旅行Ⅳ:トンボと覚醒と正体
「負けた〜」
「しょうがないよ、ほむら。剣崎は、湾岸Driftの最古参勢だよ。初心者が勝てっこないよ」
「でも、犬飼もすごかったよ。恐ろしいくらい筋が良い。」
「ていうか、何だよ、あの、内側を恐ろしいくらい速くコーナリングするの」
「ああ、あれは、前輪を溝に引っ掛けて、遠心力に逆らってカーブしてるんだよ」
「溝に引っ掛ける、意味がわからん」
そんな話をしながら5人、ARサバゲーやら、ジェットコースターやらを回っていた。
そんなときだった。
「うまそうな人間、たくさんいる」
アンデッドが現れた。
「キャァァァァァァァァァァァァァ!」
人々の叫び声が聞こえる。
「なんだ?」
キンコンカンコーン
アナウンスのチャイムが鳴り、
『怪物が現れました、園内にいる人は、今すぐに避難してください』
ほむらとレイと麗子が騒ぎの中心に進む。
「あれ? 剣崎は?」
ほむらが麗子に聞く。
「トイレに行った」
「こんなときに?!」
そして、3人はエンカウントする。
「お前、マナ、多いな」
「アンデッドか」
「アンデッド? なにそれ」
「カードで封印できる怪物」
「へぇ〜」
レイと麗子がぬる〜い会話をしている中、ほむらがデッキケースを取り出し、臨戦態勢になる。
『Player Login――HOMULA』
ライズクロスが装着され、
『Ready――Fight』
即座に加速し、肉薄。
フォトンエッジを展開し、首元に斬りかかる。
カキン
だが、強固な外骨格により、弾かれる。
「ん!」
連続で攻撃するも、外骨格に弾かれる。
「マナ吸わせろ」
そして、尾のように伸びている、マナ吸引器官をほむらに突刺す。
マゼンタのエネルギーが吸い込まれる。
「ウァァアァァアアアアアアア!!!!!!!!!!」
ほむらがうめき声を上げる。
「「ほむら!」」
レイと麗子が叫ぶ。
「もしかして!」
レイがデッキケースを取り出す。
「どうした、の?」
麗子が反応する。
「ほむらができるなら、僕だって!」
その時、レイのシアン色のデッキケースが光った。
『Rise Cloth Standby』
レイのライズクロスが現実に展開される。
『Ready――』
そのまま、眼の前に現れた6枚の手札から1枚を取る。
『――Fight』
「ライズマジック・フリーズッ!」
ほむらのマナを吸引しているアンデッドを凍らせ、吸引を止める。
「ッ! ライスマジック・フレイ」
そのまま、アンデッドの動きを止めている氷を一気に加熱し沸騰。
ダメージを与えつつ、脱出する。
「レイ、ナイスタイミング!」
ほむらとレイがグータッチをする。
「一気に倒すよ」
ほむらが無数のカードをドロップしマナを回復し、
「ライズアームズ・フリーズナックル」
レイが冷気を纏ったガントレットで懇親の一撃を叩きこむ。
「まだだ!」
どうやら、マナ吸引器官は産卵器官でもあったらしい。
床に2つ卵を産み付け、一体の怪物が羽化する。
「増えた!」
ほむらが驚く。
そこに、
「ほう、|メガネウラ・アンデッド《巨大トンボの不死生物》か、子どもの方は任せろ……なんか、一人増えてないか」
「あ〜! 切り裂き男だ〜!」
スペード・ジョーカーがどこからともかく現れる。
すかさず麗子が反応する。
「ちょうどできた、新装備を試すか」
スペード・ジョーカーが左腰のカードケースから『INVENTORY ARMS:SWORD』と書かれたカードを取り出し、右腰の術式開放器、ライズスペライザーのカードスロットに装填、
『MAGIC』
そのまま、ライズスペライザー本体を押し込む。
『ACCELERATE INVENTORY』
カードに刻印された術式を投影させる窓、スペルファインダーが輝き、手元に片手剣が現れる。
「ウェ!」
子メガネウラを切り倒す。
「「ライズマジック――」」
ほむらとレイが同時に詠唱し、
「――インフェルノ!」
メガネウラ・アンデッドが炎に包まれ、
「――デス・ブリザード!」
即座に急速冷凍される。
ダメージが一定以上になり、バックルが開く。
ほむらがブランクカードを投げ刺し、封印する。
「よし、封印できたな」
スペード・ジョーカーが近寄る。
「あなたは誰ですか?」
ほむらが訊く。
「俺はスペード・ジョーカー。魔術師だ」
「ウワッシュ!」
スペード・ジョーカーの真横にあった卵から、子メガネウラが羽化し、スペード・ジョーカーのバックルを穿った。
破片が砕け飛び、纏っとていた装甲が消失し、崩れる。
「けん……ざき? 剣崎?!」