第十二話「進化の光」
一週間前、僕――神谷レンは、森の主と呼ばれる強大な魔物、ランクCのトレインを退けた。その戦いで、僕のレベルは一気に上昇し、現在は19。進化の条件、レベル20まであとわずかだ。
「……今日も順調に狩れたね、ユノ」
肩にちょこんと乗った小さな精霊が、ぱたぱたと羽を広げて頷く。ユノは下級精霊から中級精霊への進化を目指している最中だ。属性は風。まだ小さな体のままだけど、すでに戦闘のサポートでは欠かせない存在になっている。
そんな彼女に小さく笑いかけながら、僕はそっと地面に倒れていたオークスカウトの死体を鑑定した。
『種族:オークナイト ランク:D レベル:12 状態:死亡』
以前の僕なら苦戦していただろう。でも今の僕には、彼らはもう脅威ではなかった。
進化前の僕、小狐(ランクG)の頃からは、想像もできないほど強くなっている。
僕はふと、己のステータスを開いた。
⸻
【神谷レン】
種族:妖狐
ランク:F
レベル:19
状態:良好
生命:600
魔力:1500
力:250
敏捷:300
魅力:850
【固有スキル】
〘韋駄天(3分間敏捷を5倍)〙
【種族スキル】
〘幻術〙
【スキル】
〘鑑定Lv2〙
〘噛み付きLv2〙
〘突進Lv2〙
〘魔力操作Lv2〙
〘魔法耐性Lv2〙
〘身体強化Lv2〙
〘身体操作Lv2〙
〘武器術Lv2〙
〘幻覚無効〙
【固有魔法】
〘変化魔法Lv2(人化)〙
【魔法】
雷・闇・火・風・水・土(各Lv2)
【加護】
〘転生神アルメリアの加護〙
効果:潜在能力を極限まで引き出す
〘魔法神ルミナスの加護〙
効果:全魔法の威力上昇/魔法知識の自動取得
【称号】
〘転生者〙《経験値2倍・固有スキルの取得》
〘魔王の卵〙《適正のある通常魔法の取得と魔力操作の取得》
〘勇者の卵〙《身体強化・身体操作・武器術の取得》
⸻
「あと1レベル……」
ユノがちらりと僕を見上げる。
「レン、また光が出る?」
「……ああ、きっと。進化の光だよ」
僕はそれを見たことがある。一度目の進化、小狐から妖狐へと変化した時。世界がまるで僕を祝福するかのような、あのまばゆい光。
「もう一体くらい、強めの魔物を倒せば……!」
ユノと共に森の奥へと進む。そこには、一匹の魔物が佇んでいた。
『種族:フォレストリザード ランク:D レベル:17』
鋭い爪、鱗に覆われた身体。動きも速く、森に潜むには最適の種族だ。
僕は韋駄天を発動。
「ユノ、援護お願い!」
「うんっ!」
風の刃が走り、敵の注意を逸らす。その隙に僕は低く構え、突進を放つ!
「突進Lv2《ブレイクスラッシュ》!」
風魔法と併用しながらの高速接近。敵の鱗にヒビが走る。続けざまに魔力操作と身体強化を駆使し、牙を突き立てた。
「サンダーバレットッ!」
雷が直撃し、フォレストリザードの身体が痙攣する。
――ドンッ!
やがてその巨体が地に崩れ落ちた。静寂。だが、次の瞬間。
【レベルが20になりました】
【進化可能条件を満たしました】
光が、僕の体から溢れ始める。
「……来た」
ユノが、輝きを見てうっとりと瞳を細める。
【進化開始】
【進化先:妖狐 ⇒ 妖炎狐】
【固有魔法《変化魔法Lv3(完全擬態)》を習得します】
【スキル《火炎耐性》を新たに獲得します】
【《幻術》がLv2に進化しました】
「これが……僕の、次の姿――!」
炎のように揺らめく銀色の毛並み。瞳は紅蓮のように燃えていた。背中には二つ目の尾。そう、九尾へ至る道の、次なる一歩。
ユノが微笑む。
「レン、綺麗……」
僕は少し照れながらも、微笑み返した。
(この世界で、僕はもっと強くなる)
――そして、出会うべき人々と出会い、運命を紡いでいく。
それが、この異世界で生きるということだ。
次回、第十三話「邂逅の風」