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第四話 新たな気配


 ホーンラビットを狩った後、僕はその場に座り込み、大きく息を吐いた。


 体が震えていた。初めての戦闘。勝ったとはいえ、心はまだ平静じゃない。


(……これが命の奪い合いか)


 前世では想像もしなかった。中学卒業式の帰り道――通り魔から幼馴染を庇って死んだ僕が、今こうして魔物として異世界の森を駆け回っている。


 まだ夢みたいだ。だけど、この感覚は、確かに「生きている」と思わせてくれる。


(それに……何かが近づいてる)


 耳をすませると、風に混じって重たい足音。空気がぴりぴりと緊張する。


 ――魔物の気配。


(さっきのラビットとは違う……もっと、重い……!)


 僕は素早く茂みに身を潜め、《鑑定》を準備した。


 現れたのは、漆黒の体に鋭い爪、黄色い瞳を光らせた狼型魔物だった。


 「〘鑑定〙!」


 《シャドウウルフ》

 【ランク】F

 【レベル】5

 【生命】300

 【敏捷】180

 【スキル】〘突進Lv2・咆哮Lv1・影移動Lv1〙


(ランクF……!?)


 こっちはまだランクG。レベルも2。まともに戦えば負ける。


 それでも、足が震えないのは、何故だろう。


(逃げられるか……?)


 でも、《影移動》を持ってる相手に背中を見せたら終わりかもしれない。


(だったら……)


 僕は覚悟を決めた。


「〘韋駄天〙、発動――!」


 三分間だけ、僕は風になる。


 シャドウウルフがこちらに気づき、低く唸った。だが次の瞬間、僕は地面を蹴って跳んでいた。


「〘雷魔法・サンダーバレット〙!」


 雷の球が走り、狼の顔の横をかすめた。それだけでは倒せないが、目くらましには十分。


 すかさず右へ跳ぶ。幻術を同時に展開し、自分の残像をもう一体、逆方向に走らせる。


(ひっかかれ――!)


 シャドウウルフは幻に釣られ、咆哮と共にそちらへ突撃した!


(今だ!)


 僕は全力で後方へ回り込み、尾の付け根をめがけて噛みついた!


「〘噛み付きLv2〙!」


 ゴン、と重い衝撃。牙が肉に食い込み、血の匂いが広がる。


 シャドウウルフが吠え、暴れる。だが――


「〘闇魔法・ダークボール〙!」


 暗黒の球体を至近距離から発射。命中と同時に、狼がぐらついた。


 そして――


「〘突進Lv1〙!」


 最後の一撃を加えたとき、狼は崩れるように倒れた。


【シャドウウルフを討伐しました】

【経験値を大量に獲得しました】

【スキル『突進』がLv2に上昇】

【スキル『魔力操作』がLv2に上昇】

【スキル『闇魔法』がLv2に上昇】

【レベルが4になりました】


「――はぁ、はぁ……勝った……」


 意識が遠のきそうになる中、僕は空を見上げた。


 この世界のどこかに、あの二人がいる。僕の双子の幼馴染――


 天宮天音あまみや あまね。職業は「聖女」。

 天宮陽菜あまみや ひな。職業は「賢者」。


 僕の死と同時に異世界召喚され、人間の国の中心にいるはずの二人。


(僕も行くよ。君たちに、追いつくために)


次回:第五話「魔物の進化条件」へ――

初めての強敵撃破。そして訪れる、進化への第一歩――!

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