旅行Ⅶ:魔術校生と喧嘩と自称神様
「ところで、あのメモは読んだかい?」
案の定、合流してきた。
「ああ。で、あれはどういうことだ! 俺は休んで、ほむら達を向かわせるっていうのは!」
「お前はまだマナが回復してないだろ?」
「……」
「けが人は休んでろ」
そう言って、剣崎を突き放した。
「三人には、これ渡しとくね」
3つの小さな人型人形と頭巾を渡す。
「パー◯ン式身代わり人形」
秘密道具でも出すかのような口調で取り出す。
「それと、バックワーク。これらを使えば、簡単に宿舎から出られるよ。じゃあ、あとは僕、一人で回るから」
そう言って、どこかに消えていった。
「いったい、何なんだ? あの人」
***
夜中、なんともきれいに宿舎を抜け出せた、ほむらとレイと麗子は駅に向かった。
駅の前にはバックワークに似た純白の頭巾に八雲の純白ジャンパーに似た服装の二十歳くらいの青年が立っていた。
「お。きたきたー! こっちこっち!」
その青年が話しかけてきた。
「だ、誰ですか?」
「僕だよ、八雲」
フードをめくり、顔が明らかになる。
八雲に似た顔立ち。
声も少し大人びているが、八雲に似ている。
「こうしたほうがいいか」
スマホを取り出し、電話をかける。
「もしもし、廉」
『ああ、どうした、八雲?』
「「「本当に八雲くん?!」」」
三人が驚く。
電話を切った。
「急いでるから早く車に乗って」
青年はワゴン車を指さした。
***
「やっと、廉抜きで話しができる。とりあえず、廉からどこまで聞いた?」
「ジョーカーについては……」
「ジョーカーって言うのはゾンビというよりは、転生に近くて、人間とは全く違う、ある意味、仏に近いというか、仏の成り損ないみたいなものなんだ」
「へえ」
「あと、廉は交通事故で転生して、母親亡くしてるからね」
「ッ!」
3人はすごいこと聞いてしまったと思った。
「あと、廉の能力についてとか、その他諸々の説明は、紙でまとめといたから後で渡すね」
乗っていた車が止まる。
「ついたよ」
そこには、和風然とした、学校があった。
「ここが国立魔術学園京都校。ようこそ魔術師の世界へ」
「八雲さん!」
誰かが車に向かって走ってきた。
「笠原先生、お久しぶりです」
八雲が挨拶をする。
「この子達が……」
「はい。魔術師育成システム、ワールドライズの世界初の成功例です」
ほむらとレイはけっこう、すごい人だったらしい。
「今回の作戦はとあるテロ組織から犯行予告が届いたので、街を警備してもらいます。初めてでこれは大変だと思いますが、頑張ってください。八雲さん、お願いしますね」
「はい」
「八雲さんたちは伏見地区の警備をお願いします」
「「「わかりました」」」
その後、麗子を見て、
「君はオペレーションをお願いします」
「わかりました。じゃあ、ほむら、レイ、後でね」
麗子が二人に手を振る。
その時だった。
「笠原先生、これはどういうことですか」
一人、高校生とは思えないぐらい、体格の良い詰め襟を着た生徒が来て、笠原に向かって話しかけた。
その顔には怒りが含まれていた。
「どういう意味だ?」
「なぜ、他の地域の人の助けを借りるんですか?!」
「今回、犯罪予告が来たのは、世界的テロ組織【テスタロス】だ。我々の手だけでは守りきれないかもしれない、この街を」
「わかりました」
納得したようで、ほむら達を見る。
「お前等、街壊したら、容赦はせんからな?!」
「「ヒィ!」」
コキコキと指をクラッキングしながら高校生がほむら達にいい、二人がビビる。
「さあ、どうかな〜。君たちが中心部から、魔獣を逃がしたらわからないなぁ〜」
八雲が不敵に笑いながら言う。
「お前!」
高校生が拳を握り振りかぶる。
その姿はまるで、ヤンキーのようだ。
だが、八雲は最小限の動きで拳を避けて、距離を取る。
「逃げるな!」
さらにヤンキーは怒り、懐からナイフを取り出す。
「オラァ!」
そして、八雲に向かって、走ってくる。
「やめろ、佐々木!」
笠原が、静止を促そうとするが止まろうとしない。
「はぁ、しょうがないな」
八雲はジャンパーの内側からどう入れていたのか、拳銃――ブルシューター69Bを取り出し、タンと1発撃った。
その弾丸は寸分たがわずナイフの峰に当たり、手から弾き飛ばす。
「要は、お前らが中心部から魔獣を逃さなければいいんだろ」
シューターをジャンパーの内側にしまう。
「そうやって、感情が高ぶっていると周りが見えなくなって魔獣を取り逃すぞ」
なんか説教みたいになった。