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ワールドライズ  作者: さくらいよう
初心者の中、神は無双する(主人公は初心者の方です)
12/34

旅行Ⅷ:警備と本命と翼竜

「何も来ませんね」

「まぁ、それだけ、彼らが頑張ってるってことさ」


 神社周辺を歩き回る。

 深夜だからか、ひとけは全く無い。

 それにしても、


「少しぐらい、いてもいいじゃないか。寺社仏閣歴史的建造物の周りだぞ」

「魔獣って、どういうところに出やすいんですか?」


 レイが八雲に聞く。


「歴史的建造物、事故現場とか、いい意味でも悪い意味でも人の思いが集まりやすい場所。自前のマナで使役獣として作るアンデッドとか魔術師もいるし。その中でも……」


 何かに気づいたのか、言葉を一回切る。

 ジャンパーの内側からさっき、顔怖高校生を止めた、シューターを取り出し、臨戦態勢に入る。


「……寺社仏閣の近くが、対魔結界と魔獣誘引がデフォ(標準装備)だから、一番!」


 数体の狼型魔獣が現れる。

 ほむらとレイがデッキケースを取り出し、ライズクロスを展開する。


「ほむら、お得意の広域攻撃は近隣被害を考慮してセーブ(封印)。レイは敵の拘束しつつ確実に砕け。魔獣はアンデッドと違って、カードで封印しなくていいからな」

「「え?」」


 予想外な量の指示が出されて困惑する二人。


「ワールドライズのプレイ(戦闘)動画を見て、僕なりに分析してみた。とりあえず、試しにやってみてくれ」

「了解」


 各々の武装を展開し、三方向に走り出す。


「ん!」


 ほむらがフォトンエッジ(魔光剣)ですれ違いざまに切っていく。


「ライズマジック・フリーズ(拘束せし冷気)


 冷気が地面を這い、数体の狼の足を貼り付ける。


「ヤァア!」


 レイが殴って、砕き削っていく。

 それを八雲が一瞥する。

 その隙を逃さずに狼が襲ってくる。


「ハッ!」


 タンタンタン

 狼が飛び込んできたところを、最小限の動きで回避しつつ、シューターで急所を撃つ。

 狼は緑色の血を垂らしながら倒れ、消滅する。


「こちら、伏見地区。狼型魔獣が出現」

『わかりました』


 八雲が左耳についたインカム(魔導通信機)を操作し、オペレーター――麗子へ状況を報告する。


「中央部の状況はどうなってる?」

『まだ魔獣が出現してませんね』

「まじか」


 予告はブラフ()

 だとしたら、どこだ?

 京都市内の最高戦力を中央部(京都御苑)を集中させた?

 京都市内で京都御苑を除いて何が一番重要?

 清水寺?

 違う。

 寺院の中では市内最大だが、そこまで重要ではない。

 なにより、京都校の近くで、戦力はそこそこある。

 平等院?

 あそこにはなにもない。

 なら。

 伏見稲荷大社(ここ)ではないか?

 世界各地に存在する稲荷神社の総本宮であり、ここが破壊されると、日本のマナバランスが崩壊する。

 それだけは阻止しなくては。

 八雲が思索する。


「二人とも、緊急だ! 急ぐぞ!」

「何かあったんですか?!」

「え?!」


 稲荷駅の方へ走り出す。

 その前には、黒いフードを目深に被った男だった。


「レイ、術式で奴を拘束! ほむら術式のセーブ(制限)解除」

「ライズマジック・フリーズ!」


 レイが数枚のカードをドロップし、引いたカードを使用する。

 冷気が地面を這い、男の足を凍らせ、拘束する。


「ッ! “我、己の魔力を糧とし、世界に災いをもたらせ――”」


 動揺しつつも、懐から術式の媒介となる、札を取り出し、詠唱を始める。


「させるかっ!」

「ライズマジック――」


 八雲がシューターを構え、ほむらがカードを突き出す。

 タン!


「“バハムート(厄災の翼竜)”」


 そう、唱えた刹那。

 札を弾丸が貫通する。


「ハァッハッハッハッハハハハhahahahahahahahahahahahahaaaaaaaa!」


 男が狂ったように笑う。


「何がおかしい!」


 レイが問う。


「お前等の努力全てムダになったなぁはぁハッハッハ!」


 男が笑い煽る。

 八雲がシューターを突き付ける。


「なら、僕たちが君たちの努力を無駄にしてやるよ。ハイライトはここからだ!」


 その顔は不敵に笑っていた。

 そして、誰に向けているのかわからないことを言い出した。


二人(ほむらとレイ)。出番だ。レイ、まず、凍結攻撃で捕獲。その後はとにかく、上に持ち上げてくれ」


 レイが飛び上がり、


「ライズマジック・ホールブリザード(包み込む氷河)!」


 右手から、氷の檻を創り出し、バハムートを捕まえる。


「ヤァア!」


 そのまま、一気に持ち上げ、地上から引き離す。


「ほむら。ぶっつけ本番で悪いけど、今からすっごい重要なこと言うから、一回で覚えてね」

「緊急事態のなか?!」

「魔術っていうのは基本的にイメージ(想像)なんだ。だから、一部の効果を上書きすることができる。【インフェルノ(炎帝)】だって、イメージの強さによっては一点に集約して、なおかつ、威力をブースト(強化)することもできる」

「え?」


 急に言われ、理解が追いついていない。


「とにかく、インフェルノをバハムートのところに集束させるイメージで使ってみて」


 ほむらが深呼吸をする。


「ライズ――」


 狙うは数十メートル上空の氷の檻で捕まえられた竜。


「マジック」


 炎を集めるイメージ(想像)


「インフェルノ!」


 静かに、それでいて、重く、力強く詠唱した。

 普段、広域に広がる業火が一点に集まり、終焉の炎と化す。


「Gurrrooooooooooooooooooooooooo」


 バハムートは他の魔獣と同じように消失した。

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