第二話 小狐、目覚める
光が晴れた瞬間、僕は――自分の体が、何か違うことにすぐ気がついた。
(……軽い?)
体が小さくて、やたらと柔らかい。そして――地面がやけに近い。
頭を傾けて見てみれば、前足……いや、前肢というのか。白銀に近い、美しい銀色の毛並みが目に入った。
(……マジか)
試しに後ろを振り向くと、もふもふの尻尾がぴょこっと揺れた。
――完全に、狐だ。
というか、まだ小さい。文字通り“小狐”。
(ついに転生しちゃったんだな……)
草が生い茂る森の中。風の音と鳥のさえずりだけが響いている。人の気配はない。
それでも、僕の中には奇妙な安心感があった。これが“異世界”というやつか。
(まずは……ステータス、確認できるんだっけ)
そう思った瞬間、まるで頭の中に浮かぶように、文字が現れた。
⸻
【名前】神谷レン
【種族】小狐
【ランク】G
【状態】普通
【レベル】1
【生命】100
【魔力】500
【力】70
【敏捷】50
【魅力】700
【固有スキル】
〘韋駄天:3分間、敏捷を5倍にする〙
【種族スキル】
〘幻術〙
【スキル】
〘鑑定Lv1/噛み付きLv1/突進Lv1/魔力操作Lv1/魔法耐性Lv1〙
〘身体強化Lv1/身体操作Lv1/武器術Lv1/幻覚無効〙
【固有魔法】
〘変化魔法Lv1(物体変化)〙
【魔法】
雷魔法Lv1:サンダーボール・サンダーバレット
闇魔法Lv1:ダークボール・ダークバレット
火魔法Lv1:ファイアボール・ファイアバレット
風魔法Lv1:ウィンドボール・ウィンドバレット
水魔法Lv1:アクアボール・アクアバレット
土魔法Lv1:アースボール・アースバレット
【加護】
〘転生神の加護〙
《潜在能力を極限まで引き出す》
【称号】
〘転生者〙《経験値2倍・固有スキルの取得》
〘魔王の卵〙《魔法適性と魔力操作の取得》
〘勇者の卵〙《身体強化・身体操作・武器術の取得》
⸻
(……チート過ぎるだろこれ)
レベル1の魔物が、いきなり6属性魔法を持ってるとか、どう考えても異常。さらに身体強化から武器術まで――完全に初期性能ぶっ壊れてる。
(でも、これが“魔王の卵”と“勇者の卵”ってやつの効果なのか)
ちなみに、この異世界には特殊な設定があると女神が言っていた。
――魔物は進化する。
最初の進化はレベル10。
以降はレベル20、40、80……と、倍々に進化の可能性が開かれていく。
スキルもまた、使い続けてレベル10に達すれば進化する。
一方で、人間は職業という力を持つが、基本的に進化は一度きり。
(つまり、最初から強くても、限界が早いのが人間。魔物は弱くても、成長すれば最強になれる)
僕が目指すのは、九回進化の末にたどり着くという伝説の存在――
《九尾》。
(よし、まずは……レベル上げからか)
森を歩きながら、僕は尻尾を揺らして周囲を見渡す。
モフモフ感に癒されそうになったけど――この世界は、なめちゃいけない。
ここは魔物が生きる世界。狩るか、狩られるかだ。
(目指すは進化。そして再会だ)
そう、僕は忘れていない。天音と陽菜――あの双子も、この世界のどこかにいる。
そして、彼女たちが聖女と賢者なら、きっと大きな戦いに巻き込まれるだろう。
――だから僕は、生き残ってみせる。
チートな小狐として。
そして、最強のキュウビとして、もう一度あの二人に――
胸を張って、再会するために。
次回:「第三話 狩りの始まり」へ――