微笑み59
歓声が鳴るなか、次はカイの番になった。
「カイ、これは練習だよ?本気を出しちゃダメ」
シオンは静かにカイに注意を促した。
「わかってます。軽くやりますから」
手を振りながらカイは前に出ていった。その会話を聞いていたユーリが気になって尋ねた。
「ねぇシオン?今の話ってどんな意味あるの?」
「カイはまだ魔力のコントロールが上手くできないの。本気を出してしまうと魔力が暴走して爆発しちゃう可能性があるから、本気を出さないようにしているの」
爆発!?
「そ、それは心配だね」
「うん、ちゃんと魔道具も装備しているし、よほどの事がない限り大丈夫」
シオンが余り心配していないのでユーリそれ以上聞かないで、カイが魔法を使う所を見るのだった。
『大丈夫。落ち着いている。集中するんだ』
よし!いくぞ!
「全てを凍てつかせる絶対零度の氷よ。全ての時を凍らす嘆きの零よ。今こそ我が前に、立ち塞がりし愚かなる者を極寒の中で眠らせるたまえ。【アブソリュート・ゼロ】!!!!」
カイの目の前が白く染まり、カイの正面、100メートルが真っ白に凍りついた。
「うわっ、すごっ!?」
「ここまで寒いわ!」
「やるなー!」
「上級の氷魔法ですね。しかしこの練度は凄いです!」
クリス先生は冷静に魔法を分析していた。
「さて、魔法数値は………290!?」
このクラスの殆どを超える数値だった。
コソッ
「シオン、本当に軽くだったの?」
「う~ん?けっこう本気だったかな?たぶん、カイが本気を出せば350ぐらいはだせるかな?魔力をコントロールできればだけど。元々カイは魔力が膨大にあるから、コントロールが難しいみたいなの」
「さ、流石はシオンの姉弟だわ………」
ユーリは引きつった顔で呟いた。
「カイ、凄かったな!」
レオンがフレンドリーに話し掛けた。
「レオン先輩!ありがとうございます!」
「だが、オレも負けないからな!来年入学するときはお前を超えているから、覚悟しておけよ?」
ジーーーン!
「レオン先輩………」
カイは感動していた。
仲良くなっても、普通なら年下に負けると悔しがり、人間関係がギクシャクしてしまう事があるが、レオンは変わらず話し掛け、オレも負けないと意思表示までしてくれた。
カイの中でレオンの好感度はシオンを超えて限界突破するほどうなぎ登りだった。
「僕も、レオン先輩に、ついていきます!」
「えっ、お、おう!」
よくわからずにレオンも返事を返すのだった。
こうして体験入学の1日目が終了した。
放課後になると、シオン達は食堂に集まっていた。
「う~ん♪ここのパンケーキは最高です!」
リン達は、またパンケーキを食べていた。昼とは別の種類のだ。
「うん♪美味しい……」
無口なシオンも微笑みながら食べていた。
そして、他のメンバーはそんなシオン達をみながら微笑んで見つめていた。
おお、なんと微笑みの連鎖ができているではありませんか!?
まぁ、遠目でみればみんな楽しそうに笑っているような状態で、微笑ましいですね。
「それにしてもリンちゃんは本当にシオンとソックリなんだなぁ~」
騙されたクロウはしみじみ思った。
シオンの髪型をやめても、顔はソックリなのだ。
「えへへっ♪お姉様に似てるって♪」
リンは嬉しそうだ。
ただこの後、ユーリの軽い言葉が爆弾を落とすことになるとは今はまだ思いもしなかったのだった。
愚者の声
「う~む………?」
シオン
「あら珍しいですわね?何を空っぽの頭で悩んでいるのかしら?」
愚者の声
「空っぽじゃないよ!ほらっ!カランカランって音がするでしょ!」
!?
シオン
「そんな小さな脳みそしかないなんて…………ホロリっ」
哀れむなーーーーー!!!!!
(シクシクッ)