特訓Ⅳ:翼竜とカンガルーと公式チート
決して八雲が主人公なわけではないです。ただ、語り手は、八雲です。個人的には、八雲も、主人公ボツ案其の二だから、主人公にしてやりたい。でも、これはほむらとレイと麗子と廉の物語です。
閃光に包まれた。 本気モードになってなかったら危うかった。フォトンエッジじゃ防げなかった。スパークの発生してからの到達時間、放たれた角度、尚且つ僕の感覚領域外からの攻撃、恐らく高度1500メートル以上。ライズスキンやライズクロスに搭載されているレーダーは半径500メートルだから、わからないのも当然か。多分、あっちの方は5人で十分だろう。
「本気だすか」
煙が晴れる。そこから、髪が白く変化し、フォトンエッジの触手が消え、フォトンエッジのベースである、銀色に輝くゴッドウェポン:レッキングクラスタを盾のように展開した、八雲が現れる。なお、空中に創造した透明の足場に乗っている。
「さあ、飛行型魔獣。どう攻略しますか」
ポキッと指クラックしつつ、まず最初に、足場を次々と創造しながら移動。そのまま、クラスタ粘土をネリネリ形成する。更に片手間に、小手試しとして、
「〝壊赫〟」
練ってたクラスタ粘土から少量を練切り、円錐状に変形させ、赫い破壊のマナをまとわせ数発、射出する。あの鳥――形的に翼竜といったほうがいいか――速い。避けられた。けど、今ので大体わかった。あいつは、速度に特化した、砲撃型だ。なら、僕の取るべきスタイルは、
「シェイプ:レッドウィング」
空中に浮いてたクラスタ粘土が左手伝に鎖骨あたりに移動し、翼を形成する。翼と言ってもそれは上下で分割され、両方に霧状になったクラスタが噴出し、推進力とする、スラスタがある。これは、(どこぞの光に翼たちと同じで)持久力にかける。でも、速度は一番だ。今のクラスタの残量から、触手で使う分を省いて、最大出力で赫翼が使えるのは残り3分。うん。短いね。赤くなる人形鉄塊かな? 絶対、『消費中は追加で生成できない』っつうクラスタの仕様が足をひっぱている。やばいね。
「やってやらぁ! 制限時間あり? そんなのデフォだろ! 縛りプレイ上等!」
奇声を上げながら、赫い光の翼でロケット砲台を追う。理不尽なくらいの殺人的加速度で、翼竜を補足する。だが、流石、ロケット。速ぇ。なかなか追いつけない。しかも、ロケットとか揶揄してるけど、翼で飛んでるんだよな。翼でなんつう速度してるんだ、あれ? そのまま、眼の前にコンクリの壁が見える。この速度じゃ、ぶつかってシミになっちゃうね、うん。あっちもそうなるんじゃ……ならないか。あっち、翼だもん。旋回能力じゃ、本当に原理ロケットのこっちが分が悪い。……っていうかなんで、僕は、こんな高高度で壁にぶつかったりすること考えてるんだろう?
ここで気づくのは遅すぎた。
「もう、地上じゃん」
うわ〜! もう、最っっ悪っだ! あの〜、魔獣――以前に魔術って、守秘義務あるんですよ。このまま、地面に衝突したり、しなくても、地面すれすれで飛んだら、誰かに見られちゃうでしょ! わかってますか、ROCKETSAN?! あ〜もう、しゃーない。しゃらくせぇ! 要は、テレポート組めばいいんだろ? 即興で!
