パク・サンフン外交部長官、随行団


会談が始まった。


朴外交部長官が口を開いた。


「山本大臣、佐藤大臣、本日はありがとうございます」


「こちらこそ」山本外務大臣が答えた。


「早速ですが」朴外交部長官は資料を出した。「在日韓国人の参政権について、協議したい」


「在日韓国人は、約45万人です。彼らの多くは、日本で生まれ育ちました。しかし、参政権がありません」


「これは、人権問題です」


山本外務大臣が答えようとしたが、優希が口を開いた。


「朴長官、一つ質問があります」


「どうぞ」


「韓国では、外国人に参政権を与えていますか?」


朴外交部長官は、一瞬ためらった。


「……地方参政権のみ、一定の条件下で認めています」


「国政参政権は?」


「認めていません」


優希は、資料を見せた。


「韓国在住の外国人は、約200万人です。彼らには、国政参政権がありません」


「それは、なぜですか?」


朴外交部長官は、答えに窮した。


「それは……国家主権の問題です」


「その通りです」優希は言った。「参政権は、国家主権に関わる問題です」


「日本が在日韓国人に参政権を与えるかどうかは、日本が決めることです」


優希は、朴外交部長官を見た。


「韓国政府が要求すべきことではありません」


会議室が、静まった。


朴外交部長官は、少し考えてから言った。


「……分かりました。この件は、日本政府の判断に委ねます」


「ただし」朴外交部長官は付け加えた。「在日韓国人の人権は、守られるべきです」


「もちろんです」優希は頷いた。「私は、多文化共生大臣として、全ての在日外国人の権利を守ります」


「それには、在日韓国人も含まれます」


朴外交部長官は、微笑んだ。


「佐藤大臣、あなたは頼もしい方ですね」


---


**2026年6月20日 午後5時00分**

**東京・多文化共生省 大臣室**


会談を終えた優希は、疲れた顔でソファに座った。


早川美咲が、お茶を持ってきた。


「お疲れ様。うまく対応できたわね」


「ギリギリだったけどな」


田中健吾が、ニュースを見せた。


『日韓外相会談、参政権問題は「日本の判断」で合意』


「良かったじゃん。国際問題にならずに済んだ」


優希は、窓の外を見た。


「でも、問題は残ってる」


「何が?」


「ジュンホさんの言葉を思い出す」優希は言った。「『私たちは、何者なんでしょうか?』って」


優希は、深く考え込んだ。


「在日外国人に、参政権を与えるべきか——この問題、いつかは答えを出さなきゃいけない」


早川美咲が口を開いた。


「でも、今じゃない」


「え?」


「今、それをやったら、社会が分断される」美咲は言った。「まずは、多文化共生を定着させる。信頼を築く」


「その後で、参政権を議論する」


優希は頷いた。


「……そうだな。焦りすぎた」


優希は、カレンダーを見た。


大臣に就任して、もうすぐ2ヶ月。


様々な問題が、次々と襲いかかってきた。


「いつになったら、落ち着くんだろうな……」


その時、優希のスマートフォンが鳴った。


石橋総理からだった。


「もしもし?」


「佐藤大臣、今すぐ官邸に来てください」


石橋総理の声は、緊迫していた。


「大変なことが起きました」

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