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第十五話「冒険者登録」

王都レインに到着してから三日。

僕――神谷レンは、宿屋での生活にも少しずつ慣れ始めていた。とはいえ、いつまでも王女姉妹の庇護下というわけにもいかない。人間社会の中で、自立する必要がある。

そして、その第一歩が――


「冒険者ギルド、か」


「うんうん。魔物のままで働けるのって、基本ギルドくらいだしね。人間のふりしながら、正体隠すなら一番向いてるかも」


肩の上で、精霊ユノが頷いた。

彼女は今日も小さな少女の姿。ふわふわの銀髪と、左右違う色の瞳(時間と空間属性)でじっと周囲を見渡している。


僕は深呼吸して、ギルドの扉を押した。


***


王都レインの冒険者ギルドは、広くて豪奢だった。

木と石を組み合わせた堅牢な造りの中で、戦士や魔術師、獣人にエルフまで、多種多様な種族の冒険者たちが談笑していた。


「はじめてかい、坊や」


受付にいたのは、冷やかすような笑みを浮かべた男――いや、獣人の中年だった。狼の耳と尻尾が生えている。

背後には人間や魔族の冒険者たちもいて、やはり多様性に富んでいる。


「うん。登録に来たんだ」


「じゃあ、これに記入してくれ。基本情報と――っと、自己申告でいいが、“正確”な強さを頼むぜ?」


僕はペンをとりながら、自分の現在のステータスを鑑定スキルで確認した。



【名前】神谷レン

【種族】妖炎狐(Eランク)

【レベル】40

【職業】なし(魔物)

【スキル】

・変化魔法Lv2(人化・擬態)

・幻術Lv2

・火球Lv2

・火炎牙Lv1

・韋駄天Lv2

・鑑定Lv2

・空中戦Lv2

・言語理解(加護)

・時間加速Lv1(ユノとの契約効果)

・空間転移Lv1(ユノとの契約効果)

【契約精霊】ユノ(時間・空間)

【称号】転生者/加護持ち(女神アルメリア・女神カグヤ)



「自己評価:Fランク相当……にしとこう」


今の僕は変化魔法と幻術で“人間の少年”として擬態している。

下手に実力を晒せば、調査対象や実験体にされる可能性もある。謙虚すぎるくらいがちょうどいい。


「ふむふむ……じゃあ、これで登録完了だ。これがギルドカード。無くすなよ? 高くつくからな」


銀色のカードを受け取り、僕は「冒険者」として新たな一歩を踏み出した。


***


「さて、最初の依頼はどうする?」


「えーと……あ、あれどう?」


ユノが指差したのは、掲示板に貼られていたEランク依頼――


【近郊の森で野生化した魔獣の討伐:報酬2万リル】


「ちょうどいいな。森なら慣れてるし」


「レンのフィールドだもんね!」


ギルドで受注の手続きを終えた後、僕たちは依頼地へと向かった。


道中、僕はユノと会話を交わしながら、今後について考える。


「ねえ、レン。将来どうしたいの?」


「将来、か……まずは人間社会でうまくやっていくのが最優先だけど、最終的には、正体を明かしても恐れられないくらい強くなりたいな」


「キュウビ、になるんでしょ?」


「そう。九回進化して、“九尾”になる。そのとき、ようやく本当の意味で、世界と向き合えると思う」


ユノは静かに笑った。


「じゃあ、僕はずっと隣で見守ってるよ、レン」


「頼りにしてるよ、ユノ」


***


依頼先の森で、僕たちは複数の魔獣を撃退した。戦いの描写は省くが、巧みに炎と幻術を組み合わせた戦法で、無傷で討伐に成功した。


依頼完了後、帰りの道すがら――


「そろそろ本格的に拠点も探したいな」


「お、冒険者の家とか借りる?」


「……うん、ちょっと考えよう」


そして、ギルドへ帰還し報酬を受け取ったそのとき。


「――君が、噂の新人冒険者か」


振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。


長い銀髪に、琥珀色の瞳。微笑を浮かべたまま、どこか悪戯っぽさのある雰囲気――


「女神……アルメリア?」


「ばれちゃった?」


人の姿で現れた彼女は、僕にウインクした。


「今夜、面白いものを見せてあげるわ」


意味深な言葉を残し、アルメリアは人混みの中へと消えていった。



次回予告 第十六話「月下の招待」


【通貨の設定】


この世界における基本通貨単位は「リル(Lir)」と呼ばれている。


「リル」は人間の国を中心に、多くの国や種族間で共通して使われており、商人ギルドや各国王族、神殿も認可している正式な通貨である。


【通貨単位の一覧】

•1リル(Lir) = 小銅貨

•10リル = 銅貨

•100リル = 銀貨

•1,000リル = 金貨

•10,000リル = 白金貨

•100,000リル = 黒金貨(高貴な取引や国同士の契約などに使われる)


※ギルドの依頼報酬、宿屋の宿泊費、日用品の購入などは基本的に「銀貨」~「金貨」程度でまかなえる範囲。



【物価の目安】

•宿屋一泊(庶民宿)……30〜50リル

•宿屋一泊(中級)……150〜300リル

•宿屋一泊(高級)……1,000リル以上

•一般的なパン1個……3〜5リル

•剣(一般冒険者用)……300〜700リル

•魔法書(初級)……1,000〜3,000リル

•ギルドEランク依頼報酬……10,000〜30,000リル

•王族からの特別依頼……100,000リル以上もあり



この「リル」制度は、転生を司る女神アルメリアが世界の均衡を保つため、かつて複数種族に共通の経済基盤として定めたとされる伝承も存在する。


なお、エルフ・魔族・獣人たちの中には独自の通貨を持つ地域も存在するが、都市部や国際交流の盛んな地域では「リル」に換金して使用するのが一般的である。

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