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第25話「氷炎の交錯」

王都レインを出てから数日後

獣王国セルディアへの道中で神谷レンとユノはまたも死闘を繰り広げていた


「はぁっ……!」


吹き荒れる冷気の中、神谷レンの銀色の尾が宙を舞う。相対するは、Bランク上位の魔物レッサーアイスドラゴン──しかも五体。


「《幻炎刃》……!」


燃え上がるような幻影の炎がレンの爪にまとわりつく。一閃、紅の軌跡が空を裂き、氷の鱗を穿つ。


(五体同時なんて、さすがに無茶だ……でも──やるしかない!)


激しい戦闘が続く中、ユノのぽわぽわした声が響いた。


「……レン、大丈夫?」


「僕は大丈夫。でも、ユノ……少し、離れてて」


「……だめ。私、戦える」


ユノの銀髪がふわりと舞い、彼女の小さな手が光を灯す。


「精霊魔法《時間加速》──」


レンの身体能力が一瞬で倍加し、その動きは風のように速くなった。


「ありがと、ユノ……いくよ!」


疾風のごとく動き回り、レンは一体、また一体と《レッサーアイスドラゴン》を斬り伏せていく。剣と魔力の連携、精霊魔法との連携、すべてが噛み合い、戦いのリズムを掌握していった。


そして──最後の一体を貫いた瞬間、レンの身体に変化が訪れる。


「……っ、これは……!」


――レベル72に到達しました。


――精霊ユノが中級精霊に進化しました。


ユノの身体から放たれる魔力が一段と増し、姿も少しだけ成長し、より神秘的な存在へと変貌を遂げていた。


「……進化、した……? 私、また強くなれた……」


「ユノ……ありがとう。ほんとに、君がいてくれてよかった」


しかし、その平穏は束の間だった。


「グォォォォオオオオオ……ッ!!」


突如として大地が震え、周囲の気温が一気に下がる。現れたのは、桁違いの魔力を纏った《アイスドラゴン》──Aランク上位の存在だ。


「くっ……!」


(さっきの戦いで体力も魔力も……でも、逃げられない!)


レンは炎神フェルミナの加護を発動させる。


――加護効果《即死無効》《焔の覚醒ほのおのかくせい》発動。


全身に焔のような魔力が流れ込み、一時的に限界を超えた力を得る。しかし、それでもアイスドラゴンの圧倒的な力の前に、レンは地に叩きつけられた。


「──もうダメか……!」


次の瞬間、氷嵐が止まった。


「……あらあら、無理しちゃって。ダメですよ、無茶は」


ふわりとした声と共に、銀の光が閃く。現れたのは黒髪ロングの美女──おっとりとした笑みを浮かべる獣人の女性。


彼女が腰の刀を静かに抜いた瞬間、閃光のような一閃が走った。


「奥義《神速抜刀術》──」


アイスドラゴンの巨体が音もなく崩れ落ちた。


「……あなた、危なっかしいですね。でも、素質はあります」


彼女の名前はまだ告げられていない。ただその立ち姿だけで、レンは悟った。


(この人が──僕の、剣の師匠になるんだ)

次回 第26話「獣王国セルディア」

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