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第十二話

 数日が経ち、少しずついつもの日常へと戻ってきました。本日はキマリスがベイルを交えながら魔法の使い方を教えてくれると言うのです。普段行っている勉強は一度やめて庭で行うと言うので、早速その場所に赴きキマリスらを待っていました。


 「お待たせしました、お嬢様」


 と、キマリスが軽く一礼して庭に入ってきます。そのすぐ後ろに、走ってくるベイルも見えます。予定時刻ギリギリなので焦っているのでしょう。


「ふう、なんとか間に合いましたぁ。すみません、洗濯と掃除が想定より長引いてしまいまして……」

「問題ないですよ、ベイル殿。むしろ、急に呼び出してしまって申し訳ないです」

「いえいえ、お嬢様のためならなんでもしますから、気にしないでください」


 走った直後にも関わらず苦しそうな顔ひとつしません。意外と体力あるのだと知りました。


「それでは、授業を始めましょう。先日、授業で魔法の概念を勉強したかと思いますが、お嬢様は実際に扱ったことがないと聞いております」


 キマリスに聞かれたことで改めて考えてみますが、魔族でありながら火の玉を飛ばすとか、巨大な土の壁を一気に作り上げると言ったような、想像する限りの魔法を一度も使った試しがありません。身の回りでも使うような人は滅多にいないのでそういった類に意識を向けていませんでした。その意味を込めて頷きます。


「ですので、本日はベイル殿をお呼びしました。彼女にはお嬢様の補佐をお願いしております」

「今日はお助けキャラとして活躍しますね!この場ではベイル先輩って呼んでもいいんですよ?」


 彼女のテンション、どこかおかしいような気がするのは気のせいでしょうか。


「そう。では、お願いね」

「はい!」


 ……いつもの彼女にしか見えないので、気のせいでした。この前、年上に見えないと言ったことに不服を感じているのかと心配していましたが、私が深く考えすぎなようです。


「それでは始めてまいりますが、軽く復習を。魔法を扱うにあたって重要である核が存在します。一般的にどこにあるとされているでしょうか」

「心臓付近です。魔法を使う時に体全体へ魔素(マナ)が血管を伝って流れます」

「素晴らしい。では続いて、魔素(マナ)の存在によって魔法を使用することが可能ですが、その魔素(マナ)を得る方法として有力な二つの説はなんでしょうか」

「確か……大気吸収説、摂取説の二種類です。前者は文字通り、大気に微量ながらも含まれている魔素(マナ)を呼吸によって吸収している説。後者は食糧に含まれる魔素(マナ)の口径摂取によって生成する説です」

「ええ、そうでございます。さすがですね」


 キマリスに褒めてもらいました。ベイルはそうなんだ〜って顔をしながら拍手を送ってくださいます。


「復習もこのぐらいにして、いよいよ魔法を使ってみましょう」

「はい」

「その前に、魔法を使うにあたって心に留めてもらいたいことがございます」

「心に留めて欲しいこと……ですか?」

「ええ。魔法は誰でも扱うことができるが故に、殺傷能力も備わっています。お嬢様も知っての通り、扱いを誤っては簡単に命を奪うことできるもの。適切に使わなくてはいけません。ですので、魔法とは何のためにあるのかを常に考え、そのイメージを持っていただきたく思います」

「魔法のイメージですか?」

「はい。魔法を利用するにあたって想像することが何よりも優先されます。頭の中でそれが出来なくては、我々魔族だったとしても扱うことは一切出来ないでしょう」

「私たちだったとしても……」

「口頭で言ってもあまり伝わらないと思いますので、実際に使った方が早いですね。今から手本を見せます」


 キマリスの人差し指からポッと小さな火花のように可愛らしい炎が出てきました。安定しているのか、風が吹いても消える気配がありません。


「まずは火のイメージです。日常でよく見る炎を想起してみてください。何事も挑戦ですので、恐れずチャレンジすることです」


 言われた通りに火の想像をしてみます。私にとっての火って何だろうと考えると、真っ先に出てきたのは日本でも馴染みのあるガスコンロ。だけどイマイチ仕組みがわかりません。単純なものだとライター、マッチあたりでしょうか。マッチに至っては摩擦を加えるだけで発火する優れ物。これなら想像しやすいかも……。


「あれ、出ない」

 

 頭の中でマッチを擦るイメージを繰り返すけれど、なかなか上手くいきません。マッチだといけないのではと思い、ライターを想像したけれど結果は同じでした。

 

「お嬢様、よく見て下さいね」


 ベイルが声をかけてくれたので目をやると、突然彼女の両手から大きな火柱が立ちました。周囲を巻き込むように熱風が襲ってきます。本気出しすぎではと思ったけれど、魔法はこんなこともできるんだと感心しました。


「すごいわ、ベイル。コツは何かあるのかしら?」

「コツですか?そんなの、ドンっとやってバンってするんですよ」

「そ……そう」


 出てくるのは擬音ばかり。キマリスは頭を抱えながらため息をついていました。でもベイルが頑張って教えようとしてくださっているからこそ、私もそれに応えなくてはいけません。


「ダメ、全然出来ない。何がいけないのかしら」


 ……やはり一向にできません。魔力を指先に集中しても爆発どころか火花を散らす気配もなく、時間だけがすぎてしまいます。もしかしてイメージの仕方が悪いのでしょうか。


「焦る必要はありません、お嬢様。誰だってはじめはうまく行かないものです」

「そうなの?」

「ええ、私も当時は全然出来ませんでした。一見簡単そうでも、意外と難しいものだと理解して欲しかったのです」

「そうですよ、お嬢様!まだ始めたばかりです!時間はたっぷりあります!ゆっくりコツを掴んでいきましょう!」


 二人にそう諭されました。焦ってるだけでは何も出来ませんよね。

 

「……そうね、ここで弱気になっちゃだめよね。ありがとう、二人とも。もっと頑張るわ」

「ええ、応援していますよ」


作者の瑠璃です。

まずは読んでくださりありがとうございます。

この作品はタイトル通り、それぞれの視点で描かれる異世界物語です。人族サイドのお話もあるのでもしよろしければその作品も読んでいただけると嬉しいです。また不定期投稿なので気長に待っていただければと思います。ブクマ、評価等していただけるとめっちゃ喜びます!!

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