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異星人を迎撃せよ

 眼下では白いものが絨毯のように敷き詰められ、高速で後ろへ流れてゆく。視界の上半分は青色だ。


「ここ、雲の上なの?!」


 手元にはたくさんの丸い計器やボタンや操縦桿、ディスプレイのようなものが。計器の針はグラグラとひっきりなしに振動していて落ち着かない。


 もしかしてここは飛行機の操縦席で、私はパイロット? 高い所は苦手のはずなのに、パラレルワールドの私すごいな!


 キョロキョロ見回すと、隣にも人が座っている。くすんだ緑のヘルメットと作業服のようなものを着た、たぶん男性。私の知ってる旅客機のパイロットとはなんだか雰囲気が違う……。


 というか、鋭く前方を見据えるこの横顔……我が夫、カズヒコ?!


 戸惑っていると、脳内にヤドカリの声が響く。


── これからはバレないように脳に直接話しかけますね。ここは軍用機のコックピットです。パラレルワールドの一つであるこの世界では、あなたは世界連合空軍のエースとして活躍しているんです。


「戦闘機のパイロットってこと?! いきなりハードル高すぎない?!」


── ここでは地球の外から『トマラナイエンヤス星人』が進攻してきているんです。


「一体どんな選択をしたら異星人が攻めてくんのよ!」


──まぁまぁ落ち着いて。さぁ、『トマラナイエンヤス星人』を迎え撃ちましょう。


「ちょっと聞くけど、この状況で落ち着ける人っているの?!」


 パニクりかけた私の言葉をヤドカリはスルーし、続ける。


──そして隣の彼は田所カズヒコ氏。こちらではあなたの夫ではなく戦友ということになっているようですね。ではご武運を祈ります!


「無理!! 早く次の世界線に移るわよ!」


──言い忘れましたが転移ゲートは三十分に一度しか開けることができないんです。では三十分間、良い空の旅を!


「この状況で良い旅ができるかァ!!」


 思わず突っ込んだ私を、カズヒコが横目で睨む。


「おい三島ァ! さっきから何ブツブツ言ってんだ集中しろォ!」


 三島というのは私の旧姓である。


「敵機の攻撃により仲間は全機戦線離脱してんだ! 地球の命運は我々にかかってるんだぞ!!」


 我々にかかっちゃってんの?! 


 カズヒコは胸元からペンダントを取り出して、パカッと開けて言った。


「この任務(ミッション)が終わったら、俺、結婚するんだ」


「え……」


 ペンダントの中には女性の写真が見える。私とは全く違うタイプの女性だった。


 この世界では彼、別の人と結婚しちゃうんだ……ちょっと複雑な気分。


「帰還したら実家の田んぼの様子も見に行かなきゃな。雷雨だろうと暴風雨だろうと」


「頼むから死亡フラグ立てまくるのやめてよ!!」


 と言う間もなく、ディスプレイがピコーンピコーンと不穏な音を立て始めた。


 彼は叫ぶ。


「八時の方向から敵機接近!!」


 言い終わるやいなや、機体が反時計回りに急旋回。とてつもないGが全身にかかる!


「ウギャアアア!!」


「うるせぇぞ三島ァァァ!!」


 すぐに機体は急停止。前方にエメラルドグリーンに明滅する円盤が現れた。

 円盤は私達を小馬鹿にするように左右にユラユラと揺れた後、多数の光の玉みたいな物を放ってくる。


「キャアアアァ! 何だコレェェ!!」


「迎撃しつつ接近し敵機後方へと一旦退避する! 攻撃態勢に入れ!」


 機体はカズヒコの操縦により、光の玉を上下左右に巧みに避けつつ、とてつもない速度で円盤へと向かって行った。


 またしても凄まじいGを受けながら、いやぁ〜〜すごい技術ですなぁ、と思うことしか私にはできなかった。そういえばこの人、シューティングゲームがやたら得意だったっけ!


「何やってんだ早く攻撃しろォォォ!!」


 聞けない……この状況で攻撃のボタンがどれなのか聞けない……。


「これかァーーーッ!」


 私は目の前に並ぶ、たくさんのボタンのうちの一つをテキトーに押した。すると……


 チュドンッ! 


 早すぎて見えなかったけど、何かが発射された! 次の瞬間、円盤は白煙を上げ猛スピードで逃げるように急上昇。ヤッタ!!


「追い返したわよ、早く地上に降りましょ!」


「まだだ。追撃する」


 追撃しちゃうの?!


 私たちの機体は円盤を追ってぐんぐん上昇する。今まで以上にシートに体が押し付けられ、顔が勝手に横を向く。


「ヒギィィィエエェーーー!!」 


 脳が揺れる揺れる! 霞む視界に映るのは、いかにも宇宙って感じの藍色と、弧を描く水平線。地球ってホントに青くて丸いんだなぁ〜〜冥土の土産に体感できて良かったなぁ!


「攻撃しろ三島ァァァ!!」


「ハイハイハイィ!!」


 私は首をゴキゴキ言わせながら正面を向いてさっきの攻撃ボタンを連打した。


 チュインチュインチュインチュインッ!!


 が、円盤の底は硬いのか、攻撃は全て跳ね返されてしまう。


「限界高度だ! これ以上は上昇できない! こうなったら奥の手だ! 『カワセ=カイニュー砲』を早く!!」


 カズヒコが体ごと傾いて操縦桿を左に引きながら言った。


「早く! 早くしろォォ! 逃げられちまうぞ!!」


 聞けない……この状況で『カワセ=カイニュー砲』とやらが何なのか聞けない……。


「これかァーーーッ!」


 私はたくさんのボタンのうちの、壁にひっそりと貼り付くようにある『¥』というマークの書かれたボタンをなんとか押した。すると……。


 機体の前部分に極太のミサイルが出現、弧を描きながら後ろの方に飛んでいった。間をおかずにドカーーンッという爆発音が宇宙スレスレの空間に鳴り響く!


「敵機反応消失……やったんだ、俺達、地球を守ったんだ……三島、お前は最高のパートナーだよ」


「あなたもね、見直したわよ!」


 カズヒコと私はガシッと手を握り合った。機体はゆるやかに下降を始めた。


 その時、ヤドカリの声が再び響く。


──三十分が経過しました、次の世界線へ移りましょう!


 極限の状況で強敵に立ち向かうカズヒコは、最高にカッコよかった。でも私は行くね、元の世界のあなた達に会いに……なんだか名残惜しいけど!


「結婚したら、食べた後の食器はせめて流しに運ばなきゃダメよ! ゲームもほどほどにね!」


「何だそれ?」


「あなたには幸せになってほしいのよ」


「なんか知らんがサンキュー」


 笑うカズヒコ。


──さぁ、あのダサいポーズを早く!


 ヤドカリが急かす。


「ダサいって言わないでよ! チェンジーーーーッ!!」


 私は指のハートマークを鬼の形相で振り上げブン回した。


 さぁ次の世界では、鬼が出るか蛇が出るか?!

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