微笑み7
急に飛び出して来た女子生徒を、思わぬ形で拾い上げて馬に乗せてしまったシオンは内心ドキドキしていた。無論、恋の予感───ではない。
『ヤバかった!もう少しで12歳で人殺しになる所だったよ。取り敢えず、馬は歩かせて行くとして明日からは止めておこう』
淑女の嗜みとして顔には出さなかったが、かなり危ない所だったのだ。それでも急に飛び出して来た女子生徒を責める訳にはいかなかった。
「あ、あの!すみませんでした!一目見ようと道の横に並んだんですが人波に押されて道端に出てしまいました。本当にごめんなさい!」
こう言われてしまうと、責める訳にはいかなかった。そもそも、軽くではあるが馬を走らせていたのはシオンだからだ。
学園の入口に近付き、通学途中の生徒が多くなって来たときにスピードを落とすべきだったのだ。
「……こちらこそ、ごめんね。怖い思いさせた」
少し困った顔の微笑みを女子生徒に向けた。
「はにゃーーーーーん!!!お姉様♪」
『お姉様?私と同じ一年生だよね?』
「お姉様……違う。同じ一年生だよ?」
「ごめんなさい。私、教会の大聖堂のある街で暮らしていて、同性の年上の方と【姉妹】になる【スールの関係になる】規則があったので………凛々しい女性を見るとお姉様と言ってしまうの」
へぇ~、宗教の色の濃い街は変わった規則があるんだなぁ~勉強になるよ。
シオンは自分の知らなかった知識を知り感心したが、本当の意味で知らなかったのだ。
スールの関係は一部【百合】の関係が強い事に。
(一部ですよ?)
「あの、私はユーリ・デイジーと言います!助けて頂いて、ありがとうございました!」
うん、元気な子だね!悪い子じゃなさそうだよ。
「私はシオン・クロス・フレイムハート。よろしくね」
『はにゃーーーん!!!声も素敵です♪お姉様!』
ユーリの脳内がお花畑になっているとも知らずに、シオンは学園の入口にたどり着いた。既にユーリの中にはシオンに対する嫉妬は消えており、シオンと御近づきになりたいという欲求に駆られていた。
入口に着くと、朝、入口にいる従者の方に馬をお願いしユーリと一緒に学校の中へ向かった。すると、入口で待っていたイケメンズ+王女様に呼び止められた。
「おはようごさいますわ!シオン様!」
セーラ王女様の後に、イケメンズが同時に挨拶をしたの
「「「おはようごさいます」」」
「………おはよう」
シオンはキラキラした人物達からの挨拶に気圧されながらも、挨拶を返す。
「所で、そちらの生徒はどなたですの?」
セーラ王女様の目が一瞬、ギラリッとした感じに見えた。うん、気のせいでしょう。
「あの、初めまして!私はユーリ・デイジーと申します。今朝、シオン様に危ない所を助けて頂きました」
流石に相手が王族ともあって正式な礼儀の挨拶をするユーリ。そして事の顛末を根掘り葉掘り聞かれるのだった。
「では、シオン様とは今朝知り合ったのですね?」
「はい、そうです」
セーラ王女はホッと胸を撫で下ろしたが、その後のシオンの一言でピシリッとなった。
「早く行こう。遅刻する」
ユーリの手を握り、教室へ向かおうとした。
「待って下さい!どうしてユーリさんを!?」
「聞いたら同じクラスだった。【友達】なら一緒に行くでしょう?」
場の空気がどんよりと変わった瞬間だった。
「友達………?」
「同じクラスで自己紹介したら友達でしょう?」
『友達………ジーン』
ユーリはいつの間にか友達認定されていて感動していた!
逆に、セーラ王女は内心の戸惑いを隠せなかった。
『何ですって!友達!?私だって昨日、御一緒したばかりなのに!いつの間に、悪い虫が付いてしまったの!?』
セーラ王女の動揺は凄まじかったが、流石に表情には出さずにニコリッとして後に続くのだった。
イケメンズ達は同性ともあって動揺はしなかった。逆に、近くにいた従者にユーリの事を調べるように指示を出し、シオンの友達となったユーリを味方に付けて、シオンを情報を引き出したり、仲を取り持って貰おうと考えたのだった。
愚者の声
「百合方面の話に持っていったらダメかしら?」
φ(..)
なんか書いていて、そっち方面でも良くなってきたのよ。イケメンズは噛ませ犬にして……悩む。
「それともBL路線に持っていったらダメかしら?」
φ(..)
シオンをだしにして、イケメンズ達が友情を育んで……うん、無いわ!
シオンの飛び蹴り!
ドゲシッ!!!
愚者の声
「ぐはっ………」
シオン
「なんで選択肢に、普通の恋愛が無いのよ!」
愚者の声
「だって普通の恋愛だとつまらな………」
シオンの無言の殺気!!!!
愚者の声
「さ、さてと!読者の方々からもリクエストがありましたので真面目に【普通】の学園ドタバタコメディを執筆しますか!」
シオン
「………それで良いわ」
んっ?この小説の話って学園ドタバタコメディだったかしら?
※すみません。それは作者にもわかりません!