第十話
しばらく歩いてようやく、私の部屋に辿り着きました。すっかり暗くなった、もの寂しい空間。先程まで賑やかな場所にいたせいか、静かすぎて逆に落ち着かなくなってしまいました。
「電気、つけますね」
と、ベイルが部屋を照らしてくれます。私はありがとうと言い、ベットに横たわります。ちょっとばかしはしたないと思われてそうですが、見ているのはベイルだけなので問題ありません。
「では、私は自室に戻ります。おやすみなさい、お嬢様」
「ええ、おやすみ」
扉の前で一礼しながらベイルは出て行きました。ここにはもう、私だけ。唯一、ベイルがここにいたことが救いでした。きっとまだお父様たちは会議をなさっているのでしょう。無事に終わればいいのですが……。
にしても、本日は色々なことがいくつも起きてしまいました。ここまで濃密なものは滅多にないです。ベイルの固有魔法に騎士団長の方々、これだけでも十分すぎます。それに、戦争が起こってしまいそうな雰囲気も醸しています。本当にあの女神様の言ったことが現実になってしまうのでしょうか。にわかに信じがたいことです。
「……書かなきゃ」
横になったけれど、体を起こし立ち上がりました。壁側に置かれている机に向かうと、一冊の本を取り出します。雑に開いては白紙のページを見つけ、ペンを取り出します。
「今日は……」
自分のための毎日日記。ずっと昔からやっていたわけではありませんが、外の世界となかなか触れられない以上、娯楽もないので非常に退屈なのです。初めは憂さ晴らし程度に始めただけですが、今日の振り返り程度に簡単に書いていくにつれ、明日への活力となるような気がして今でも続けています。ここではすべて日本語を使用しています。仮に誰かの手に渡ったとしてもこれなら読むことはできないでしょう。しっかり、そこらへんのリスクは警戒しているのです。
「ん〜、こんな感じかな」
白紙だったページの大半を文字で埋め尽くします。大体こんな感じでいいかと満足し、本を閉じて元の場所に戻します。一度肩を伸ばしてほぐすと、体が休息を欲しているのか自然とあくびが出てきました。普段ならこのような時間帯はすでに眠っているので当然だと思いながら、ゆっくりとベッドに戻ります。仰向けに転がり、天井にシミでもないか探そうとするけれど、いつ見てもそう言った汚れは一切ありません。
「はぁ……」
声に出してしまうほどのため息をつくと、なぜだか無性に涙が出てきてしまいました。腕で覆うけれど、止まる気配は一向にありません。濡れた手で布団を引っ張り縮こまると、誰にも聞こえないように布団を押さえて、ずっと呟く。
「パパ、ママ……会いたいよ」
やっぱり私は魔王の娘である以前に日本の女子高校生なんだ。もう、こんな生活は嫌だ。
「助けて、司君……」
作者の瑠璃です。
まずは読んでくださりありがとうございます。
この作品はタイトル通り、それぞれの視点で描かれる異世界物語です。人族サイドのお話もあるのでもしよろしければその作品も読んでいただけると嬉しいです。また不定期投稿なので気長に待っていただければと思います。ブクマ、評価等していただけるとめっちゃ喜びます!!