マナで形成された、文字が周りを回転しながら、文になっていく。
「転移座標は、栃木県北部! さあ、」
文は円形になり、魔法陣となる。
「周りを気にせずやり合おうじゃねえか!」
それは、光速で翼竜の前に移動する。
「〝テレポート〟!!!」
翼竜と八雲は、虚空に消えた。
***
上空を閃光が支配した。その中に、幾らか、赤い金属質の粒子があった。
「今回は大変そうですね」
姉さんはそう、両手の拳銃を小刻みに揺らしながら呟いた。
***
【テレポート】は基本的に、戦闘中にバカスカ使う術式ではない。なぜなら、この術式、パッケージ化できないのだ。通常、術式は生まれ持っている、形質術式を除いて、クイックで出せるように、典型文みたいになっている。それを、ちょこちょこって弄って出すのが基本なのだ。だが、この【テレポート】、何が厄介って、いちいち、術式の中に転移門の座標やら、転移先の座標やら、展開時間やら、生物かやら、生物だったら個体数を、物体だったら総重量を、入れないといけない。めんどくせぇ。実際、戦闘中に使う場合は、術式を文節で区切って負担ごと分担する、合同詠唱で使用するのだ。つまり、
「意識、飛びそう」
こうなる。ただ、反動分、利益も大きい。ここは、栃木県日光市の山奥。つまり、魔術師の庭だ。ここなら、周辺被害気にせず戦える。ここからは、ハイスピードの障害物に当たったらゲームオーバーのドッグファイト。
「さあ、第2ラウンドだ!」
「Qruuuuuuuuuuuuuuuuuuea?」
鳴くんか、お前。翼竜は即座に、上空に飛ぶ、ロケットのように。本当、翼竜か、お前? それはさておき、
「逃がすか!」
クラスタで構成された触手で足を掴む。こいつ、ギリギリのところで、直撃避けやがった。でも、ここではお前は飛べない。お前みたいな巨体は、木の枝に引っかかって飛べないはずだ。……案の定、飛べないね。これなら、簡単に終わりそうだわ。
翼竜は、抵抗をやめ、地面に落ちてくる。だが、空中で体勢を整えて、きれいな着地をする。腕と一体化した翼の中から見えたのは脚だった。ぶっとい脚だった。カンガルーみたいな脚だった。やっぱり、魔獣は平気で人類の気づきあげた科学を凌駕してくる、魔術もその一部かもしれないが。でも、図鑑でみた、翼竜と違う気が……新種か? それ以前に、脚と胴体とで皮膚の色が違うんだが。人造複合獣か? それらを含めて訂正します。こいつは強敵です。
翼竜改めて、翼竜と巨大カンガルーのキメラは図太い脚の筋力で、超高加速をきった。これか、ロケットみたいな離陸の正体は。赫翼起動! 即座、最高出力! 体が一瞬浮く感覚と共に物凄いGが発生する。感覚的に最高速度に達したら、出力を下げて、速度維持。そのまま、翼をこまめに独立可動させて、跳躍翼竜が移動した、複雑難解な茂みを変態機動する。たく、空も速ぇし、陸も速ぇ。どうなってるんだ、こいつ。でも、陸のほうが、遅い。というよりも、だんだん遅くなっている。こっちは脳内スピードメーターさえ狂わなければ、クラスタ残量という名の時間制限を無視すれば、半永久的に同じ速度を維持できるが、あっちは違う。
「やっと、追いついたぜ」
クラスタ残量、残り、20パーセント。危なかった。翼を流体状に変化し体を伝って腰のあたりに集る。プテカンガルーだが、脚をビクビクさせて、悶絶してる。そう。
「魔獣でも、筋肉疲労には勝てないよな?」
筋肉疲労。それは知っての通り、体育の授業とかで本気出して、途中から体のいたるところが痛くなって、長期的に悶絶するアレである。試したことなかったけど、魔獣にも適用されて本当に良かった。
「強かったよ」
クラスタ触手こと、【形状:触赫】でキメラの心臓を貫いた。
【神器:破壊赫群】に関する禁句
・赫子
・羽赫
・デスティニーの翼
・クラスターセル
八雲が主人公ボツ案になった理由
・他作品のオマージュが多い
・スペックがチート
・作者の浪漫まみれ
悪い、やっぱり、作者の浪漫を詰め込んだやつのは細かくなっちゃうの。八雲くんは公式チートです。