旅行SP:終焉と暗部とホンモノの神様!
――ように見えた。
「“我、己の身を糧とし、世界に終焉をもたらせ――”」
男がバハムートの召喚の際とは似て非なる詠唱し始める。
「結局、お前等の努力は無駄になったなぁ!」
そして、最期の言葉を紡ぐ。
「“ヘル・バハムート”」
その瞬間、バハムートの残骸が鼓動する。
「レイ、逃げろ!」
「え? うわぁあ!」
慌てて氷の檻を手放し、バハムートを迂回しながら、地上に全速力で落ちるように降りる。
「流石にこいつは、二人には厳しいか」
八雲がそう、結論を出し、
「ここからは僕の仕事だ」
八雲が前にあるき始める。
「二人は下がってて」
髪が白く変化する。
バハムートが稲荷大社に向かって、口を広げ、ブレスをためる。
ダン
先ほどと違い、重い射出音が響く。
その弾丸はバハムートの口に寸分たがわずに当たり、ブレスのエネルギーを巻き込んで炸裂する。
「Gurrrooooooooooooo」
地面を強く蹴り、飛翔する。
タタタタタタン
「堅い」
シューターを連射するが全て、外皮で弾かれる。
だが、ヘイトは動かせた。
バハムートは再び口を広げ、八雲を捕捉する。
「ハ!」
ダン
それを逃さずに炸裂弾を一発、お口に投入。
グォォオォン!
溜めていたエネルギーに誘爆し、バハムートの体に衝撃が奔る。
ピキピキピキ
外皮にヒビが入る。
「Gurrrooooooooooooo!」
「やっと、ヒビが入ったか」
そう言いつつ、背後に周る。
シャンッ!
鈴の音がし、先が薄く、柄に向かって段々と分厚くなっている大剣を創造する。
「ハァ!」
外皮の隙間に突刺す。
「ここからは、人力パイルバンカーっだぁ!」
柄の先を蹴って、蹴って、蹴りまくる。
少しずつ、大剣が食い込んでいく。
「ハ! ハ! ハ! ハァハ!」
カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン……
何回も蹴って、蹴って、蹴って、蹴って、蹴る。
「こう、なるなら、パイルバンカー、でっも、創っっとくん、だったぁア!」
ついに、緑色の血が垂れ始める。
大剣を蹴る――人力パイルバンカーすること、実に10分。
その間、バハムートは暴れに暴れていた。
それを、
「ライズマジック・アイス・フルバースト!」
ほむらを伝って、魔術の本質を聞いたレイが、通常、氷の粒の弾幕が一瞬だけ形成されるだけの術式を、イメージで長時間キープし続けることで、バハムートが暴走して地面に体当たりすることを防いでいた。
「あとは、とにかく、内側に、攻撃を、叩き込む、だけだぁア!」
食い込んだ大剣は、抜くのも大変だった。
その、無理矢理作った外皮の隙間に、銃口を押し当て、
「ハァアア!」
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタン!
毎分20万発の弾丸が肉を穿っていく。
「Gurrroooooooooooooooooooooo!」
バハムートが悲鳴を上げる。
返り血が、八雲の顔につく。
「ハァアア! これで終わりだぁア!」
ダン
炸裂弾を射出した。
通常弾が作った円形のトンネルが、バハムートの中心へ、最短距離で誘導する。
バンッ!
バハムートが、内側から爆散した。
緑色の血の雨が地に落ちる前に、マナに還元され、消失していく。
その中に、純白の装いの黒髪の青年が落下している。
それを、少し長めの黒髪の少年が巨大クッションを空間の狭間から取り出す。
そこに寸分たがわずに着地した。
「たく、無茶しやがって」
その少年が右耳についた、インカムを操作し、
「こちら、剣崎。神様がヘル・バハムートを討伐」